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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
序章・祖柄樫山の双村
4/130

序章・4幕 相島という男

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・相島 権作 (そうじまごんさく)

  置田村の沙汰人。村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。


・桑井 政介 (くわいせいすけ)

  相島の部下。貧民だったが、相島に官人として将来を約束されたが、裏切られ殺された。


・大須賀 栃春 (おおすがとちはる) 

  置田村の刀禰。八俣の刑務長を担当 相島の息がかかっている。


■ ▢ ■ ▢

桑井が殺され、藤江らは早朝、本置田の牢屋に馬車で帰還する。

「戻りました。」

「おう、ご苦労。」

二人を出迎えたのは八俣の刀禰・刑務主、綿貫仁兵衛(わたぬきにへえ)。まだ40歳にも満たないが、物静かな男で、従順。しかし欲望には忠実な男。

「奥で相島さんと大須賀さんがお待ちだ。」

二人が奥に入ると贅沢な料理と酒で盛り上がっていた。

「ただいま戻りました。」

「お、今回色々身体(からだ)使ってもらって感謝しとるよ。」

相島がムシャムシャと食事をしながら礼を言う。

「桑井が隠し持っていた残りの銀貨です。」

藤江が相島に差し出す。

「いあや、悪いな。でもこれはお前さんたちに渡しとくよ。」

「え?いいんですか?」

藤江らは驚きを隠せず、目を丸くする。

「その代わり、また何かあったら頼むよ。」

相島は視線を合わせず淡々という。

「ありがとうございます。」

「行っていいぞ。」

相島は二人を所払いし、酒をゴクゴク飲み始めた。

「ぷはぁ。うまい、スッキリした。」

(つか)えが無くなれば、酒も美味いですよね。」

「むふふ、言うな言うな。感謝しとるぞ。大須賀(おまえ)には。」

そう言いながら相島は金貨の入った袋を大須賀に渡す。

「ありがとうございます。」

「これからも儂の欲求を満たす上では大須賀(おまえ)との関係は不動にしておきたいからな。」

「実質、相島さんは罪にはしません。すべてフリーパスということ、心得てます。」

「わかっとるね、うむ。わはは。」

相島の酔いが一層ケダモノを濃く現す。

「しかし、相島さん。不思議でして、税を誤魔化したとして、それだけの利益を得れるものなのですか?」

「む?何だ?お前も稼ぎたいのか?」

「いえ、私は相島さんには及ばないですが、気になりましてね。」

「まぁ、儂はお前以上に特別な存在なんじゃよ。」

相島の顔は更にケダモノになる。

二人は部屋を後にすると建屋を出て、もう一つのカギ付きの建屋へ入る。

「そういえば掟破りの処刑予定の者や、都からの放浪者など、身寄りのないものはまた集めておきましたが、その者はまた相島さんの馬車にのせますか?」

「そうじゃの。そこの男だけ縛って放り込んでくれ。後はまた改めてくるから、鎖で繋いでおけ。」

「わかりました。」

相島は牢を舐め回すように見ると少女に目が留まる。

「あのコだけは今日連れて帰るかの。酒も回って頃合いじゃ。」

「直ちに。」


大須賀が最初の建屋に戻ると、綿貫と藤江らが出迎える。

「相島さんは?」

「御愉しみだよ。お帰り後は()()、よろしくな。」

大須賀は親指を後ろに向ける。

「はい。」

藤江が返事をする。

「おい、内川。」

二人は部屋を後にする。

「本当のところ、相島さんはどう稼いでいるんでしょう?」

「さてな。相当ヤバいことなんだろう。」

綿貫の質問に大須賀が冷静に答える。

ー恐らく人売りでもしてるんだろう。ただどんなコネかは分からない。

大須賀は想像する。


相島が帰った後、藤江と内川は無惨な少女の遺体を片していた。

「たまには俺が処理してくる。馬車に積むのだけ手伝ってくれ。」

相島の馬車が出ると、綿貫も死体の処理に谷川へ向かうところだった。

「じゃ、行ってきます。」

「珍しいな、綿貫(おまえ)が行くのか。」

大須賀が気に掛ける。

「たまには体張らないと、鈍っちまいますから。」

そういうと、綿貫は馬車を出す。

谷川まで馬車で来ると綿貫は少女の死体を運び出した。

「一人で運ぶのは流石にキツイな。ん?」

吊り橋の先で、ほんのり明かりが見える。

「なんだ?」

綿貫は死体を谷に投げ捨てると、そのまま吊り橋を渡り、茂みからその明かりの場所を覗いた。


相島と、さっき馬車に運んだ男が目隠しされて立っている。

向かいには何人かいるようだがよく見えない。ただその中で異様な雰囲気を持つ美少女?が立っている。

「今回はこの男で。とりあえずお納め下さい。」

相島が敬語で話す、その美少女は、黒い生地に紫の花柄の着物を纏い、圧倒的雰囲気がそこにあった。

次回2024/10/7(月) 18:00~「序章・5幕 九狼党」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
相島、悪すぎますね。
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