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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
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第1章・1幕 懸念点

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 籐香 (おきたふじか)

  蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。


・置田 蓮太 (おきたれんた)

  14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


■ ▢ ■ ▢

和都歴(わとれき)450年・6月15日

藤香は亡くなった米の母親・稲を自宅の離れで療養させていた。様態が戻れば何か情報が聞けるというのもあったが、何より無残な亡くなり方をした米への手向(たわむ)けにとの想いからだった。

早朝、藤香は離れに入っていく。

「おはよう、起きてたか。すまないな、園。」

「おはようございます、藤香さん。お気になさらず。」


美咲 園(みさきその)。若くして蓮次と藤香の側近となり、一揆でも大きな活躍と信頼を得たことで、置田村の乙名として村設立に関わった一人。非常に平和的で、革新的。男尊女卑と古い掟から真っ向から異を唱える。



「園以外をうちの離れに護衛任務に就かせるのもと思ってな。とはいえ、お前も乙名なのだからこんな任務は御免であろうが。」

「大丈夫です。」

「園が目にかけていた武勇に秀でた娘がいたな?」

(くれない)ですか?」

「そうだ。彼女となら交代してくれても構わんぞ?私も香本さんには話して、時間を見つけて交代してくれると言っておられた。」

「では、遠慮なく。」

藤香が囲炉裏で茶の湯を温め始める。

「この後。相島に会ってくるよ。」

「・・・」

「ムダだと言いたいのだろう?」

「私はあの男に掟で裁く必要などないとも思ってます。暗殺してしまえばとも…」

「園、気持ちはわかるが、お前も乙名なのだ。野蛮な言葉は慎め。」

「…でしたね。」

とはいえ、藤香も黛村や攻勢派の乙名、相島の件など懸念の多さに美咲の気持ちも分からなくなかった。


ーガラ!


戸が開く。

「あ、おはようございます。美咲さん。母上、行ってまいります。」

「うむ、気をつけてな。」

藤香が蓮太の見送りをする。

「さて、私も行くとするか。園、後を頼むぞ。」

「お任せください。」

蓮太が寺院へ向かうと、すぐに藤香も支度をする。

間もなく馬車が到着した。

「田中、相島の元へ向かってくれ。」

「わかりました。」

藤香を乗せた馬車が八俣の地へ向かっていった。



一方、蓮太らは寺院へ集団往来をしていた。

「おはよう。」

虎太郎が横並びに歩き始める。

「おはよう、虎太郎。」

毛呂 虎太郎(げろとらたろう)。蓮太と同じ14歳。本置田地区でも珍しい、貧民の生まれ。蓮太を兄のように慕い、両親の人柄もあり、道徳も高い。腕力は弱いものの、立場が弱い人を放っておけない。

「蓮太は、学童会長に立候補するんでしょ?」

「ああ。母上にも言われたしね。何よりこの村を変えるなら寺院の在り方をまず変えれないと。」

「さすが蓮太だよ。僕はそこまで高い志なんかない。」

虎太郎は俯く。

「虎太郎も応援してくれ。きっと立候補には周りに人も必要になる。」

「僕なんか何もできないけど、声をかけてくれたら何でもやるよ。」

虎太郎は笑顔で答える。

後ろから稲穂と小夏が二人を挟むように並んできた。

「蓮太さん、虎太郎くん、おはよう。」

「おふたり、おはよ。」

鈴谷 稲穂(すずたにいなほ)。黛村の旧名・鈴谷村の元乙名・鈴谷与志夫の娘。両村で高い地位があり、一揆の際に蓮次が置田村に取り立てた以降、次期乙名としての地位も噂される。稲穂自体は乙名に興味はなく、蓮太の許嫁となり、蓮太に乙名になることを望んでいる。

書本 小夏(かきもとこなつ)。彼女も生まれは現・黛村。一揆の際に父とは生き別れ、母と暮らす。事情を知った蓮太は時々家族で食事をする仲。身体能力が高く、女性らしくないと本人は気にしている。


「私たちも選挙の時はお手伝いするからね。」

「ありがとう、稲穂さん。」

「寺院にお団子屋作るの条件で!」

「小夏は食べるのホントに好きだな。」

徐々に協力する者も集まってきて、蓮太も少し胸を撫で下ろす気分だった。

寺院に着くと、蓮太は一人、用を足して広場へ戻ろうとする。


「置田君、学童長に立候補するのよね?」

「え?」

角から人影が出てくる。

「ち、千毬さん?」

千毬がゆっくり近づき蓮太を横目に見る。

「どうかしら?私と取引しない?」

千毬が蓮太の顔を大きな瞳で捕らえると、不敵に微笑んだ。

次回2024/10/10(木) 18:00~「第1章・2幕 取引」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
登場人物が増えてきて、物語がどうなっていくのか楽しみです。 考えるのは大変だと思いますが、ゆっくりと作成してください。 毎話楽しみに待ってます。
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