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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第5章・紫の七草
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第5章・9幕 覚悟

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


◎青田組


・青田 勝一郎 (あおたかついちろう)

青田組・組長。赤島会の堅気への対応に失望し、自らあるべき野蛮組織に独立を目指す。現状、孤軍奮闘だが、その意志は固い。


・青田 勝資 (あおたかつすけ)

青田組・若頭。勝一郎の長男。父と同じ思想で組でも希有な武闘派。次期組長としても着々と力をつけている。青と白のコントラストが目を引く着流しを纏う。


◎黒川組


・黒石 礼央 (くろいしれお)

黒川組・若頭。女性でありながら腕と頭が冴える、若くして出世した注目株。サバサバした性格で、人望もある。人の機微を見抜くことにも鋭敏。サイコロの賭け事が大好き。


◎黄田組


・黄田 八太郎 (きだはちたろう)

黄田組・組長。赤島会から副統括の神籬の監視を命令され、そこに一定の人員を割いている。昔気質の横柄な崩れ者で、狡猾。生き残るためには家すらも売る薄情さを持つ。


・大胡田意満 (おおこたおきみつ)

顔まで黄色装束の部隊を束ねる黄田組の男。巨漢で、素手の格闘を好む。


◎紫の七草


・竹達 鬼灯 (たけたつほおずき)

紫の七草の1。剣の達人で紫の実働部隊として活動し、無双をロマンに掲げる程の実力者。並外れた身体能力が、七草随一の戦闘員とも言われるほど。ザンバラ髪をポニーテールで纏め、浴衣一丁という女子力の無さ。


・遙 星薊 (はるかほしあざみ)

紫の七草の1。情報収集や毒針での暗殺を担当。汚い戦術や拷問を好む非道な女戦闘員。黒装束に外は黒、内は赤のマントを羽織る姿が蝙蝠を彷彿させる。


■ ▢ ■ ▢

勝資と鈴谷が刀に手を置くと、鬼灯は興奮し、顔色が変わる。

今にも戦闘開始になるかという時だった。

「待て!」

ー!?

「ここは俺の家だ。ヤルなら俺を殺してこの家を奪ってからヤレや!」

勝一郎が家から出てきて、怒号を浴びせると、鬼灯と星薊はニヤリと笑う。

「へぇ、どいつもこいつも命知らずって事?こんな興奮もウチ久々だわ。」

鬼灯は刀に置いていた手を放す。

「どういうつもりだ?」

勝資が睨む。

「あはは、いや、ウチらは言った通り、白石と黄田を倒すんだけど、青田は必須じゃない。」

「見逃すと?」

「うーん、今んトコはね。それより赤島の方が個人的には嫌いだなぁ。な?」

鬼灯が星薊に同意を求めると、星薊も頷いてみせた。

「赤島さんに、会長に会ったのか?」

勝一郎が問う。

「ああ。樒の命令で、黒川と綿貫の護衛を兼ねてね。一緒に居た相島は元より、あそこに居る奴は好きになれそうになかった。」

「…ガキが。好き嫌いで敵を決めれるほど甘くないってのによ。」

勝一郎が皮肉を言いながらも笑って見せる。

「青田組?は何処と争うつもりなの?」

鬼灯が刀を抜いては先を舐め回すように見ながらそう言った。

「何処だって構わないだろう。」

「そう言うなって。ついでがあればそいつら殺してもいいよ?」

「何言ってやがる。お前らの手を借りるなら斬られて死んだほうがましだ。」

勝一郎が啖呵を切る。

「頑固だなぁ~。わかったよ。ここは引くけど、考え変わったり、ピンチになったら、黒川の集会所に居るから、会いに来てよ。」

「他に用事がないならさっさと出て行け。」

勝一郎の話を聞き流すように鬼灯と星薊が門を出て行くなり、振り返ることはないまでも、手を振って去っていった。

「親父、少しうまく利用してやればよかったのに。」

勝資がボソッという。

「ふん。彼奴らが七草か。」

勝一郎はそういうと、ニンマリしてみせた。


同じ頃、黒石は黄田組の集会所に着こうとしていた。

門に着き、馬を降りると、門番と一緒にもう一人男が迎えに来た。

先程黒川を奇襲した、大胡田だった。

「黒川の黒石さんか?何のようです?」

「黄田八太郎に会いたい。」

「若頭とはいえ、こんな若い女一人寄こすとは、黒川も酷い男だ。いいだろう、ついてこい。」

大胡田は黒石を黄田の部屋へ通す。

「黄田さんに話があるそうで、黒川の若頭です。」

「ひっひ、また若い女じゃの。若頭?黒川の女じゃないのか?」

黄田がそう言うと大胡田とその両脇の取り巻きが鼻で笑う。

「さて、何の用じゃて?」

「黒川組組長より言伝です…」

「ほう?」

「…の前に、我々黒川に奇襲を仕掛けたのは黄田組の意思で間違いありませんか?」

「それ聞いてどうするんじゃ?」

「お答えいただきたい。」

「・・・」

黄田が大胡田に目配せする。

「黒石さん、アンタ死にに来たのか?それ聞いてどうすんだ?はいと言ったら?それとも違うと言ったら?」

「前者なら黒川組長の意思通り、宣戦布告する。後者なら…」

「後者なら、なんじゃ?」

黄田が黒石を舐め回すように見つめる。

「個人的に黒川組を代表し、命を懸けて宣戦布告する。」

「何?」

大胡田は驚く。

「ひっひ…黒石さん、アンタ啖呵切ってきたつもりじゃろうが逆じゃ。どの道、アンタをこのまま帰すつもりはない。大胡田、死なないくらいに痛めつけて、儂の玩具にしろ。」

「はい。…っつーことだ。わざわざ御苦労だったがアンタはここで終わる。」

大胡田は素手で黒石に攻撃を仕掛ける。

黒石はバク転して躱す。

「なかなかの身のこなしだ。」

大胡田が連続で攻撃する。

黒石は全て躱し、大胡田に一撃蹴りを食らわす。

「ぐふ!」

「悪いがここでは終わらない。」

「てめぇ!」

大胡田が取り巻き二人に目配せする。

同時に大胡田が黒石に突っ込む。

黒石は大胡田をバク転で躱すも取り巻き一人に羽交い絞めにされる。

「ちっ!」

「ひっひ」

黄田がニヤっと笑う。

「死ねや!」

「がふ!」

黒石は動けないまま大胡田の一撃をミゾに食らう。

「このまま可愛がってやるから楽しみにしろ!」


ー 黒石、死ぬな。


ー それも役目ですから。


黒石はこの時覚悟を決めた。

次回2025/3/23(日) 18:00~「 第5章・10幕 奥の手」を配信予定です。

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