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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第4章・赤島会
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第4章・2幕 2つ目の❝手助け❞

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・野崎 飛助 (のざきとびすけ)

置田蓮次の信望者で右腕だった男。蓮次の死後は妻・藤香にも劣らぬ村人を束ね、黛村への侵攻を常に画策している。古き仕来たりを重んじるが故、美咲とは特にウマが合わない。


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。


・豊倉 完以 (とよのくらかんい)

置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

置田村の沙汰人。置田村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。攻勢派に副統括の話を持ち掛けられ、藤香抹殺に掛かる。


■ ▢ ■ ▢

野崎が赤島の売春宿から連れてきた女4人を、結局相島は全員裸にさせて、囲ませた。

酷い命令と仕打ちをしては歓ぶ相島はまさにケダモノだった。

「いや~たまらん。やっぱりお前いいな。この女もいいが、どれも持ち帰るに迷う。」

「何なら全員どうぞ。」

野崎の言葉に、女性たちの心は折れてしまった。

「い、いや…」

1人の女性がそう漏らした。

「ん?野崎さん。この女は嫌だそうじゃが?」

「ほう、そうですか。豊倉!」

「はい。」

「その女を生きたままバラバラにして、親に返してこい。」

「わかりました。」

豊倉が女を連れていく。

「いや、やだ、やっぱり何でもするから!」

「いや、結構だ。嫌な気持ちでやられても迷惑でね。」

そういうと豊倉と女は外へ出た。

「すみません、相島さん。教育不足でして。」

「まあ、儂の良さを分からん雌豚には、相応しい末路じゃな。」

「残りの女は別室に待機させて、後でお持ち帰りください。そろそろ例の話を済ませましょう。」

「おお、そうじゃな。済まんな。儂も女のことになると夢中でな。」

「素晴らしいことですよ。」

赤島と豊倉が女を別室に連れていく。


良い酒で、改めて二人は杯を交わす。

「では、続きといこうか。」

「わかりました。2つ目の❝手助け❞は情報のみの提供です。」

「情報?」

相島は眉を顰める。

「ただし、藤香と対立関係にある相島さんにはかなり貴重な情報です。」

「ほう、で、どんな情報なんだ?」

「その前に、相島さんが、藤香にかなり怪しまれる切っ掛けとなった事件は御存知ですよね?」

「ん?あ~白昼、村にかなりイイ女がいて、つい手を出した時だ。名前とか死んだ奴らは覚えとらんが。」

相島が記憶を辿り、そう話した。

「その時、相島さんのことです。関係者の処分に抜かりはなかったと思いますが。」

「ああ、確か部下も切り捨てた。そこまでの価値がある女だった。結局はその女も自害したが。それが何か問題だったのか?」

「はい。ただ、この情報を渡すと同時に、私のお願いも一つ聞き入れて頂けますか?」

「お願い?内容にもよるが。」

「ではお願いの内容を先にお伝えしましょう。」

野崎がそういうと、盃をサッと飲む。

「お願いと言うのは…藤香の抹殺です。」


ー!?


「…本気か?」

相島は少し酔いがさめた。

「はい。」

「儂が直接手を下すことも条件か?」

「いえ。方法は問いませんよ。結果がすべてでしょう?」

涼しい顔で言って退ける野崎。

「そのリスクに見合う情報だと?」

「…というより、結果的に藤香を襲う事にもなりかねないので。」

「…2つ目の❝手助け❞とやら、話してみてくれ。」

相島が神妙な顔をする。

「結論から言いましょう。相島さんがあの時、慰め者にした娘の母親が、藤香の家で生きています。」


ー!?


「何?そ、それじゃ…」

「御心配なく、言葉も譫言(うわごと)しか話せません。死んでいるようなものです。」

「ふぅ…」

野崎はスキを逃さず、安心する相島の心を穿つ。

「…でも、不安…ですよね?いつ何を話すか分からない。」

笑顔で話す野崎に、相島は鋭い視線で応える。

「そういう事か。確かに、同時に藤香を襲うことにもなる…な。」

「ええ。その方が効率的で、自然でしょう。寧ろこんな良い機会は後にも先にもないでしょう。」

野崎が柔らかく焚き付ける。

「野崎さんは手伝ってくれないのか?」

「俺は立場上、表立っては無理です。が、赤島が神奈備に残してきた野蛮組織がありましてね。そこと結託して藤香を詰めるのが宜しいかと。」

「赤島会か?」

「お、御存知でしたか。」

相島が盃を飲む。

「今は大きな組織だと聞いている。それなら百人力だ。藤香ごとき仕留めるのも時間の問題だろう。」

「それが、そうもいかない事情がありましてね。」


ーガラ!


「そこからは俺も話に加わります。」

赤島が部屋に入ってきた。

「お、赤島会ってやはりアンタの組織か。」

相島がニヤリと笑う。

「赤島会、正確には赤島組を使うなら、俺のお願いも聞いてもらうのが条件だ。」

「条件?」

赤島の珍しく真面目な顔に、相島はまた眉を顰めた。

次回2025/1/19(日) 18:00~「第4章・3幕 赤島会」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
悪い男ばかりですね。蓮次も相当遊んでいたみたいですが、赤島と相島は本当に酷すぎます。
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