第10章・11幕 家守の訪問
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・砂榎 鳳 / 書本 小夏 (すなえあげは/かきもとこなつ)
死んだとされる小夏が変装し、暗躍する姿。黒尽くめの忍装束に忍覆面をする。高い身体能力とクールな性格は健在。蓮太の幼馴染が故、その想いを時折見せる。ただし、忍頭巾の覆面と装束の裏地は赤となっており、小夏として生きる時に裏地に着替える。忍び装束から生足を出し、耐切創タイツで覆う。
・美咲 園 (みさきその)
若くして蓮次と藤香の側近となり、一揆でも大きな活躍と信頼を得たことで、置田村の乙名として村設立に関わった一人。非常に平和的で、革新的。男尊女卑と古い掟から真っ向から異を唱える。
・神無月 紅 (かんなづきくれない)
美咲の目指す平和思想に共鳴し、護衛と助言を担当する。秘八上・顧問の三葉には無い、武勇面を主に担当するが、文武両道の才女。22歳という若さで側近。現在25歳。
・関 家守 (せきいえもり)
置田村・東地区・八俣の貧民。いきなり拉致され、相島の倉庫に監禁される。ただの貧民ながらも道徳観を備え、観察眼と機転の利く秘めた特性がある。その天性の才能で惟神収容所を脱出、藤香の側近となる。
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夢占いをしてもらった八咫烏は、来月の死と、その対策を練る。同時に神器・猿真似にて、夢占いの能力すらもコピーして、そのことを公にしない八咫烏。
更に、母親・里を宝石にて傀儡とする計画を豊倉に持ちかけ、実行に移す。
一方、里はそんな危機も知らず、家事代行の女中、砂榎鳳を雇う。
小夏はある目論見から、女中・鳳となり潜入する。
美咲との面接で晴れて合格となると言われ、姫の間で美咲と面接するも、小夏では、と疑わしく思われる。
そして、面接の結果は…
「御免なさいね。つい、知り合いに似ていたから。」
「いえ。」
「亡くなったはずなのに、何故居るのかなって…」
「…」
「あ、ごめんなさい本当に。亡くなった人と一緒にするなんて…ね?」
美咲は少し動揺する。小夏も同じく緊張が走ったが、おくびにも出さなかった。
「面談は合格。家事雑用は奉日本さんに従い、護衛に関しては私から紅に伝えるようにします。」
「畏まりました。」
そういって小夏はその場に立ち上がる。
「奥に皆さんいるわ。報告がてら、お茶菓子を召し上がっていきなさい。」
「ありがとうございます。」
◎和都歴452年 3月19日 14時 置田村・秘八上 旅館・泡沫 姫の間
「御免下さい。美咲様?」
ーガラ!
「見ない方だが、どなたかな?」
紅が尋ねる。
「藤香様の使いで参りました、関 家守と申します。美咲様に伝言と返答を頂きに参りました。」
「…ああ!藤香様の…分かりました。どうぞ中へ。」
紅が家守を案内する。
「美咲様、例のー」
「ーああ。ご苦労。」
紅と美咲が阿吽のやり取りをする。
「この度は、藤香様より状況の確認をと受けてきました。」
「そうか。特段変わったことはないが。寧ろ藤香様は息災か?」
「ええ。神奈備の平定に加え、神器の保護、蓮太殿と稲穂殿の保護など、人手を必要とはしています。」
「我らも、そういう意味では人手を割ける状況ではないのだが…あ、春浪様。」
「おお、久しぶりですね。」
美咲の言葉と共に、春浪が現れる。
「こちらの状況は副統括の春浪様に伝えてある。実戦力は割けなくとも、彼を藤香様の元へ連れていけば、こちらの状況と知恵をかしてくれるでしょう。」
「…有り難くお連れいたします。」
「いや、こちらこそ申し訳ない。藤香様に宜しく伝えて欲しい。」
「では、参りましょうか?」
春浪が家守に声をかけ、席を立つ。
「変わったことはないと申されましたが、人を割けない状況ではある…と?」
「…ん?」
「あ、いえ、これは個人的に気になっただけでして、特に深い意味は…そう取って良いのですよね?」
「…まあ、藤香様に心配されても、それこそ迷惑と思ってな。事情は春浪様から聞いて頂けると助かる。この後、大きな事が起きるハズなのでな。」
「…ハズ?」
家守は疑問に思う。
「それも、私が藤香殿の前で説明しましょう。」
春浪が赤い羽織を着ながら答える。
「あ、美咲様、あと、夢占いの巫女を保護されたと伺いましたが?」
「ん?ああ。」
「その占いが、神器によるものであれば、狙う者がいると聞き入りました。御用心下さい。」
「…神器の使用は、藤香様はどう思われるか分からないが、奉日本家の意志に任せている。」
「…ほう、なるほど…わかりました。では、参りましょう。」
家守は春浪と共に本置田へと発つ。
「家守という者、鋭いようですね。」
「八俣で奴隷として拉致され、双子の監獄から機転と知恵で、唯一逃げ帰ってきた男らしい。」
家守と春浪を窓から見送り、席に着く美咲。
「我々が灯ちゃんに依頼して神器を使っていることを、話さざるを得ませんね。」
「遅かれ早かれ、藤香様にも耳に入る事。それより、明日は赤島が来るはずの日。」
「はい。抜かりありません。」
「…まずはこれを切り抜け、こちらも動く。 そして夢占いを見るからに、赤島には消えてもらう必要がある。その次は…」
「はい、縹に調べさせてありますので。」
紅の返答に、美咲は満足そうな笑みを浮かべる。
(そう、これも、平和のため。未来のための犠牲。)
美咲は窓へ視線を移し、遠くを見据える。
次回2025/10/16(木) 18:00~「 第10章・12幕 準備の応酬」を配信予定です。




