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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第6章・双子
70/147

第6章・7幕 排除の仕方

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎星原家


・星原満彦 (ほしはらみつひこ)

黛村・北地区の変若水の乙名。領民のため、民政に尽力する。息子、敦彦、詠彦にもその流れを汲む様に教育してきた。暴力的な輩が多いこの地区を、その手腕で治めてきた。


・星原敦彦 (ほしはらあつひこ)

黛村・北地区の変若水の乙名、満彦の長男。父の教えに従い、領民のため、民政に尽力することを目指す。父の盟友、東江家の長女を許嫁にするも、本人はあまり納得していない。


・東江 黄粉 (あがりえきなこ)

黛村・北地区の変若水の乙名・星原満彦の長男、星原敦彦の許嫁。能面の小面のような、顔に小太りな体系が、決して気品と美貌とは言えないまでも、性格も奔放で敦彦も対応に困る始末。


◎缶家


・缶 梅男 (ほとぎうめお)

黛村・北地区の変若水の乙名、星原満彦の軍事頭目で、副統括。しかし、領内の民の為の内政に尽力する彼とは対照的で、暴力で欲望を満たすタイプ。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月6日 15時 黛村・変若水 乙名・星原の館


敦彦と黄粉は館に着くなり、黄粉は激しい愛情を敦彦に与え、求めていた。

黄粉は食欲も旺盛で、おにぎりを頬張りながら、敦彦に口づけを求める。

「ちょ、ちょっとトイレに…」

敦彦が逃げるように洗面に向かい、顔を洗う。

2人の関係は、親が決めたものとはいえ、半ば敦彦は義務感にも感じていた。


和都歴450年 8月6日 15時 黛村・変若水 缶姉妹のアジト


「爺さん、着いたぞ。ここならアンタの恐れる報復も来ないだろうよ?」

「ああ、すまん。」

黄田を連れ、到着した缶姉妹のアジトには様々な武器と、ガラの悪い人間が(たむろ)していた。

「なんだ?この爺さん。」

「よう、爺さん玩具にされに来たのか?わはっは!」

周りの人間がイジり始める。

「この爺さんはちょっと価値があってね。」

杏が話始める。

「あ?仙人から魔法でも教わるのか?」

「いや。真面目な話、それに近いことでもある。太古から伝わる神器の在処と使用方法。興味ないかい?」

杏の顔は真剣になる。

「アタイらはそんなモノなくても最強集団じゃんさ?今更どしたの杏?」

「親父さんの言いつけか?守らないともう親父とヤらせてくれねぇってか?わはっは!」


ーブス!ブス!!


桃が両手に隠し持っていた短刀を出し、男の首に刺した。

「!」

「私らの決断だ。他に文句のある奴は?」

桃が周りを鋭い目で見回す。

「・・・」

「決まりだ。爺さんを保護しとくんだ。いいね?」

杏がそう言うと、梅男がアジトに入ってきた。

「…なんだ?また殺したのか?」

「口が減らないんでね。❝障害❞は殺すのが一番だって親父が教えてくれたんだろ?」

桃がそういうと、梅男が呆れるように首を横に振った。

「それより、ちょっと問題だ。」

「何さ?」

「跳ね橋だ。」

「跳ね橋?」

「使用できないようにカギをつけて、それを満彦さんに預けることになる。」

「は?何で?」

「条約違反だそうだ。」

「うるさい乙名だね、それこそ始末した方がいいんじゃない!?」

「桃、お前は直ぐそうだな。落ち着け、とりあえず言う通りにしろ。これは俺からの命令だ。すぐカギを俺のとこへ出せ。」

梅男はアジトの出口まで行くと繰り返して言う。

「いいか?今日中に俺にカギを出せよ?」

そう言って梅男が出て行った。

「なんだよ…乙名の言いなりか!あのクソ親父が!!」

桃は傍にあった金槌を出口の扉に怒り狂って投げる。

「落ち着きな桃。」

「杏まで!せっかく置田へ侵攻できる様にしたのに…」

「別に跳ね橋を使わなきゃイイだけさ。従来の吊り橋はあるし。そうだねぇ、吊り橋近くに駐屯地を作っちまえばいいんだよ。」

「そっか~さすが、杏。やっぱ天才。」

「そうだねぇ、後はこの変若水(おちみず)で、私らに文句言う❝障害❞を取り除くことも、そろそろ視野に入れないとな。」

杏が不敵な微笑で遠くを見つめる。

「あれ?雨だ。」

桃が降り始めた小雨に気付く。それが今後を大きく左右する雨だった。


和都歴450年 8月7日 10時 黛村・変若水 乙名・星原の館


敦彦が父・満彦の部屋に入る。

「敦彦か、どうした?」

「いや、何も。今日は美薇さんいないんだ?」

「ああ、休みと言っていた。何かあったか?」

「いや、いいんだ。ちょっと出掛けてくるよ。」

そういって敦彦は部屋を後にする。

「兄上、どこへ?」

「詠彦、お前は良いよな。」

「え?兄上、どうしたの?」

星原詠彦(ほしはらよみひこ)。黛村・北地区の変若水の乙名、満彦の次男。敦彦と同じく、父の教えに従い、領民のため、民政に尽力することを目指す。父の盟友、東江家の次女を許嫁にする。

「すまん、ちょっと出掛けてくる。」

そういって敦彦は、昨日、梅男の家に招待を受けた用事を済ませに、雨の中、館を後にした。

次回2025/4/20(日) 18:00~「第6章・8幕 篭絡」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
障害だからと言って、すぐに殺すなんて、相当なケダモノですね。この先どうなっていくのか、少し怖いです。
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