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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第10章・裏切者
141/166

第10章・6幕 権謀術数

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・野崎 飛助 (のざきとびすけ)

置田蓮次の信望者で右腕だった男。蓮次の死後は妻・藤香にも劣らぬ村人を束ね、黛村への侵攻を常に画策している。古き仕来たりを重んじるが故、美咲とは特にウマが合わない。


・八咫烏 (やたがらす)

若くして傾奇衆を束ねる頭目。漆黒の着流しに紫のバンダナを巻く、イケメン。目的の為には徹底的な勝率を考える冷徹さを持つ。都で得た神器・猿の器により、他人の技や神器能力をコピーできる。


・豊倉 完以 (とよのくらかんい)

置田村南部・日輪の沙汰人で副統括。置田村でも指折りの豪商。出世欲が強く、またどこかケチで、小心者だが、知恵と金銭で権威を取り込んできた男。


・相島 権作 (そうじまごんさく)

置田村・八俣の沙汰人で納税管理者。現在は副統括となる。好みの女を襲い、嬲るという異常性癖を持つ。実は九狼党・幹部で❝尾❞の字で呼ばれる。樒と藤香を憎み、密かに抹殺を計画する。


・綿貫 仁兵衛 (わたぬきにへえ)

置田村の東地区・八俣の刀禰。八俣の刑務主を担当。物静かで従順。しかし欲望にはそれ以上に忠実。相島の九狼党との関係に気づき、急接近。覚悟を示し、九狼党の❝毛❞として活動する。


・大須賀 栃春 (おおすがとちはる) 

置田村・東地区・八俣の刀禰。八俣の刑務長を担当。相島の片腕として、千毬の命を受け、豊倉と相島の対抗戦を説明の任を受けた。



■ ▢ ■ ▢

相島邸にて、野崎が相島と、豊倉に対し、どちらが早く白石を殺害できるかを競う競争をスタートさせた。

そして、早速、豊倉は相島を馬車へ誘い、1対1の状態を作る。

ただただ、乙名の座を譲るつもりと言う豊倉。

そこに疑心暗鬼となる相島だが、秘八上について、酒色に溺れ始める相島。

一方、スタート後に相島が豊倉と馬車で去ると、そこに綿貫と野崎、八咫烏が残っていた。

1対1となる状況こそ、権謀術数(けんぼうじゅっすう)は真価を見せるのだった。


◎和都歴452年 3月18日 10時 置田村・八俣 相島邸


相島邸に新しい馬車が迎えに来る。

「迎えが来たようだ。邪魔したな。」

「いえ。」

野崎の軽い挨拶に一礼する綿貫。

「…綿貫、お前、相島の下でずっと終わるのも俺からしたら勿体無く思うぞ?」

「これは、恐悦至極。しかし、私はそういう役回りと認識しています。」

「…そうか。お前は真っ直ぐな気持ちでも、相島が裏切ってくるとも限らんだろ?」

「…」

「…まあ、先の事だが、お前の未来だ。よく考えて立ち回れ。…おい。」

野崎が最後に八咫烏に目配せする。

「これは…?」

「俺からの小遣いだ。気にするな。相島からもお前の評判は聞いている。」

「ありがとうございます。」

綿貫は野崎から金を幾らか受け取った。

「言ってみれば今の競争は相島と豊倉の事だ。俺たちが仲良くしてはいけない道理もないからな。」

「…ですね。」

「じゃあ、相島に宜しく伝えてくれ。」

そう言って野崎と八咫烏は馬車へ乗り、日輪へと帰っていく。


「綿貫、何話してたんだ?」

「大須賀さん?いや、何というほどでも。」

「そうか?気を付けろよ?どんな餌で仲違いをしてくるか、分からんぞ?」

「そうですね。」

そう答えると、綿貫は自室へ戻る。

「フン…」

大須賀も自室へ戻る。


野崎と八咫烏が馬車で日輪へ向かう。

「どうだった?相島邸の連中は?」

「予想通りの爺さんに、あの綿貫?食えない男の様ですね。」

「フッフッフッ。だろ?」

「ただ、相島派もまだ小手調べな感は否めない。オレ達も足を掬われないように、注視しますよ。」

「頼むぞ。相島らは、もうお役御免という事を、お前達で証明してくれ。」

野崎はケダモノの様にニヤリと笑う。


◎和都歴452年 3月18日 10時 置田村・日輪 野崎邸


野崎と八咫烏を乗せた馬車が野崎邸へと到着する。

野崎は馬車を降りるも、八咫烏は降りようとしない。

「降りないのか?」

「この後は豊倉さんに呼ばれてまして。」

「豊倉?ああ、相島をハメる、アレか?」

「それもありますが、夢占いの巫女?たる話があるらしく。」

「ああ、あの悪い未来を占うとか言う話か…俺が聞く限りは当てにならないが…確かにしっかり検証したことはないし、噂以上なら使えるかもな?」

「なんだ…御存知なのか…とりあえず、話だけでも聞いてきます。」

「ああ、もし占えるなら、実際使えるか試してみてくれ。はっはっはっ。」

そう言って野崎は邸宅に入っていく。

八咫烏を乗せた馬車が秘八上へと向かう。


◎和都歴452年 3月18日 15時 置田村・秘八上 旅館・泡沫 蝮の間


相島は豊倉の接待を受け、疑心暗鬼も早々と抜けきっていた。


ーガラ!


「お待たせしました。」

池澤 潤(いけざわじゅん)。豊倉の右腕となる人物で、用心棒も務める。出世欲も強く、割に合わない仕事は他にやらせる狡猾さを持つ。


池澤が女性を引き連れ相島に宛がう。

「うひょひょ!」

「ごゆっくりお楽しみを。」

池澤が豊倉に近寄る。

「八咫烏がそろそろ着きます。」

「そうか、そんな時間か。」

池澤の内緒話に答える豊倉。

「相島さん、ちょっと野暮用がありまして。すぐ戻るんで楽しんでいて下さい。」

「おお、そうか。悪いな、ハハハ。」

豊倉は部屋を出ると、今度は八咫烏と待ち合わせている、鴉の間へと移動する。


◎和都歴452年 3月18日 15時30分 置田村・秘八上 旅館・泡沫 鴉の間


ーガラ!


「勝手にやってますよ。」

豊倉が入ると、八咫烏が一杯やっていた。

「さすが、早い到着だ。」

「いえいえ。で、夢の巫女とは?」

八咫烏の質問に、豊倉はケダモノの様にニヤリと笑う。

次回2025/10/6(月) 18:00~「第10章・7幕 奉日本家」を配信予定です。

   

※10/2 (木)~10/9(木)は1周年記念・強化月間です。

期間中は毎日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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― 新着の感想 ―
相島、浮かれすぎですね。何か罠がありそうですが、、、
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