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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第2章・常在悪辣
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第2章・1幕 悪い奴ら

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 籐香 (おきたふじか)

  蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

   置田村の沙汰人。村東部・八俣の納税管理者。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。


・綿貫 仁兵衛 (わたぬきにへえ)

   置田村の刀禰。八俣の刑務主を担当 物静かで従順。しかし欲望にはそれ以上に忠実。


・藤江 敦夫 (ふじえあつお)

   刑務官人。貧民あがりで綿貫の仲間。笑うと更に悪そうな男。


■ ▢ ■ ▢

和都歴450年・6月15日

「母上、行ってまいります。」

蓮太たちが学童会長選挙に向けて、奮闘する一方で、藤香は源八夫婦惨殺事件を追って、相島に直に話をしてみようと試みていた。

「田中。急いで相島の屋敷へ。」

馬車が雷迅の如く音を立て、走り去る。


ー相島の館。

相島は秘密の水車小屋に、また身元の割れない女性を連れて行くところだった。

「相島さん、ちょっと。」

藤江が相島を呼ぶ。

「なんだ?これからって時に。」

「綿貫さんがお話があるとか。」

「綿貫?後にしろ。」

相島は突っぱねて馬車に乗ろうとする。

「何でもこれから置田藤香が来るみたいでして、その御相談みたいです。」

「藤香?くそが。」

相島も藤香の視察を無碍にできない。

「わかった、綿貫を部屋に呼べ。女は蔵に隠しておけ。」

そういうと相島は自室に戻り、綿貫が来る。

「綿貫、藤香が来るとて儂の手を煩わせるな。適当にあしらえばいいだろ。」

「まぁ、藤香の視察は問題ありません。」

「あん?じゃ何が問題だ。」

「左掌の傷の具合が心配でして。」

「掌?」


「・・・あぁ。これか、水車小屋で女を甚振っていたら威勢のいい女に嚙みつかれてな。」

「・・・」

「なんだ?そんなことの為に儂を呼んだのか?お前、何年儂に付いてんだ?」

相島は機嫌が悪くなってきた。

「思い出したらイライラしてきた。綿貫!覚悟できてんだろうな?」

「・・・樒という女に、傘で貫かれたのが、そこまで腹がお立ちですか?」

「・・・てめぇ、あの場にいたのか?」

「今から藤香が来るのに、俺を始末するのはリスクが高い。でも、相島さんが俺を九狼党に紹介していただければ、何も言わないし、更に相島さんに付いていくことを約束します。」

「・・・」

九狼党のことを知られた以上、下手な真似は出来ないと思う相島は、一つ条件を出した。

「わかった。でもオオカミ…九狼党は儂の一存では何もできない。この状況を儂からうまく伝えてみるが、何の約束も保証も出来ない。それでもいいのか?」

「・・・わかりました。命を懸けましょう。相島さんが誰にご相談するか、は問題ではない。その人に俺は命を懸けるとお伝えください。」

「・・・わかった。死にたいやつがいると伝えるよ。」

綿貫の意外にも肝の座った態度に相島は少し圧倒されたが、そこは煙に巻いた。


ー馬車の音がする。

「藤香の御到着ですね。」

「この際だ、儂自ら話してくる。」

「わかりました。」

そういうと相島は玄関へ向かった。

「失礼する。相島か。」

「おお、藤香殿。突然の来訪ですね、どうされました。」

「出来たら、私の馬車で散歩しながら話したい。」

「藤香様と二人なんて。」

そういうと二人は馬車に乗る。

「田中、出せ。」

「すまないな、急に付き合わせて。」

「いえ、儂ら沙汰人は乙名の為に働くようなもの。で、御用件というのは?」

「…相島(おまえ)は亡き夫の参謀の一人でもあった。正直妙な疑いは持ちたくないが。」

「…どうぞ。」

「単刀直入に聞くが、源八夫婦をはじめ、女性に暴行後・殺害などしていないよな?」

「何を突然…いくら藤香様といえど、それは妄言が過ぎます。」

「・・・そうか。しかし、源八が最後に官人に話した時、お前の名が出ている。栗が突然おかしくなったと。」

「源八が相島(わし)の名を口にすれば儂が犯人というわけですか?」

「源八は真面目も真面目で名を知られる男だ。意味もなく相島(おまえ)の名を出さないだろう。」

「桑井ですよ。」

「なに?」

「桑井、逮捕しましたよね?あいつが女を連れ込んで、好き放題していたと聞いて、儂もあの現場へ向かったんです。そしたら、あの始末だ。そういえば、桑井から何か聞けたんですか?」

「いや、逃亡したと。」

「それは犯行を認めたようなものでしょ。」

「しかしだな・・・」

「桑井を捕まえて下さいよ藤香さん。桑井が儂だっていうなら疑われる余地もありますが。儂はあいつの性癖がひどいのを知ってる。藤江と内川にも聞いてもらって構わないですよ。」

「桑井が生きていればな。」

「自殺しちゃったら儂の知るところでは…」

「お前が殺したんじゃないのか?」

「藤香さん、そういうのやめましょうよ。」

相島はケダモノの顔をする。

次回2024/11/17(日) 18:00~「 第2章・2幕 小夏への親心」を配信予定です。

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