第3章・1幕 八俣への転任
今回の登場人物
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・野崎 飛助 (のざきとびすけ)
置田蓮次の信望者で右腕だった男。蓮次の死後は妻・藤香にも劣らぬ村人を束ね、黛村への侵攻を常に画策している。古き仕来たりを重んじるが故、美咲とは特に馬が合わない。
・赤島 猛 (あかしまたける)
飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。
・豊倉 完以 (とよのくらかんい)
置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。
・相島 権作 (そうじまごんさく)
置田村の沙汰人。村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。
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和都歴450年 8月1日 置田村・南地区・日輪
「今日から晴れて八俣の統括ですわ。」
赤島が野崎に如何にも苦労話かのように話す。
「そうだな。でもまだ油断するな。ここからだからな。」
「へい。わかってます。」
「とはいえ、だ。一段落したし、しばらく余暇を楽しむのも必要だ。赤島も少し羽を伸ばせ。」
「お?そうしますか?じゃ一杯?」
「ん?なるほど…そうだな。豊倉と相島にも声をかけておくか。」
「相島?ですか?」
「相島は八俣の沙汰人の一人。まぁ副統轄にするかの見極めにもいいだろう。」
「でも噂じゃ女に酷いことして回ってますよ?大丈夫ですかい?」
「赤島が言えたことかよ。まぁ条件次第で言うことを聞くのかどうか、試してみようぜ。」
「その辺は野崎さんに従いますよ。」
そういうと二人は豊倉と相島に連絡し、いつもの料亭・伊佐に席を取る。
野崎と赤島が一番に着くと、いつもの密談部屋へと案内された。
「いつも済まないな。適当に酒と肴を頼む。」
野崎がザっと注文を入れると、すぐに店主が酒を持ってきた。
「これはこの夏の濁り酒で、冷えてて今の時期、最高においしいですよ。これに合う魚を味噌で焼いて持ってきますので、お待ちを。」
ついでにいくつかの小鉢を置いていき、御新香から煮物を置いていった。
「おう、豪勢ですな。」
「ここは赤島の転属祝いだ。俺が出すから好きなだけ飲み食いしていけ。」
「マジですか!!」
そういうと赤島は手も併せずにモグモグ食べ始めた。
「慌てるな、乾杯くらいちゃんとするぞ。」
そうしている内に、豊倉が部屋に通されてきた。
「やってますね。」
「お祝いだってよ、流石は野崎さんだよな。こんなの藤香じゃやってくれないだろう。ねぇ野崎さん。」
「どうだかな。」
野崎が満更でもない表情で返す。
「野崎さん、相島も呼んだとか?」
豊倉が話始める。
「ああ。アイツが藤香とウマが合わないなら、こちらに付かせるのはアリかと思ってな。」
「なるほど。」
「ただ、粗暴は悪いだろう。八俣の統括は今日からこの赤島だ。少なくともそれはこちらからお誘いし、提示した。」
「野崎さんらしいですね。あとは相島の出方次第ですか。」
「ああ。」
「よくわかんねぇけど、ひっく。俺が八俣のボスだからなっってことですよね?ひっく。」
「もう酔ってるのか?」
「大丈夫ですかね…」
野崎と豊倉の心配を他所に、赤島の酒は止まらない。
「失礼。」
通されて部屋に来た相島が一言放った。
3人の空気が変わった。
「まぁ、掛けてく…」
野崎の言葉も終わらぬ前に相島が空いていた赤島の前、豊倉の右に座った。
相島はそのまま、いきなり手酌で酒を注いで一杯飲むと一息ついた。
「濁り酒か…好かんの。酌をする女はいないのか?」
「キサマ、かなり失礼な爺さんだな?」
赤島が凄みのある声で言い放つ。
「あん?」
「まぁまぁ、赤島、いいじゃないか。」
「だよな?儂は招待されてきた客人。失礼なのはお前じゃボケ。」
相島の返しに赤島は赤面するも、グッとこらえた。
野崎が豊倉に相手をしてやれ、と目配せした。
「どうも。申し遅れました。わたくし、日輪の副統括・豊倉です。」
「相島だ。」
「お酒はたくさんありますので」
豊倉が酌をしながら話の相手を始める。
野崎は横目で見ながらふと考えに深ける。
ーこいつが相島。蓮次さんの参謀の時とはだいぶ変わったな。藤香に正論を言われて嫌になっていたようだが。今度は俺たちから同じことをされるとでも思っているんだろう。
仮に相島の悪行が何であれ、俺に従うなら全てを水に流そうといえば従うだろうか?大事な部分はそこだけだ。が、ただただ頭を下げる俺じゃない。
❝乙名❞の力、見くびらないように一太刀浴びせておくか。
「相島さん。貴方に晴れて八俣の副統括、お願いできませんか?」
笑顔で野崎が土産話を提示した。
次回2024/12/26(木) 18:00~「 第3章・2幕 東雲 隆将」を配信予定です。




