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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
16/143

第1章・10幕 学童会会議①

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 蓮太 (おきたれんた)

  14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。


・冴島 五郎 (さえじまごろう)

  蓮太らの同期だが、住居区は南エリア、日輪の地からの往来の為、そこまで仲も親しくない。正義感が強く人道的だが応用の利かないところもある。


・成島幸太 (なりしまゆきた)

  冴島五郎とは古くからの付き合いで、冴島の活動のフォロー・調査など様々な面で協力する。


・森 幸兵衛 (もりこうべえ)

   乙名や、沙汰人、親世代からは信頼のある、実直で経験豊富な守役として知られ、守役主まで実力でなった。ただ、奇妙な事件に遭遇しており、本人はそれを否定している。


・次川 烈逸 (じかわれついつ)

   寡黙な守役。次期・守役主ともされている。風紀を任されていて、守らない者に罰則を与えてきた。体罰は良くないと、罰金制度を構築した張本人。


■ ▢ ■ ▢

学童会員が全員決まり、顔合わせを含め、今後の寺院生活をどうするべきかを話し合う❝学童会会議❞が開催された。

「これより、第一回目の学童会会議を開催いたします。議長は僕、学童会主・置田蓮太が務めさせていただきます。」

皆の自己紹介が一通り終わる。


出席者


寺院側


住職   欠席

守役長  鉾田路 喜左衛門

守役主  森 幸兵衛

守役   羽芝 菖蒲

守役   次川 烈逸


学童会側


学童会長 伊集院 千毬

学童会主 置田 蓮太

学童会主 冴島 五郎

書記   羽黒 宗助

書記   三ツ谷 華


「以上のメンバーで今回は進めます。」

「あ、一つ、宜しいかの?住職は基本、ワシに一任しております故、こういうと難ですが、人前には滅多に出られません。世俗的なことはワシが聞いて判断しますので御承知願います。」

鉾田路 喜左衛門(ほこたじきざえもん)。寺院の守役長。実質トップで運営と教育面の舵を取っている。謎の多い人物だが、村の税金や寄付を収集する人脈もあるとされる。

「では、まず当選時に公言していた、学童会長の伊集院さん。いくつか寺院で改革案があるようですので、説明していただきましょう。」

「はい。まず、今、風紀活動で行われている罰金制度、これは一部で大きな支障をきたす学童もいると聞いています。確かに風紀を乱すのは良くないですが、罰金となると生活に関わります。私はこれの廃止を提案致します。」

「反対意見がある方、挙手を。」

冴島が手を挙げる。

「冴島君。」

「どうも。罰金は廃止しても、風紀は取り締まるべき、ですよね?これも何らか奉仕活動をさせるに置き換えるべきではないでしょうか?」

「なるほど。他に風紀の取り締まりに意見のある方は?なければ一度決を取ります。」

「待ってください。」

「冴島君?どうぞ。」

「次川守役は、特に反対意見ないのでしょうか?」

「そうだね、罰金はとりあえず始めただけで、これに代わる案があれば直ぐにでもそれを採用していた。伊集院さんと今の冴島君の案で僕個人は納得している。」

「とりあえず…?結構な額で苦しんだ学童を僕は聞いてます。それは失礼な言い方ではないですか?」

「静粛に!冴島君。今はその議論ではありません。するなら追って議題に入れて下さい。」

次川はニンマリする。

「では、話を戻します。風紀の罰則を、罰金から奉仕活動へ変更。これに賛成の者、挙手をお願いします。」


「おお、全会一致とは。幸先良いですね。では次の議題です。これが一番意見が割れそうですが、寺院の集金制度を開始する。詳しくはまた伊集院さん、お願いします。」

「わかりました。この度、無償でやってきた寺院ですが、御存知の通り、それは御寄付や守役長の村の税金から補って運営してきました。それは自転車操業となり、いつ破綻してもおかしくありません。また、寺院でもっと良い教育を受ける、またお祭りや、給食も開始できると見込んでいます。」

「おお。そう聞くと悪い面だけじゃないな。」

次川が口を挟む。

「議長。」

「羽黒君。」

「それ全てを行うには、学童一人当たり、いくらの集金になるのでしょうか。」

「伊集院さん。」

「毎月の集金で一人、銀1枚です。」

「羽黒君。」

「その分なら払えなそうな人はいないと思いますが、中には貧民層の学童もいます。仮に払えない方はどうする御考えですか?」

「伊集院さん。」

「そこは協議しますが、基本足りない分を税金や御寄付から差し引くつもりです。」

皆はこの千毬の集金制度に寧ろ大きな改善と進歩を感じた。決して払えない額を提示されなかったのも大きく、何より未来に希望を持てる寺院生活になると思ったのだ。

「反対意見ありますか。挙手を。」


「ないようですので、可決とさせていただきます。」

「では、一度休憩を挟みます。30分後、ここへお集まりください。」


冴島が用を足しに行くと成島がやってきた。

「会議とやらはどうだ?」

「不思議だよ、権謀術数(けんぼうじゅっすう)を張り巡らせて学童会をモノにした悪い女にはとても思えない。」

「伊集院さんか?」

「寧ろ、()()()()が上に立たないように根回ししたとも思えてきた。」

「でも、監視はしていくんだろ?」

「そうだな。それが学童会で孤独な僕の役回りと思って、続けるよ。」

「お前は孤独じゃない。俺もフォローする。何かあれば言ってくれ。」

「ありがとう、幸太。」

次回2024/11/10(日) 18:00~「第1章・11幕 学童会会議②」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
これから、ちまりさんがどう動いて行くのか楽しみな展開ですね!複雑な話ですけど、いつも楽しみにしてます。
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