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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第5章・紫の七草
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第5章・4幕 奇襲

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・綿貫 仁兵衛 (わたぬきにへえ)

置田村の東地区・八俣の刀禰。八俣の刑務主を担当 物静かで従順。しかし欲望にはそれ以上に忠実。相島の九狼党との関係に気づき、急接近。覚悟を示し、九狼党の❝毛❞として活動する。


・黒石 礼央 (くろいしれお)

黒川組・若頭。女性でありながら腕と頭が冴える、若くして出世した注目株。サバサバした性格で、人望もある。人の機微を見抜くことにも鋭敏。サイコロの賭け事が大好き。


・黒岩 鉄秀 (くろかわてつひで)

黒川組・若頭補佐。武闘派で、力仕事で上に成り上がってきた。戦争を祭りと称し、一騎当千を愉しむ男。冷静な部分もあるため、重宝される。


・上田 樒 (うえたしきみ)

紫の七草という紫御前の側近集団の長。氷雨の女といわれる冷酷非道の美女。黒い生地に紫の花柄の着物を纏い、圧倒的雰囲気を纏う。


・雨宮 蕨 (あめみやわらび)

紫の七草の1。樒の所持品を持ったり、身の回りの世話をする。樒の側近的役割。棒術や格闘術の心得がある。天然な性格だが命令には忠実。


・花澤 水仙 (はなざわすいせん)

紫の七草の1。樒に次ぐサブリーダー的役割をこなす。蓮太らと同じ14才でありながら、卓越した分析能力と指示能力を持つ。大きな瞳にお河童頭、洋服にズボンという、ボーイッシュなスタイル。


・竹達 鬼灯 (たけたつほおずき)

紫の七草の1。剣の達人で紫の実働部隊として活動し、無双をロマンに掲げる程の実力者。並外れた身体能力が、七草随一の戦闘員とも言われるほど。ザンバラ髪をポニーテールで纏め、浴衣一丁という女子力の無さ。


■ ▢ ■ ▢

黒石らが集会所の番をしていると、南の方角から馬車が何台か向かってきた。

「ん?来やがったか!」

黒岩が臨戦態勢になる。

「待ちな!南から来るってことは会長かもしれない。」

黒石が諫める。

馬車が着くなり、綿貫が降りてきた。

「赤島会の綿貫だ。ここが黒川組の集会所か?」

「彼方は?」

「八俣の乙名、赤島さんの知人、相島の遣いだ。組長の黒川多聞さんに話がしたい。」

「組長は今休息中でね。私が代わりに話を聞こう。」

「代わり?」

「私は黒川組の若頭をしている、黒石礼央。以降お見知りおき頂きたい。」

「…そうか。わかった。」

そういうと、黒石は綿貫を部屋へ通し、2人で話をする。

「で、組長に話したいこととは?」

「我々は赤島組と黒川組のサポートに入る。ただし、基本ここでの指揮系統に入るというつもりはない。攻められたら守り抜く、そちらが攻めれば後詰めに入る、そういった感じだ。」

「…ほう。」

「?、あまり嬉しくはないようだが?」

「あはは。いや、馬車で何台も来た割には、消極的な活動しかしないんだなって。」

「あん?」

「いや、気に障ったのなら謝る。会長の知人、そして意志であるなら、私は一向に構わない。一応組長の耳に入れておくが、組長も同じ考えだろう。部屋は今用意させる、適当に使ってくれ。」


和都歴450年 8月6日 午後17時 神奈備・黒川組集会所・付近 黄田組秘密侵攻部隊 


「お前ら、もうすぐ黒川組だ。戦闘準備!」

「はい。」

「風巻、足の速い2人を連れて、特攻しろ。」

「了解です、大胡田さん。」

大胡田意満(おおこたおきみつ)。顔まで黄色装束の部隊を束ねる黄田組の男。謎に包まれている。


「では、私は組長に話をしてくる。小黒、相島さんの客人に部屋まで御案内しろ。」

「はい。」

外で悲鳴が聞こえる。

「ん?」

「まさか、敵襲か?」


「このヤロォ!!」

風巻の俊足が一気に集会所前の黒岩の前まで来ていた。

黒岩が気付く限り、北からの道に立っていた10人の7人が斬られている。3人は臨戦態勢で、2人を囲んでいる。

黒岩は風巻の太刀を抜刀で弾いた。

「奇襲とは汚ねぇ奴らだな。」

「俺の任務は殺して殺して…死ぬこと。」

そういって西の衛兵に斬りかかりに行く。

「は、速い…」

また3人斬る。

番をしていた者は圧倒され、7割死んだ。

ようやく綿貫の部下も動き出し、北からの道で2人を囲んでいた黒田組3人の助太刀に入り、2人の手合いを瞬殺する。

「あとはお前だけだ。」

黒岩が風巻を狙う。

すると北からの道で更に悲鳴が聞こえる。

「くそ、増援か!」

「本隊だよ。俺たちは特攻だ。」

風巻は西の衛兵を全て殺すと最後に黒岩にかかってくる。

「おもしれぇ。」

黒岩は、風巻からの一太刀を瞬間で弾くと、喉に手刀で突く。

「がは!」

「奇襲特化の兵士か。流石だったぜ。トドメだ。」

黒岩の刀が風巻を切り裂いた。

「風巻がやられたか。お前ら、引くぞ。」

大胡田の合図で黄色装束の部隊が引いていく。

中から黒石と綿貫が出てくる。

「何事だ?」

「黄色装束の奇襲です。大半やられました。申し訳ない。」

「黄色装束?黄田組か?」

「恐らくそうだと。」

黒岩の報告に黒石が情報を整理する。

「本当に襲ってくるとはな。これは私も本気にならなくては。」

「とりあえず組長にも報告を入れてはどうだ?怪我人の処置等は俺も手伝おう。」

綿貫が提案する。

「すまない、恩に着る。」


奇襲の途中から一部始終を崖の上から見ていた者たちがいる。

「今こそ漁夫の利じゃね?」

「攻めないんですの?樒ちゃん。」

「あそこに居るのは綿貫ですね。❝毛❞の称号を持つ男。」

「あちゃ、なんだ、めんどくさいな。じゃ無暗に無双できないな。」

「樒、どうする?」

「そうですねぇ…」

樒が崖から飛び降りる。

「蕨、水仙、鬼灯、着いて来て下さい。後はそこで待機をお願いします。」

3人が樒の後に着くと、黒川組の集会所へ歩いて向かっていった。

次回2025/3/6(木) 18:00~「第5章・5幕 紫の七草・❝お願い❞」を配信予定です。

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