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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第2章・常在悪辣
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第2章・4幕 内政派

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 籐香 (おきたふじか)

   蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。


・美咲 園 (みさきその)

   若くして蓮次と藤香の側近となり、一揆でも大きな活躍と信頼を得たことで、置田村の乙名として村設立に関わった一人。非常に平和的で、革新的。男尊女卑と古い掟から真っ向から異を唱える。


■ ▢ ■ ▢

和都歴(わとれき)450年・6月18日 置田宅・離れ


置田村の乙名の寄合が明日に控え、内政派と攻勢派に分かれている乙名4人の内、藤香と美咲は内政派としての意見をまとめておくべく、内政派の緊急寄合を開いた。

寄合とは現代で言う会議のようなもので、特定の人数を集めて、意見と情報を共有していた。


「今日は急な招集にもかかわらず、お集まりいただき大変感謝しております。」

藤香が挨拶をする。

「まず初めにここにお集まりいただいた皆さんの御紹介から始めたいと思います。」


出席者



乙名・置田村中央部・本置田 統括 ※西部・八俣 兼務

   置田 藤香


乙名・置田村東部・秘八上(ひめやがみ) 統括

   美咲 園


沙汰人・置田村中央部・本置田 副統括

   鈴谷 与志夫


沙汰人・置田村中央部・本置田 顧問

   香本 有


沙汰人・置田村東部・秘八上 副統治

   春浪 十茶


沙汰人・置田村東部・秘八上 顧問

   瑠璃川 三葉



「以上のメンバーで今回は進めます。」

「議長は、今回私、藤香が担当します。」

「まず、1つ目。内政派としての指針は、置田村の治安維持・汚職撤廃を今後も掲げていく。特に沙汰人・刀禰の一部は権力者として弱い民から好き放題している。これは私個人としても必ず取締り、今後、出来ないよう掟も変えていきたいと思うのだが。まず、反対意見があれば挙手を願う。」


「ありがとう。では、具体案や、質問など、皆の意見があれば。」

香本が挙手する。

「お、香本さん、どうぞ。」

香本 有(こうもとあり)。沙汰人・置田村中央部・本置田 顧問。藤香のブレーン的存在。若い時は都に住んでいた経験もあり、考え方は至って現代的。しかし、残すべき古い文化は守るべきという側面も併せ持つ。

「今は方針を決めるということなので、具体案は申されなかったんだと思いますが、ちなみに具体案が1つでもあればお教え頂けたらと思います。」

「沙汰人をはじめとした権力者は現行犯でなければ煙に巻かれてしまいます。権力者の部下が情報を前もってくれた場合、対価を払うなど、検討しています。」

藤香が答える。

「ありがとうございます。そこは敢えて今は掘り下げませんが、攻勢派を納得させるだけの案を用意しておくべきかと思われます。」

「ありがとうございます。それはこの後、香本さんのお知恵を拝借させていただきたい。」

「わかりました。」

香本が一礼する。

「他に。なければ次の議題に移ろうと思う。明日に控える乙名の寄合の主たるものは5人目の乙名の決定であろう。現乙名4人がそれぞれ1人候補を持ち寄り、一人を選ぶ。内、内政派は私と美咲から2人、選出できるわけだが、ここで内政派としての推薦候補者1人を決定しておこうと思うのだが。異議がある桃者がいれば挙手を願う。」

ー・・・。

「沈黙は賛成との意思と取ります。では、まず、私からの推薦する乙名だが、鈴谷 氏を推薦したい。」

美咲が藤香に続く。

「私からは、春浪さんを推薦します。」

「あら、当然ですが割れてしまいましたね。」

瑠璃川が呟く。

瑠璃川 三葉(るりかわみつば)。置田村東部・秘八上の沙汰人で顧問。ここ数年で名を馳せるまでになった、上流階級の娘で30歳。平和的思想が美咲に買われ、刀禰から沙汰人へと上がる。気品に満ちた出立と話し方が、更にその人間性を物語る。

「では今回は藤香さんの地区からということにしましょうか。次回は美咲さんの地区の推薦者を乙名とする。いかがでしょう?」

香本が意見を述べる。

「私は異論ないが、美咲、どうだ?」

「順番で次が秘八上からで良いなら、私も特に申し立ては致しません。」

藤香と美咲も折り合いをつける。

「私個人も特に乙名への執着もありません。内政派が一丸となるためにも、ここは丸く収めましょうか。」

春浪 十茶(はるなみじっさ)。置田村東部・秘八上の沙汰人で副統括。元は黛村の乙名だが、平和思想を訴えていたため、追放・暗殺の危機に際し、一揆が始まり、置田蓮次に沙汰人の待遇で移り住んだ。両村に顔が利く面もある、貴重な存在で紳士的人物。

春浪も納得する。

「春浪氏の忖度に大変感謝します。でわ、鈴谷氏、明日の乙名推薦では、我々内政派として、お前を推す。宜しく頼むぞ。」

「わかりました。ただ、明日、攻勢派も2名で1人を推してくれば票は割れますね。」

鈴谷は、藤香の意思に対し快諾するも、懸念点も挙げる。

鈴谷 与志夫(すずたによしお)。置田村中央部・本置田の沙汰人で副統括。稲穂の父。鈴谷村(現・黛村)の乙名で反対派・黛紅蓮を置田蓮次と共に抑えていた男。後に村を奪われ、蓮次と置田村を発足した。

「そうだな。折り合いがつかないなら、また4人制のままだろうが。」

藤香は少し落胆する。

「よし。他に皆から提案等なければ、今日は解散し、明日に臨もうか。」


ー異議なし!

ー置田村・乙名寄合、明日に迫る。

次回2024/12/5(木) 18:00~「第2章・5幕 置田村・乙名寄合~①」を配信予定です。

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