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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
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第1章・9幕 学童会長選挙開始~④

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。


・置田 蓮太 (おきたれんた)

  14歳。本編の主人公。置田村の創始者・置田蓮次と置田藤香の子。英雄の息子として、次期・乙名としての期待が高い。優しい性格で、純粋。


・毛呂 虎太郎 (げろとらたろう)

  14歳。本置田地区でも珍しい、貧民の生まれ。蓮太を兄のように慕い、両親の人柄もあり、道徳も高い。腕力は弱いものの、立場が弱い人を放っておけない。


・森 幸兵衛 (もりこうべえ)

  乙名や、沙汰人、親世代からは信頼のある、実直で経験豊富な守役として知られ、守役主まで実力でなった。ただ、奇妙な事件に遭遇しており、本人はそれを否定している。


■ ▢ ■ ▢

学童会選挙も遂に当日を迎える。

その日の午前は最期の挨拶、アピール時間となり、午後に書記から徐々に票が発表されていく。

千毬の取引が功をなし、ほぼほぼ計画通りの結果が期待できそうだった。


書記   2名 羽黒宗助

        三ツ谷華

学童会主 2名 置田蓮太

        冴島五郎

学童会長    ?


残る学童会長の発表となる。

「伊集院…千毬さん。」

歓声と拍手の中から千毬は前に出てくる。

「では、一つ当選した今の気持ちを。」

「はい、本当に嬉しいです。まさか学童会長に本当に…私が…」

「あ、大丈夫ですか?それは嬉しくて泣きたくもなりますよね。出来たら、今後、学童の為に寺院のこういうところを変えていきたいなどありますか?」

「はい。今、守役の一存で、風紀を乱す学童に罰金制度を行っています。これを撤廃することをお約束します。」

「おお、すごい。」

また皆からの拍手喝采に一礼する。

「なお、それに伴って、もっと良い教育の為に少量の集金を皆さんにお願いしたいと思います。」


ーえ?


「今までは無償で、正確には村の税でやってきましたが、これには限界もあります。無論、これは学童会員と守役らと協議の上で皆様には改めて発表するつもりです。」

千毬の集金話に誰もが違和感を感じた。

「蓮太、どういうこと?」

虎太郎や他の仲間も、少し不安を感じた。

「いや、分からない。けど、千毬さんも皆で決めるというんだから、少し様子を見よう。」


「それと、守役主との面談を、もっと意義あるものにしたいとの要望も聞きましたので、これも追ってお知らせします。」

千毬は一礼する。

「あ、ありがとうございました。では学童会長選挙、これにて閉会します。」

「伊集院さん、守役の木場君と次川君が話があるそうだ。面談の間にいるそうだよ。」

幸兵衛が千毬に耳打ちする。

「わかりました。」

千毬の目つきが変わる。


「失礼します。」

「伊集院さん、待ってたんだ。まずは当選おめでとう、と言っておこう。」

「こっちは次川さん、俺は木場だ。改めることもないと思うが、風紀で守役をやってる。」

次川 烈逸(じかわれついつ)。寡黙な守役。次期・守役主ともされている。風紀を任されていて、守らない者に罰則を与えてきた。体罰は良くないと、罰金制度を構築した張本人。

木場 楊八郎(きばようはちろう)。元々は風紀でも守役でもなかったが、次川の一存で守役・風紀に。少しの風紀の乱れてそうな学童に強く当たり、面談の間に呼び出していた。

「何で呼ばれたか、察しはついてるよな?」

「あら?もしかして罰金制度の撤廃ですか?」

「分かってんじゃん。いや、俺たちも予想外で。まさか学童(こども)がそんな知恵まわして罰金制度廃止にして来るとは。」

木場は半笑いで千毬を見る。

「で?」

「なめるな!撤廃するなら…」

「木場、やめろ。相手は女の子だぞ。」

次川がなだめる。

「悪いね、怖がらせて。」

「いえ。でも撤廃は公言しているので私は引くつもりありませんよ?」

「実は罰金は俺たちには良い資金でね。でも皆警戒して、最近じゃ風紀に乱れなんてなくなってきて、少し下火なわけ。丁度手を打たなきゃと思っていたんだ。どうかな?罰金制度は廃止してもいいから、伊集院さんがこれから始める集金制度、人数で言えばそれこそ凄い額になる。」

「・・・」

「そこから僅かでいいから俺たちと山分けしないか?そしたら伊集院さんの今後のバックアップを約束するよ。」

「・・・わかったわ。」

「話が分かる人で良かった。こちらも手荒な真似はしたくない。」

次川がケダモノのように千毬を見る。

「では、罰金制度の廃止と、集金制度が可決され次第、今の条件で取引と行こうか。」

「恐らく今月中に決めて、来月には施行するつもり。」

「あまり口出しするつもりもないが、ピンハネ分は多く額を設定してくれ。」

「儲けだけを横取りするのに随分横柄なのね?」

「なんだと?」

木場が怒鳴りつける。

「まぁ、わかったわ。とにかく私に任せてくれればあなた方の不満は出ないようにするわ。」

「結構。」


ー取引、成立。

次回2024/11/7(木) 18:00~「第1章・10幕 学童会会議①」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
罰金制度を廃止して集金制度導入されても、悪い奴にお金が行くのはちょっと嫌ですね。
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