第10章・27幕 午の器・十戒絵馬
今回の登場人物
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・相島 権作 (そうじまごんさく)
置田村・八俣の沙汰人で納税管理者。現在は副統括となる。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。樒と藤香を憎み、密かに抹殺を計画する。
・綿貫 仁兵衛 (わたぬきにへえ)
置田村の東地区・八俣の刀禰。八俣の刑務主を担当。物静かで従順。しかし欲望にはそれ以上に忠実。相島の九狼党との関係に気づき、急接近。覚悟を示し、九狼党の❝毛❞として活動する。
・白石 菫 (しらいしすみれ)
白石組・組長。最近赤島会に入会した、素性不明の女性。綺麗な外見とは裏腹に、冷たい表情をしており、話す言葉にもその冷酷さを感じさせる。洋風の白いドレスにブーケという花嫁の様な衣装が特徴的。
・豊倉 完以 (とよのくらかんい)
置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。その実は九狼党への関与が疑わしい❝宝石箱❞なる組織の首魁。
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赤島の強襲、具義屋姉妹とならず者を、それぞれのメンバーが討伐すると、残るは、赤島の美咲への要求のみ.。
美咲には、共にこの村を支配しようと協力体制を持ち掛け、同時に婚姻も結ぼうとする。
美咲は少し考えたいと答えるが、赤島に屈する事に意気消沈する。
そして、祖母屋の素性と、日輪の闇、そこへ繋がる豊倉のもう一つの顔。
顧客名簿と赤島の抹殺を九狼党が画策する。
一方、赤島は日輪の宿屋・波で、岬の持成しを受けていた。
そして、岬の村娘の素朴さと純粋さに何時しか自身の野望の虚しさを感じ、彼女と共に下野しようと決めていた。
そこへ美咲に遣わされたと現れた、雪平と忌部が、岬へと声をかける。
翌朝、赤島と岬は心中したかのように殺害されていた。
その事実を知った美咲も、混乱するが、瑠璃川の説得と、美咲の役目を諭されると、自身の目標の為の犠牲に対し、一つの覚悟を決める。
その頃、緑川と姉川は、福本より案内され、父・緑川葱之信の元へ顔を出す。
赤島より破門された緑川組は、地下へ潜り奴隷商人として力をつけ、南蛮のルシスト教会の闇とも繋がっていた…
◎和都歴452年 3月23日 10時 置田村・神奈備 白石組集会所 近郊
同じ頃、相島は、豊倉に言われたように、準備をして白石攻めを開始する。
アレコレと準備や、警戒をしつつ、豊倉より遅れて白石組集会所へ辿り着くも、予想外なことが起きていた。
「ん?何じゃあの人だかりは…豊倉?」
「なんでしょう?」
相島と綿貫が集会所前まで来ると、豊倉は八咫烏と共に、他、何名かの兵士を連れていた。
「何があったんじゃ?」
「・・・」
豊倉の深刻な顔に、焦り始める相島。
「何じゃ?一体何がー」
「御機嫌よう、皆さん。」
白石菫が玄関に現れる。
「何じゃ、白石が居るなら、さっさと殺すだけじゃ!」
「うふふふ…」
菫は、手に絵馬を持ち、不敵な笑いを浮かべる。
「何じゃ?」
「午の神器ですよ、相島さん。」
「神器だぁ?」
豊倉の助言に苛立ちを隠せない相島。
「私の❝ルール❞に従ってもらいます。」
午の器・十戒絵馬
十一枚の絵馬からなり、1枚目の絵馬を持つものが持主とされ、十の戒律、ルールを定める事で、自身の特定する建屋にそのルールを定めることが出来る。これに反した者は問答無用に命を奪われる。
これは、定めた本人にも適応するため、本人が順守できるルールである必要がある。
十戒絵馬
①絵馬にルールを記入すると、そのルールが適応される。
②後からルール変更もできる。
③10以上はルールは作れない。
「これは…」
相島も綿貫も驚愕する。
「フフ…ちなみに、私はフェアな関係を重んじます。1つ目と2つ目のルールを決めてありますので、それをお教えします。」
菫が微笑む。
菫の十戒
一、中へ入ると出ることが出来ない。
二、外から人が入ることが出来ない。
「…!」
「二番目のルールは、予告、です。日を改めて施行します。」
「…助太刀、増援を防ぐため…か。」
「ええ。フェアなゲームをしましょう?」
「…不味いな。」
菫の言葉に、反応する綿貫。
「何がじゃ?逃げられないだの、後詰めが出来ぬだの、白石を殺して終わりじゃ、違うか?」
「…」
相島の言葉には、一呼吸する綿貫。
「十戒とやらのルールが、白石討伐を目標とする者同士を、仲違いさせかねない…ということです。」
「何故じゃ?」
「まず、既に2つのルールを見せられた時点で、中へ入ることは、白石を倒す目的が如実に出ます。」
綿貫は豊倉の立つ姿を見る。
「豊倉が入るということは、彼もまた、白石討伐を本来は達成するつもりでもある、可能性は高まります。」
「…そんなもの、入らないと野崎に手抜きと疑われるからじゃ…」
「無論、そう言い逃れも出来ますが…」
「心配しすぎじゃ。」
一息つきながら豊倉を見る相島。
「豊倉が側近や用心棒をも中へ入れるならば、安心するのは危険です。」
「…」
相島は豊倉が兵や用心棒を待っている様子に、少し焦りを感じる。
「我々も呼びましょう。」
「何?」
「千毬殿はじめ、紫の七草全てを!」
ついに始まる白石菫の討伐。しかし、白石菫の持つ神器が意外な方向へと舵を切る。
出入り禁止をはじめとするルールの施行により、戦略はより困難に。
白石組集会所という閉鎖空間にて、相島、豊倉、白石の三つ巴の勢力の行方は…?
ー第10章 終
続・11章ー
次回2025/11/22(土) 18:00~「 第10章・幕間劇 新花 蓮華」を配信予定です。




