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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第3章・日々是拘日
29/252

第3章・1幕 八俣への転任

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・野崎 飛助 (のざきとびすけ)

   置田蓮次の信望者で右腕だった男。蓮次の死後は妻・藤香にも劣らぬ村人を束ね、黛村への侵攻を常に画策している。古き仕来たりを重んじるが故、美咲とは特に馬が合わない。


・赤島 猛 (あかしまたける)

   飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。


・豊倉 完以 (とよのくらかんい)

   置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

   置田村の沙汰人。村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年 8月1日 置田村・南地区・日輪


「今日から晴れて八俣の統括ですわ。」

赤島が野崎に如何にも苦労話かのように話す。

「そうだな。でもまだ油断するな。ここからだからな。」

「へい。わかってます。」

「とはいえ、だ。一段落したし、しばらく余暇を楽しむのも必要だ。赤島(おまえ)も少し羽を伸ばせ。」

「お?そうしますか?じゃ一杯?」

「ん?なるほど…そうだな。豊倉と相島にも声をかけておくか。」

「相島?ですか?」

「相島は八俣の沙汰人の一人。まぁ副統轄にするかの見極めにもいいだろう。」

「でも噂じゃ女に酷いことして回ってますよ?大丈夫ですかい?」

「赤島が言えたことかよ。まぁ条件次第で言うことを聞くのかどうか、試してみようぜ。」

「その辺は野崎さんに従いますよ。」

そういうと二人は豊倉と相島に連絡し、いつもの料亭・伊佐に席を取る。


野崎と赤島が一番に着くと、いつもの()()()()へと案内された。

「いつも済まないな。適当に酒と肴を頼む。」

野崎がザっと注文を入れると、すぐに店主が酒を持ってきた。

「これはこの夏の濁り酒で、冷えてて今の時期、最高においしいですよ。これに合う魚を味噌で焼いて持ってきますので、お待ちを。」

ついでにいくつかの小鉢を置いていき、御新香から煮物を置いていった。

「おう、豪勢ですな。」

「ここは赤島の転属祝いだ。俺が出すから好きなだけ飲み食いしていけ。」

「マジですか!!」

そういうと赤島は手も併せずにモグモグ食べ始めた。

「慌てるな、乾杯くらいちゃんとするぞ。」


そうしている内に、豊倉が部屋に通されてきた。

「やってますね。」

「お祝いだってよ、流石は野崎さんだよな。こんなの藤香じゃやってくれないだろう。ねぇ野崎さん。」

「どうだかな。」

野崎が満更でもない表情で返す。

「野崎さん、相島も呼んだとか?」

豊倉が話始める。

「ああ。アイツが藤香とウマが合わないなら、こちらに付かせるのはアリかと思ってな。」

「なるほど。」

「ただ、粗暴は悪いだろう。八俣の統括は今日からこの赤島だ。少なくともそれはこちらからお誘いし、提示した。」

「野崎さんらしいですね。あとは相島の出方次第ですか。」

「ああ。」

「よくわかんねぇけど、ひっく。俺が八俣のボスだからなっってことですよね?ひっく。」

「もう酔ってるのか?」

「大丈夫ですかね…」

野崎と豊倉の心配を他所に、赤島の酒は止まらない。


「失礼。」

通されて部屋に来た相島が一言放った。

3人の空気が変わった。

「まぁ、掛けてく…」

野崎の言葉も終わらぬ前に相島が空いていた赤島の前、豊倉の右に座った。

相島はそのまま、いきなり手酌で酒を注いで一杯飲むと一息ついた。

「濁り酒か…好かんの。酌をする女はいないのか?」

「キサマ、かなり失礼な爺さんだな?」

赤島が凄みのある声で言い放つ。

「あん?」

「まぁまぁ、赤島、いいじゃないか。」

「だよな?儂は招待されてきた客人。失礼なのはお前じゃボケ。」

相島の返しに赤島は赤面するも、グッとこらえた。

野崎が豊倉に相手をしてやれ、と目配せした。

「どうも。申し遅れました。わたくし、日輪の副統括・豊倉です。」

「相島だ。」

「お酒はたくさんありますので」

豊倉が酌をしながら話の相手を始める。

野崎は横目で見ながらふと考えに深ける。

ーこいつが相島。蓮次さんの参謀の時とはだいぶ変わったな。藤香に正論を言われて嫌になっていたようだが。今度は俺たちから同じことをされるとでも思っているんだろう。

仮に相島の悪行が何であれ、俺に従うなら全てを水に流そうといえば従うだろうか?大事な部分はそこだけだ。が、ただただ頭を下げる俺じゃない。

❝乙名❞の力、見くびらないように一太刀浴びせておくか。

「相島さん。貴方に晴れて八俣の副統括、お願いできませんか?」

笑顔で野崎が土産話を提示した。

次回2024/12/26(木) 18:00~「 第3章・2幕 東雲 隆将」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
赤島と相島は似たもの同士だけど、仲良くはなれなそうですね、、
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