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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第10章・裏切者
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第10章・13幕 作戦会議

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・砂榎 鳳 / 書本 小夏 (すなえあげは/かきもとこなつ)

死んだとされる小夏が変装し、暗躍する姿。黒尽くめの忍装束に忍覆面をする。高い身体能力とクールな性格は健在。蓮太の幼馴染が故、その想いを時折見せる。ただし、忍頭巾の覆面と装束の裏地は赤となっており、小夏として生きる時に裏地に着替える。忍び装束から生足を出し、耐切創タイツで覆う。


・百千万億 (つもい)

黛村直轄の傭兵集団、黛忍衆の一人。本名不詳で、❝百千万億❞も通名とされる。漆黒の忍装束を纏い、忍覆面は目出し帽の様で、そこから覗く目の部分は、赤い耐切創網越しで外から一切表情はわからない。彼は組織の中でも長く生き残った者といわれる。


◎奉日本家


・奉日本 灯 (たかもとあかり)

通称・夢占いの巫女。日輪の貧民の出自だが、神器による夢占いで一躍大金持ちになる。現在は女性を道具にすることを反対する美咲に保護され、家族で優雅な旅館生活を送る。ちょっとした不思議ちゃんの気質がある。


・奉日本 里 (たかもとさと)

灯の母親。美咲の保護下になり、家事や畑仕事から脱却。宝石集めに傾倒する。最近では家事代行の女中も雇うことにした完全な成金生活。


・奉日本 明 (たかもとあきら)

灯の父親。日輪に居住していた時に、商人として働き、現在もその延長で日輪まで働きに出る。


ーーー


・美咲 園 (みさきその)

若くして蓮次と藤香の側近となり、一揆でも大きな活躍と信頼を得たことで、置田村の乙名として村設立に関わった一人。非常に平和的で、革新的。男尊女卑と古い掟から真っ向から異を唱える。


■ ▢ ■ ▢

赤島がならず者を集め、美咲と夢占いの巫女・灯が住む旅館・泡沫を強襲する計画を練る。

しかし、この事を夢占いにて察知していた美咲は、側近の紅と縹、若輩ながらこの時の為に育てた茜と葵で守備を固める。

更に、灯の家族の住む部屋には、小夏扮する女中・鳳と、不本意ながら黛村より雇い入れた傭兵集団・黛忍衆を配備。

相島と豊倉は、この事に気が付くこともなく、午前中に旅館を去ろうとしていた。

この状況を説明すべく、美咲は鳳を自室へ呼び寄せた。



「呼び出してすまないな。実は急なことでな。」

「何でしょう?」

「この旅館が賊に強襲に遇うかもしれないのだが、鳳さんは武道の心得はあると伺った。まだ幾日も経たぬ時にこの様な依頼も恐縮だが、1人でも戦力として欲しい限りでな。金は2倍払う。」

「まあ…でも仕事であれば承ります。」

「そうか。助かる。身を守りつつ、ここにいる者達と共に奉日本家を保護してほしい。」

「承知いたしました。」

「では、我々も早速配置に着きます。」

小夏が返事をすると、百千万億も応答する。


◎和都歴452年 3月20日 10時 置田村・秘八上 旅館・泡沫 夢の間


小夏と百千万億らが奉日本家に着くなり、事情を説明する。

「な…なんなの?それなら、ここから逃げればいいじゃない。」

「お母様、落ち着いて下さい。」

百千万億がなだめるも、小夏の顔を伺う。

「お母様、強襲の情報はあっても、対象が定かではないのもまた事実です。単独で行動するより、この旅館で迎撃する方が得策かと。私は戦力に満たなくても、彼らはその道のプロです。」

「…本当?鳳ちゃんがそこまで言うなら。」

「里、鳳ちゃんの言う通りかもしれない。ここは静観しよう。」

里の焦りが落ち着くと、百千万億が小夏に軽く頭を下げる。

「こんな事なら今年も灯に夢占いしてもらっておけば良かったわ。」

(やはり、夢占いは確実に当たるようね。そして、神器となる枕は、灯ちゃんの部屋にある…!)

小夏は目標を定める。


「百千万億さん?ちょっと。」

「ああ、こちらも話し合いをしておきたかった。」

小夏は百千万億を呼び、2人で部屋の外に出る。

「百千万億さん達にこの広い廊下で賊を対処してほしいです。」

「了解だ。」

「私は奉日本家の統率と、神器の保護をします。」

「そうしてくれると助かる。」

「では、その配置でお願いするわ。」

小夏がそう言って、部屋に入ろうとする。

「仕事柄、他人には興味を持たないが、君は自身が言う程、戦力外とは思えない。」

「…」

「…すまん、安心してくれ。我々は金の分を働くに過ぎない。ただ、窮地になった際、君のその戦力を考慮して、こちらは動くだけ。その確認に過ぎない。」

「…どうも。」

2人は作戦会議を整え、また部屋へ戻る。


「おい、我々は外の廊下が守備範囲だ。」

百千万億は2人の忍装束の男にそう指示を出し、再び部屋の外に出る。

「だ…大丈夫…なんだろうね…?」

「御心配なく。」

小夏は明にそう返答し、奉日本家の平静を保つ。

「鳳ちゃんが、なんだが頼もしく見えるわ。」

「…御安心を。今、お茶を淹れます。」


小夏はお茶を淹れ、奉日本夫婦に湯呑みを渡す。

「灯ちゃんは?」

「部屋に隠れてるみたいなのよ…」

「まとまっていた方が守りやすいので、呼んできますね。」

小夏はそう言うと、灯の部屋へ行く。


「鳳さん…」

「皆と一緒に居てもらえるかな?その方が守りやすいから。」

「…」

小夏の言葉に、灯は軽く頷くと、灯は部屋を出ようとする。

「あ…」

「どうかした?」

「羊の枕…」

「え?ああ、後で持っていくよ?」

「…うん。」

灯は不安そうに部屋を出ると、小夏は枕を手にし、押入をじっと見つめた。


「…灯ちゃん。はい、枕。」

「ありがとうございます。」

「まったく、こんな時にも枕を抱いちゃって...」

里は灯の行動に呆れる。

「…本当に賊が来るのかしら?」

里が疑心暗鬼になりかける。


ーガラ!


小夏は窓を開け、耳を研ぎ澄ますと、辺りの音を感じ始める。

次回2025/10/23(木) 18:00~「第10章・14幕 旅館・泡沫 戦闘① ~開戦~」を配信予定です。

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