第2章・幕間劇 そういう世界
和都歴450年 7月30日 置田村・北地区 神奈備
置田藤香のお抱え忍者・羽芝霞。彼女は鈴谷が8月から治める新天地を偵察に来ていた。
それまで赤島が統括していた地。多少の問題は覚悟していた彼女。
しかし、瞬間的な場面もそれは凄惨な場所だったという。
「お父さん…今日も?」
「秋…」
閑散とした家の一つで、父と娘が乏しい会話だけを残す。
しばらくすると男が家を訪ねてきた。
おとこは何も言わず父親の胸をはたくと、父親は金を2枚出す。
「そういえばよ・・・」
男は父親に何か話す。
「それだけは…妻も渡したじゃないか。娘は止めてくれ!」
「だったらよ・・・」
男はそう何かを伝えて次の家へ行った。
男が次の家に入ると、夫らしい男がいて、奥には妻らしき者が昼の準備をしていた。
「おう、約束の日だけどよ・・・」
「ああ・・・」
夫らしき男が銀3枚を貰うと家を出て行った。
男は家に入ると暫く出てこなかった。
「また来るわ。」
男が妻らしきものにそう言って出て行った。
妻らしきものは散らかった昼ごはんと同じ場所で裸で泣いていた。
男は次に貧民街を歩く。家の玄関前に女の子が何人か立っていて、横の皿に男が金を1枚置くと、その娘を連れていく。
男と娘が建屋に入っていくとその日は二人とも出てこなかった。
建屋にはこう書いてある。
❝赤島売春宿❞
霞は神奈備の一角をレポートして、直ぐに次に移動する。
鈴谷が統治することで、ここが一気によくなるとは思えなかった。
しかし、村の人には希望を少しはもてるだろう。そう思わなければやりきれない霞がそこにいた。
次回2024/12/22(日) 18:00~「第3章・1幕 八俣への転任」を配信予定です。