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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第4章・赤島会
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第4章・4幕 女傑・置田 藤香

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 籐香 (おきたふじか)

蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。赤島会たる野蛮組織を束ねる会長の顔を持つ。


・鈴谷 与志夫 (すずたによしお)

現在は置田村・北地区の乙名。。稲穂の父。鈴谷村(現・黛村)の乙名で反対派・黛紅蓮を置田蓮次と共に抑えていた男。後に村を奪われ、蓮次と置田村を発足した。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

置田村の沙汰人。置田村東地区・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。攻勢派に副統括の話を持ち掛けられ、藤香抹殺に掛かる。


・内川 貴実 (うちかわたかざね)

刑務官人。無口だが非道で綿貫が拾ってきた悪人。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月2日・昼 置田村・東地区・八俣 


「田中、急いで相島邸へ馬車を走らせてくれ。」

「わかりました。」

藤香は本置田に徴兵令を出そうと決断していた。

置田村の北地区・神奈備。同じ内政派の鈴谷与志夫。彼が乙名に承認され、北地区を統括することになるも、元々北地区を治めていた赤島の統治は凄惨なものだった。

野蛮組織・赤島会が支配していたのだった。しかし、赤島の異動と共に赤島会は分裂、小競り合いによる治安悪化が絶えない状態に。

本置田に最も近い一部を何とか鈴谷は統治できた。そこを足掛かりに、神奈備全土を平定する予定だが、赤島会の存在が大きく、責任者の赤島に解体を願い出るため、相島邸にいるという赤島に会いに、藤香は急いだ。

無論、良い返事は期待しておらず、その場合、赤島会とは戦争になることも伝えるつもりだった。つまり、宣戦布告だ。

しかし、別の要件と狙いから、攻勢派と相島一味は既に藤香を討伐対象としていることに気づいていなかった。


相島邸


「赤島さん。藤香が相談に来るみたいですな。」

「ああ。」

「まさか、ここで殺しはしませんよね?」

相島が赤島に問う。

「ん?その方が手早かろう?」

「まぁ、そうではありますが。あの女に少し動いてもらうというのは如何かと思うんじゃが。」

「動く?」

「赤島組と黒川組は儂らが引き受けるから、青田組と白石組、黄田組は藤香にお願いするのですよ。」

「おぉ。それは名案だな。」

「3つの組と藤香が弱れば、そこを突く。それで仕舞じゃ。」

そうこう言っていると、藤香が到着した。

「藤香さん来ましたー。」

内川が藤香を応接室に案内した。

「久しぶりだな、相島。」

「どうも。」

「まぁ、掛けてください。」

赤島が藤香をもてなすと、藤江がお茶を持ってくる。

「お構いなく。」

「で、相談と聞いてます。何でしょう?」

赤島が慣れない態度で応じる。

「単刀直入に言う。…の前に、赤島、何故相島邸にいるんだ?」

「え?」

「まずはそれを答えてくれ。」

「な、何故って…居ちゃマズいですか?俺は八俣の統括。八俣のどこに居てもいいでしょう?」

赤島は少し動揺する。

「ああ、構わない。だからこそ聞いてるんだ、答えられないのか?」

「儂が是非にと誘っ…」

「私は赤島と話している。相島は黙っていてくれ。」

何時にない気迫の藤香に、相島も一瞬肝を抜かれる。

「さぁ、答えてくれ。」

「いや、是非にと誘われまして。八俣の沙汰人に会うのも見聞を広められて良いかと。」

藤香はこの瞬間、相島の下りに合わせたように話す赤島に、違和感を感じた。

「ほう、そうか。」

「はい。」

赤島は少し目を逸らす。

「どうしたんです?藤香さん、今度は儂ではなく、赤島さんにまで疑惑の念を?」

冗談ぽく相島が話を打つ。

「赤島。」

「はい?」

「まさか、この相島を、副統轄に任命など考えていないよな?」

「ま、まさか…」

「忘れてないと思うが、相島は容疑者として私が調査することを条件に、お前の八俣への異動を認めたのだ。それを忘れてもらっては困る。」

「ちょ、何なんですか、藤香さん。儂をまだ疑っ…」

「ああ。」

「ー!?」

「疑うどころか、必ず捕まえて、お前に無理強いされ、亡くなったものの仇を取る、そういったはずだ。」

「…そういうのやめましょうって…言ったじゃないですか。」

「黙れ。」

不穏な空気が流れる。

「赤島、もういい。お前のことだ、この事は野崎の算段だろう?ならばやはりここに来る意味はなかったかもしれないな。」

「何?」

「赤島会の解体、これをお前にお願いに来たが、良い返事はなさそうだ。挙句、私の追う容疑者と仲良く酒でも酌み交わしたのか?どういう了見だ貴様?」

「ちょっと、藤香さん、落ち着いてくださいよ。」

ー!?

藤香は近寄る赤島に瞬時に帯刀で首元に当てる。

「ひ、な、何を?」

「わ、儂の屋敷だ。止めてくれ!」

「愚図どもが。」

藤香が納刀すると、藤江と内山も何事かと部屋に入ってきた。

「これが私の答え。私の決断だ。」

「…藤香、てめぇ。」

相島が本性を見せる。

「やるのか?1対4か?何なら大須賀と綿貫も呼んだらどうだ?来るまで待ってやろう。」

「笑わせるぜ。赤島さんと藤江、内山で十分、ですよね?赤島さん。」

「…藤香さん、今日はこのままお引き取り下さい。」

「赤島さん?」

「ふん。女一人を殺す勇気もないとはな。」

藤香はそのまま玄関を出る。

「赤島、神奈備の赤島会、10月までに解体しないなら、こちらから仕掛ける。伝えたぞ?」

藤香はそう言って出て行った。

次回2025/1/26(日) 18:00~「第4章・5幕 宣戦布告」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
藤香、強いですね。流石です。
藤香はカッコ良きですねぇ! てっきりやってしまうのかと思いましたけど、まだお預けなんですね笑
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