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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
17/143

第1章・11幕 学童会会議②

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

  14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。


・三ツ谷 華 (みつたに はな)

   置田村の三大領主の一つでその娘。乙名になる男か、沙汰人に嫁ぐがせるつもりで親の英才教育は厳しい。本人は好きな人と一緒になれればそれでいいと考えている。自分が村を変えれるなら、それも考えてはいるようだが…村でも1番を争う美少女。


羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)

  麻一郎 (あさいちろう)という兄が、一揆の際に行方知れずとなり、黛村に救出できるよう沙汰人になることを考えている。目標の為には多少の犠牲は対価として支払う、冷徹さもある。蓮太には度々、時には冷たくなるよう助言している。


・冴島 五郎 (さえじまごろう)

  蓮太らの同期だが、住居区は南エリア、日輪の地からの往来の為、そこまで仲も親しくない。正義感が強く人道的だが応用の利かないところもある。


・森 幸兵衛 (もりこうべえ)

   乙名や、沙汰人、親世代からは信頼のある、実直で経験豊富な守役として知られ、守役主まで実力でなった。ただ、奇妙な事件に遭遇しており、本人はそれを否定している。


・次川 烈逸 (じかわれついつ)

   寡黙な守役。次期・守役主ともされている。風紀を任されていて、守らない者に罰則を与えてきた。体罰は良くないと、罰金制度を構築した張本人。


■ ▢ ■ ▢


学童会会議

出席者


寺院側


住職   欠席

守役長  鉾田路 喜左衛門

守役主  森 幸兵衛

守役   羽芝 菖蒲

守役   次川 烈逸


学童会側


学童会長 伊集院 千毬

学童会主 置田 蓮太

学童会主 冴島 五郎

書記   羽黒 宗助

書記   三ツ谷 華


ー休息所

学童会会議にて、千毬の提案した集金制度は思った以上に皆に好印象だった。

「さすが千毬さん。俺じゃ思いつかなかった。」

「そんなことないわ。」

蓮太と千毬が話していると華が割って入った。

「私も見直したよ。千毬さんの集金制度は最初学童にも多額の税を支払わせるのかと思ってたけど、内訳を聞けばそういうことなのね。」

「それでも多少余るかもしれないが?」

宗助が疑問を投げる。

「多少はね。この先、税や寄付も当てにしていいかわからないし、多い分には貯めておくこともできるわ。」

「伊集院さん。」

「伊集院さん。」

次川と羽芝が同時に話しかけた。

二人は目線をぶつけ、沈黙する。

「面談の間で話しましょうか。」

千毬は咄嗟に次川に話を振る。

「わかった。」

次川はそそくさと面談室へ歩いていく。

「羽芝守役。あなたとは次川守役(あのおとこ)より、もっと懇意にさせて頂きたい。いつか時間を取れれば、次期守役主の話を致しません?」

千毬は羽芝に耳打ちする。

羽芝 菖蒲(はしばあやめ)。女性の守役では若くしてトップに立つ。次期・守役主を巡り、主張等でも次川とは犬猿の仲。くノ一としての才もあり、妹の(かすみ)は藤香のお抱え忍者として活躍。

「え?本気?」

「詳細はまた後程。」


ー面談の間

「表で近づいてくるなんて、取引どころでは無くなりますよ?」

「いや、そうだな。俺としたことが。でももっとバカだったのが金額の話だ。」

「は?」

「今の分なら銀2枚、3枚でも伊集院(あんた)なら納得させられるんじゃないか?」

次川が釣り上げてきた。

「馬鹿言わないで。今更不自然でしょ。取り分は渡すんだから、我慢しなさいよ。」

「おっと、なら、最初の1回は半分くれてもいいだろ?」

「話にならないわね。同盟決裂をお望みなのですか?」

「俺もバカじゃねぇ。最初の1回が仮に半分でも、税と寄付でまだ足りるはずだ。今回だけ、伊集院さんの知恵でそれを守役長に何とか言えば凌げるんじゃねぇか?」

次川はケダモノのような顔で言う。

「…それが貴方の答え、ね?」

「ああ。それ以下にはしない。だがその1回と約束するぜ。へへ。」

「わかったわ。来月末に貴方に半分を渡すと約束しましょう。」

「よし!じゃ、そういうわけで宜しくな、学童会長サマ。」

そういって次川は出て言った。

「ふん。まぁ予定通りね。」

千毬に動揺はない。




「では、会議の続きを行います。」

「次の議題ですが、守役主との面談は、普段接しない守役主と接する機会でもある。これについて伊集院さんから提案があるとのこと。宜しくお願いします。」

「はい。では、守役主に限らず、他の守役とも接する機会は少ない学童も多く、皆が、いろんな人と接する機会を今後作るべきと考えています。例えば1日合宿など、詳細は可決したらでもよいかと考えていますが。」

「ありがとうございます。反対意見のある者、いますか?」

「・・・」

千毬の人柄から、後に出る提案も勘ぐる者が少なかった。

「良いと思うがの。」

幸兵衛が口から漏らす。

何より、いろんな人間を篭絡してある以上、下手な反対は誰もしない。

「あ、冴島君。」

「ちなみに、合宿があるとして、どこで行うのですか?」

「それはまた後程、皆さんで決めませんか?」

千毬は笑顔で返す。

「・・・」

冴島は千毬の人の良さにますます、好感と疑惑が募る。

「反対意見は…他にありませんか?」

蓮太が冴島に問う。

冴島は首を横に振る。

「決まりました。では可決とします。」

「皆さん、ありがとうございます。」

千毬が一礼する。

「以上を持ちまして、第一回学童会会議を終了します。」

拍手と共に閉会する。


ー面談の間

「お疲れ様です、❝耳❞」

「オオカミの字で呼ぶな。❝爪❞」

「へへ、次川さんもじゃないですか。俺たちもこれで安泰ですね。」

「そうだな。その内に首を突っ込んでくる学童(バカ)もいるだろう。その時は木場(おまえ)の出番だ。忘れるな。」

「心得ているよ。」

日も沈んだ寺院の面談の間で、九狼党が静かに牙を研いでいた。


ー第一章・終

次回2024/11/14(木) 18:00~「第2章・1幕 悪い奴ら」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
議会が思ったよりスムーズに進みましたね。千毬はやはりやり手ですね。
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