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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第3章・日々是拘日
31/146

第3章・4幕 公人ケダモノ

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

  14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


・鈴谷 稲穂 (すずたにいなほ)

  黛村の旧名・鈴谷村の元乙名・鈴谷与志夫の娘。両村で高い地位があり、一揆の際に蓮次が置田村に取り立てた以降、次期乙名としての地位も噂される。稲穂自体は乙名に興味はなく、蓮太の許嫁となり、蓮太に乙名になることを望んでいる。


・三ツ谷 華 (みつたに はな)

   置田村の三大領主の一つでその娘。乙名になる男か、沙汰人に嫁ぐがせるつもりで親の英才教育は厳しい。本人は好きな人と一緒になれればそれでいいと考えている。自分が村を変えれるなら、それも考えてはいるようだが…村でも1番を争う美少女。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。九狼党の❝耳❞である。


・ 森 幸兵衛 (もりこうべえ)

   乙名や、沙汰人、親世代からは信頼のある、実直で経験豊富な守役として知られ、守役主まで実力でなった。ただ、奇妙な事件に遭遇しており、本人はそれを否定している。その実は女学童を強姦する趣味を持っていて、その立場でそれを横行、隠蔽してきた。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月1日 昼休み 寺院・面談の間


「私以外でもう一人って、誰なんですか?」

幸兵衛の病的性癖、女子学童に乱暴をする。これを過去続けてきていた。千毬は玄の諜報活動から、その事実を知り、学童会長の推薦を得るために一つ漕ぎつけたが、幸兵衛は更に条件として、これからも女子学童を宛がってもらうと取引した。

「前から気になっているのじゃ。あの三ツ谷華。村一番の美少女で儂なんかじゃ到底手に届かないじゃろう。そこで権力行使じゃ。」

「あらまぁ。低いコストで大きな魚を釣ろうとは、些か考えものですが。」

「ん?どういう意味じゃ?」

「確かに私は他の女の子をとは言いましたし、協力も惜しまないと言いましたが。御自分でも仰ってます様に華は彼方には不相応ですよ。そしてそういう末路になる女でもありません。」

幸兵衛がいきなり千毬を羽交い絞めにしてきた。

「そう言うことなら、伊集院さん、やっぱり君でもいい…!」

幸兵衛は千毬を押し倒し、乱暴しようとする。

「…何じゃ!?」

老体とは言え大人の男の力を、千毬は簡単に引きはがした。

「どうしたのかしら?続けないのですか?」

頭に血が上っていた幸兵衛はそのまま千毬を正面から押し倒そうと襲い掛かる。

「この女!」

それも、千毬は難なく躱す。よろめく幸兵衛のスキを見逃さず、千毬は自分の髪を解き、幸兵衛の後ろから右膝後ろを蹴り、片膝付く幸兵衛の右腕と右足を瞬間で千毬自身の髪で縛り上げた。

「なんじゃ?」

うつ伏せに倒れ、自由が利かない幸兵衛の前に、千毬は座り込む。

「あら?私を御堪能するつもりではなかったのでは?」

「お前さん…一体…?」

千毬が方肌脱ぎだす。

「おぉ…綺麗じゃ」

幸兵衛が自由が利かないながら左手を伸ばし始める。

「華はもっと綺麗でしょう。でも貴方には相応しくない。とはいえ、約束は約束。こういう女子学童を襲うのは私のカラダで最後にすると誓いなさいな。もし破れば私も容赦はしない。今このまま突き出す事だって出来るのだから。」

「い、いや、自由が利かぬし。」

「そのくらいで丁度よいでしょう。乱暴されるのは私も趣味ではないので。でも、最初に提示した取引は守っていただきます。私を堪能するのなら其れ一度のみとなりますと。」

「お前さんを一度きり…しかし華を諦めろと?あの様な綺麗な…」

千毬の顔つきが変わる。

「一つ言っておきます。私は彼方の口を封じることも簡単にできます。」

「何じゃと?」

「今この条件は、私の最大の譲歩。お察しいただけます?」

「しかし、1度きりじゃ、我慢できんよ。」

「欲張りさんですね。」

そういって千毬が片肌開けた服を着始める。

「あ、あぁ…いや、やらないとも言っとらんのに。」

幸兵衛は落胆する。

「まぁ、そこまで華に執着するなら、好きにしたらよいでしょう。しかしお力添えも出来ないし、何があっても私は知りませんので。」

千毬は幸兵衛から髪を解き、結び直しながら鏡台へ向かう。

「話が違うの。選挙の裏取引、公表するぞ?」

「あぁはは。どうぞ?でもなんて公表するのです?」

千毬は鏡台を見ながら髪と服装を直しながら嘲笑する。

「今の学童会長は儂を嵌めた女狐とな。」

「あら、酷いわ。では女を宛がう約束を破棄されたと、守役主もお認めにならなければなりませんよ?」

「う…」

「だから、私と1回の関係で安全に終わるか、リスクを冒して好き放題するのかはご自由です、と申したではないですか。」

「わかった。しばらく考えるわ。」

幸兵衛は察した。

ーこの女、そもそもそういう算段だったか。女を宛がうなど微塵もなく、恐らく千毬との1回の関係ということすら怪しい。捨て駒にするつもりじゃろうて。

「賢明な御判断を期待しております。」

そういうと千毬は最後に鏡でサッと全身を確認するとそそくさと出て行った。

幸兵衛が席に座る。

「千毬め。ヤッときゃ良かったか!まぁいい。賢明な判断?じゃ二人まとめてヤッてやるわい。まずは・・・」

幸兵衛は席を立つと、窓を見る。

蓮太と稲穂の隣に華が笑顔でいる。

「華・・・」

窓越しに華を触る。

そこへ千毬が合流する。

「その後は、千毬だ。一度きりじゃと?ふふ、じゃ一度きりにしてやるわ。もう躊躇わんゾ。」

幸兵衛の過去はもっと酷かった。その眠っていたケダモノが千毬の挑発で呼び起こされてしまった。

次回2024/12/30(月) 18:00~「第3章・5幕 置田北部・神奈備」を配信予定です。

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