第2章・8幕 九狼党・寄合
今回の登場人物
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・相島 権作 (そうじまごんさく)
置田村の沙汰人。村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。
・綿貫 仁兵衛 (わたぬきにへえ)
置田村の刀禰。八俣の刑務主を担当 物静かで従順。しかし欲望にはそれ以上に忠実。相島の九狼党との関係に気づき、急接近。覚悟を示し、九狼党に入党。
・次川 烈逸 (じかわれついつ)
寡黙な守役。次期・守役主ともされている。風紀を任されていて、守らない者に罰則を与えてきた。体罰は良くないと、罰金制度を構築した張本人。
・木場 楊八郎 (きばようはちろう)
元々は風紀でも守役でもなかったが、次川の一存で守役・風紀に。少しの風紀の乱れてそうな学童に強く当たり、面談の間に呼び出していた。
紫 尤 (しゆう)
もともと祖柄樫山近郊に住んでいた女領主。大柄で薙刀の達人。気品に満ちてる面もあり、紫御前と畏怖される。
その実は、九狼党の幹部・かつ実行部隊の頭目。黛村とも繋がるも、謎の多い淑女。
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和都歴450年・7月30日 秘八上
九狼党の寄合が開催されることとなった。所属しているメンバーの収支・活動報告等が行われる。そこに今回はメンバーの入れ替えがある事も事前に通達された。
九狼党。祖柄樫山で活動する地下組織。通称❝オオカミ❞とも呼ばれる。彼らは置田村と黛村のどちらにも所属しない、その二つの村の争いを長引かせることから得る利益を一つの収入源としている。他にも表立って出来ない村の闇案件を引き受けることもある。
幹部は9人で、狼の部位に擬える字、所謂コードネームが着く。
その9人が、ここ平和な区画、秘八上の旅館・泡沫に集結した。
泡沫は歓楽街にあるものの、裏は切り立った山の斜面があり、旅館の裏口からその斜面にある洞窟に抜ける秘密の通路があった。
そしてまた泡沫の前に、1台の馬車が到着する。
男が降りると衛兵が出てくる。
「おい、貴様ここに馬車を止めるな。ここは…」
男が衛兵に振り向く。
「あ、相島さんでしたか、どうぞ。そちらは?」
「新入りだ。通せ。」
相島が貫録を出して旅館・泡沫へ入っていくと、同時に降りた綿貫も、相島に続く。
二人は、秘密の洞窟を抜けると、大広間の様な部屋に出る。
真ん中に長机、両脇に4つずつ漆塗りの椅子が用意されている。
正面には三段の階段があり、その奥に一人座っている人物がいるが、12色の洒落た簾が掛かっていて、下半身しか伺うことができない。
その簾の奥の人物が話し始めた。
「❝尾❞が揃ったところで始めるとしよう。今回は各々の収支・活動報告を経て、人事の発表へ移る。もう一つは❝牙❞からの今後の方針である。」
「報告に入る前に、今回の出席者名簿を回すので、閲覧しておくように。」
■九狼党 出席者■
頭:???
牙:紫 尤 (紫御前)
目:羽黒 麻一郎
耳:次川 烈逸
鼻:秋滝堂 沢彦
爪:木場 楊八郎
血:羅前 色
尾:相島 権作
毛:綿貫 仁兵衛 【新人】
「以上のメンバーで始める。尚、今回オオカミに新たなる❝毛❞が生えたことを皆に知らせておこう。では、❝毛❞より一言頂こう。」
❝頭❞が話し終えると、相島が綿貫に目線を送る。
「ただいまご紹介賜った、毛こと綿貫仁兵衛です。今後もこの九狼党に粉骨砕身貢献する所存です。宜しくお願いします。」
綿貫が一礼する。
「働きに期待している。では次に、各メンバーとグループでの活動による結果と収支がある場合はここで報告を頂戴しよう。まずは、❝尾❞、よろしく頼む。」
❝頭❞に話を振られると、相島は報告を始める。
「はい。活動予想としていた難民・遭難者の拉致は、総じて好調です。その売却ルートも❝牙❞と五分で分け、算出し、収納済です。」
「よろしい。今後も今まで以上の成果に期待している。次、❝血❞の報告を。」
❝血❞は黛村のある肩書を持つ女。ここでは詳細は伏せるが、優しい顔だが、妙な色気を纏う妖艶な女である。
「畏まりました。例の乙名篭絡作戦に見事成功したのは御報告の通りです。今回収めた金額と共に、税収面を今後とも深くかかわっていけるので以降も報告にご期待ください。」
「さすがだ。ただし足元をすくわれないように。細心の注意を払うのだ。」
その言葉に❝血❞が一礼する。
「次は、❝鼻❞。」
「手前の計画はこれまで通り何ら変わりありません。寄付等含め、年間の金の枚数も変わりありません。」
「うむ。次、耳と爪か。耳から報告を貰おうか。」
「お任せください。」
次川が胸を張って報告する。
次回2024/12/19(木) 18:00~「 第2章・9幕 処刑のエッセンス」を配信予定です。