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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
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第1章・8幕 学童会長選挙開始~③

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。


・三ツ谷 華 (みつたに はな)

   置田村の三大領主の一つでその娘。乙名になる男か、沙汰人に嫁ぐがせるつもりで親の英才教育は厳しい。本人は好きな人と一緒になれればそれでいいと考えている。自分が村を変えれるなら、それも考えてはいるようだが…村でも1番を争う美少女。


・羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)

  麻一郎 (あさいちろう)という兄が、一揆の際に行方知れずとなり、黛村に救出できるよう沙汰人になることを考えている。目標の為には多少の犠牲は対価として支払う、冷徹さもある。蓮太には度々、時には冷たくなるよう助言している。


・冴島 五郎 (さえじまごろう)

  蓮太らの同期だが、住居区は南エリア、日輪の地からの往来の為、そこまで仲も親しくない。正義感が強く人道的だが応用の利かないところもある。


・成島幸太 (なりしまゆきた)

  冴島五郎とは古くからの付き合いで、冴島の活動のフォロー・調査など様々な面で協力する。


■ ▢ ■ ▢

「単刀直入に言うわ。お二人に学童会主の立候補を降りてほしいの。」

ー!?

「どういうこと?私たちを脅すってこと?」

華が少し取り乱す。

「まぁいい、言いたいことは取っておく。続けて。」

宗助が冷静に執り成して千毬に話を振る。

「置田君にも同じような取引をしたの。彼には学童会長から学童会主へ立候補を改めてもらった。その代わりに、彼が得るはずの寺院からの乙名への協力は惜しまないという条件でね。」

「蓮太君が?」

「あいつも取引に応じるように成長したわけだ。」

華と宗助が状況を整理する。

「でも、それと私たちが降りる理由は関係があるの?」

華が疑問を訪ねる。

「あるわ。二人が学童会主に立候補したのは、学童会長に置田君が立候補したからでしょ?」

「なるほどな。蓮太が立候補する階級を一つ下げたから、自動的に俺たちにも下げろと言いたいのか。蓮太の為に。」

「あら、乱暴な言い方ね。」

「でも核心は突いてるんじゃないか?」

宗助は穿つ目線で千毬に尋ねる。

「そうね。でも、この条件で丸く収めてくれたら、私も今後、貴方たちの将来の行動に背中を押させてもらうわ。」

「確かに、蓮太君には乙名になる為にも、これで万が一落選があると辛いかも。」

「まぁな。俺は蓮太なら大丈夫だと思うが。敢えて降りることで俺にも将来の人脈が出来るなら、それも悪くないかもな。華もそうするか?」

「だよね、悪い話じゃない。」

宗助と華は本音を言いながら確認し合う。

「取引成立ってことでよろしいかしら?」

千毬は微笑みながら二人に確認した。


ーいいだろう。取引成立だ。


翌朝、選挙日も迫る中、冴島は自分だけが孤軍奮闘することに気づく。

「五郎、大変だぞ。」

「どうした、幸太?」

成島幸太(なりしまゆきた)。冴島五郎とは古くからの付き合いで、今回の選挙でも活動のフォロー・調査など様々な面で助ける。

「蓮太の学童会長棄権から、学童会主になったのも、やはり、伊集院と取引した可能性が高いらしい。」

「何?許せないな。水面下ですでに勝負を決めるとは。」

「守役長と守役主にそういう取引などありなのか、僕が直に聞いてくる。」

「それがいい、このままだと学童会主になっても、伊集院と置田の独裁になってしまう。」


二人はまず守役主・幸兵衛に話をしに部屋へ赴いた。

「失礼します。」

「お、珍しい。どうした?」

「実は学童会選挙で裏取引的な話があるらしく…」

冴島は、千毬と蓮太の取引の話を幸兵衛にした。

「まぁ、本当にあれば不味いかもしれないが。」

「俺たちが嘘をついていると?」

「うーむ…そうは思いたくないが。お前たちの旗色が悪いのは事実だが、取引自体は噂なのだろう?」

「そんな…じゃそういう裏取引があっていいのかを聞きたいです。」

「それは守役長に聞いてくれんか?」

「わかりました。失礼します。」

二人は幸兵衛の部屋を出て言った。

「ったく。選挙ごっこで熱くなるんじゃねぇ。儂は❝ごっこ❞ついでにちがう❝ごっこ❞で愉しむんだからよ。」

幸兵衛は隠してある酒を一口飲むと、舌打ちをした。


「失礼します、守役長。」

「おー、聞いとるよ、選挙で裏取引が行われとるとか?」

「そうなんです。これは寺院として、純粋な学童の為の活動組織として、あるまじきと思うのですが。」

冴島は必死に訴える。

「そうじゃの。ワシも最初はそう思っとった。だが、言うなればそれも政治力だ。」

「え?本気ですか?」

「よいか冴島君。一昔前にこの村と黛村で一揆がおき、沢山人が死んだ。それは暴力が故にじゃ。」

「・・・」

「取引は誰も殺さない。しかし、勝てなければそれは馴れ合いにもなりかねない。」

「そんな…」

「冴島君が正義を目指すなら、伊集院さんと置田君を政治力で倒さねば始まらん。ワシはそう考えたのじゃ。」

「多勢に無勢。孤独の僕にどう戦えと。」

「暴力を直接駆使するな、とだけ言っておこう。冴島君は飽くまで綺麗な存在だ。汚れ仕事はしてはいかんのじゃ。それも政治力というものじゃ。」


「五郎?大丈夫か。」

「…ああ。まずは人を集めよう。」

「伊集院さんたちを?」

「いや、暫くは静観する。悪い奴かを見定めてからだ。」

冴島の目は一つ覚悟を決めたのか、冷たいケダモノの目をしていた。

次回2024/10/31(木) 18:00~「 第1章・9幕 学童会長選挙開始~④」を配信予定です。

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