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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第4章・赤島会
51/144

第4章・11幕 和都歴450年 8月5日 妖艶なる夜

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・書本 小夏 (かきもとこなつ)

彼女も生まれは現・黛村。一揆の際に父とは生き別れ、母と暮らす。事情を知った蓮太は時々家族で食事をする仲。蓮太への想いを改め、自身が得意とするくノ一への修得を志す。身体能力が高く、冷静で皮肉の利いた口調に変貌するも、本心は蓮太への恋心はどこか抑えられない。


・高遠 梓 (たかとおあずさ)

八俣の貧民の出自。小夏に引けを取らない忍術の技量と、暗殺技術を幼くして習得したという。黄緑色の露出の高い忍び装束に普段は白い衣を纏う、上品かつ華麗な立ち振る舞いが更に尋常でない印象を与える。


・霧隠 玄 (きりがくれげん)

蓮太らの同期。飄々とした性格で、暗殺が得意の忍者志望。千毬とは付かず離れずの仲。妙に多面性を持ち合わせる不気味な性格。九狼党の❝爪❞である。


・成島 幸太 (なりしまゆきた)

冴島五郎とは古くからの付き合いで、冴島の活動のフォロー・調査など様々な面で協力する。忍者学科を選択したのは調査くらいしか自分にはできないという負い目もある。


・野崎 妖 (のざきあやかし)

小夏と同じ忍者専攻。乙名・野崎飛助の妹。その立場を利用し、忍者学科の大半を支配する。対切創網タイツを纏うも、透けた下はビキニの様な紫の下着のみという大胆な服装も、その自信の現れである。蓮太と友好的で、忍者として才もある小夏を敵視する。


ーーー


・紫 尤 (しゆう)

元来、祖柄樫山近郊に住んでいた女領主。大柄で薙刀の達人。気品に満ちている面もあり、紫御前と畏怖される。その実は、九狼党の幹部・かつ実行部隊の頭目。黛村とも繋がるも、謎の多い淑女。


・上田 樒 (うえたしきみ)

紫の七草という紫御前の側近集団の長。氷雨の女といわれる冷酷非道の美女。黒い生地に紫の花柄の着物を纏い、圧倒的雰囲気を纏う。


■ ▢ ■ ▢

縛られた妖は狂ったように笑う。

「いいよ。好きにしなよ。アンタらが簡単に私に靡かないのはこれで良くわかった。」

「そう?じゃあ、これからの忍者人生、好きにやらせてもらうから。」

「僕も。そもそも忍者としてより、人として縛られたくない。」

小夏と玄はそう言って手を振る。

「私も色々やることもあるから。妖の駒になるわけにいかなくて。」

梓も手を挙げる。

「お、俺は…」

成島はチラリと妖を見る。

妖は唇を舐めながら成島を見る。

「アンタは冴島君の助けになるんじゃないの?」

小夏が間に立って視線を遮る。

「あ、ああ。そうだな。」

俯く成島を妖が追い詰める。

「成島君?冴島君に見捨てられても、アタシが拾ってあげるから。いつでも待ってるわ。」

小夏が間に立ちながら、語る双方に目線を合わせる。

「この女に墜ちたら、成島君(あなた)はもう成島君(あなた)ではなくなる。気を付けなさい。」

「あ、ああ。ありがとう、書本さん…」

「じゃ、引き揚げましょう。」

梓がそういうと皆、引き上げていく。

「書本小夏…いつまで屈強な態度で居られるかな?フフ…」

妖はそう呟くと気を失った。


「今日はありがとう。なんか済みません。」

成島はそういうと家に辿り着き、皆と別れた。

成島を送ると3人は帰路につく。

「高遠さん?玄も。ありがとう、示し合わせたように助けてくれて。」

小夏が二人にお礼を言う。

「いえ。書本さんがやらなきゃ、私がやっていた。どっちが先かなだけだよ。」

「そっか。あ、小夏でいいよ?」

「え?じゃ私も梓でいいから。って言えばいいのかな?」

そういうと二人は笑った。

「玄も、ありがとう。」

「いや、僕の任務なんでね。」

「え?どういう事?」

「ん~言えない。守秘義務ってやつ?でも味方だと思ってくれて構わない。」

「そっか。じゃ、私は此処で。梓もここから八俣に行くんでしょ?」

3人が交差点で別れる。

「味方だと思ってくれて構わないかぁ。カッコよすぎたか?まぁでも…今のところは…だけど。」

そう呟いて、玄は微笑むと、歩く先に少女のシルエットが見える。


ー夜の同じころの時間・黛村・西地区、❝女郎花(おみなえし)❞。紫御前の館

「樒!樒!」

「何ですか騒々しい。」

「菫様を見つけたって。」

「あら。思ったより早かったですね。分かりました。御前様にはわたくしが伝えます。水仙、貴女はすぐに七草を全員招集なさい。」

「了解~。」

花澤 水仙(はなざわすいせん)。紫の七草の1。樒に次ぐサブリーダー的役割をこなす。蓮太らと同じ14才でありながら、卓越した分析能力と指示能力を持つ。

「御前様、樒です。」

「おお、樒か。入れ。」

紫尤こと、紫御前はジャグジーたる浴槽に浸かり、背中を向けている。

「入浴中に珍しいの。樒であるなら嬉しい限り。違う者であれば…」

「存知ております。」

樒は、黒い生地に紫の花柄の着物を丁寧に脱ぎ始める。

「失礼いたします。」

「久々よのう、こう二人で浸かるのも。どれ、もっと綺麗な肌を見せてみろ。」

「はい。」

「素敵なカラダに成長したのう、樒?」

「御前様のお陰です。」

ピクリとも動かない樒を、御前はケダモノのように微笑むと舐め回すように見ながら、そして愛撫する。

「うーん…素晴らしいのう…で?用件はなんじゃ?」

御前の視線が一瞬樒の目線で留まる。

「はい、妹君の菫様が見つかったようです。」

「…ほう?」

「御前様?わたくし個人としましては…」

「首を持ってまいれ。」

「…はい。」

「樒の命を一番に狙っておる女じゃぞ?妾が出向いて殺しても良いのじゃ。」

御前は樒を抱き寄せる。

「妾のこの愛情を今、しっかり受け取るのじゃ。」

「ご、御前様…感じます、わたくしは…御前様からしか愛を感じません。」

「そうじゃ。妾が樒を幸せにし、守る力も与えた。良いな?」

「で、では、直ちに掛かります。」

「そう急くな。今日は水仙に任せよ。折角の入浴じゃ。妾と愛を深め、戦に備えよ。その分、樒は強くなるのでな。」

樒は不敵な微笑を浮かべながら、御前とカラダを重ねる。

「御前…様…」


ー上田樒。彼女は❝愛❞を知らない。

御前への奉仕の情、御前の快楽こそが、上田樒の❝愛❞だと❝教わった❞からだー


ー第4章・終

次回2025/2/17(月) 18:00~「 第4章・幕間劇 紫家」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
妖と小夏の戦いも今後見どころですね。
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