第9章・幕間劇 神器❝猿の器・猿真似❞
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・八咫烏 (やたがらす)
若くして傾奇衆を束ねる頭目。漆黒の着流しに紫のバンダナを巻く、イケメン。目的の為には徹底的な勝率を考える冷徹さを持つ。
・獅子王 (ししおう)
極悪浪人集団・傾奇衆の一人。性格から何かと先陣を切る。蓄えた髭と丸顔がまさに獅子を彷彿させる。橙色の着流しが特徴的。
・山楝 (やまかがし)
傾奇衆の1人。人の絶望をこよなく愛する外道。黄色い着流しに赤と黒の斑模様という不気味な配色を好む。野次や毒を吐き相手のメンタルを砕くのが好き。
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◎和都歴452年 3月15日 15時 都の外れ・郊外の森
傾奇衆は、都の官人に手配され、郊外まで逃げてきていた。
「官人らしつこいな!」
「仕方ない、迫る一軍は排除しよう。」
獅子王の言葉に、八咫烏は戦闘態勢を号令する。
「き、きさまら!もう逃げられんぞ!」
「ああ、命かけての勝負だ。」
ーズバ!
ーズバ!
傾奇衆は、各々が官人複数を相手に斬り殺していく。
「く、くそ!怯むな!いけー!!」
50を超える官人も、7人の傾奇衆が見る見る数を減らしていく。
「儂に任せろ。」
「せ、先生!」
官人の奥から白髪の中年男性が現れる。
「なんだ?てめぇ?」
山楝が短刀で近寄ろうとするとー
「待て。」
「あ?何で止める?」
「こいつは…出来る。」
「何?」
八咫烏の表情に、山楝は引き下がる。
「オッサン、単なる官人の仲間じゃないな?」
「…わかるか。サムライ崩れにも原石は居る様だ。」
両者、刀を抜く。
ーキン!キン!・・・・・
弾き合いが続き、八咫烏が鍔迫り合いに持ち込む。
「お主、中々やるな!」
「オッサンもな。」
ーキィィィン!!
両者弾かれ、再び構え直す。
「実に勿体ない。お主のような使い手が、犯罪の担い手とは…」
「そりゃどうも。」
「殺すには惜しいが、これも役目…我が奥義にて苦しむ間もなく逝かせてやろう。」
「…へぇ。オッサンみたいな使い手の奥義か。」
八咫烏が猿の人形を取り出す。
「是非、拝見させて頂こうか?」
「小癪な…!」
白髪の男は八相の構えを取る。
「・・・」
その静けさ、刹那の瞬間だった。
「 ・ ・ ・ 」
「キィエェェェイ!」
ーズギャァァァァ!!!
白髪の男は叫んだ瞬間に突きを出していた。
その刀の先端からは恐るべき剣気が放たれー
ーキン!!
八咫烏は受け止めー
ーガキャァァン!!
弾いた。
「…な!?」
「ほーう?これが…奥義か…」
「な…何と…儂の編み出した奥義・猿叫…敗れたか…」
「いやいや、スゲェよオッサン。まさか真空状の刃を飛ばすなんて常軌を逸している…けど、これは使えるな?」
「な…何?」
「冥途の土産にオレの奥義を見せてやるよ。」
八咫烏は猿の人形を懐にしまい、八相の構えを取る。
「・・・」
その静けさ、刹那の瞬間だった。
(こ…これは…まさか?)
白髪の男は自身の編み出した奥義に似ていることを直ぐに理解した。
「 ・ ・ ・ 」
「キィエェェェイ!」
ーズギャァァァァ!!!
八咫烏は叫んだ瞬間に突きを出していた。
その刀の先端からは恐るべき剣気が放たれー
ーズシャァァ…
(この若僧…儂の奥義を…一度見て…極めたのか?)
「言ったろ?冥土の土産に見せるとな。オレはどんな技も完コピ出来るのさ。」
「そ…そんな…ぐふ…」
白髪の男は息絶えた。
無論、八咫烏に技をコピーする力があるわけではない。その秘密は、彼の持つ猿の人形にある。
神器❝猿の器・猿真似❞
一度見た『行動』を完全にコピーする。
その習性故、技を受けるか、見る必要はある。
更に猿の目玉に『行動』が焼き付く為、2つ以上は保存できず、上書きすることとなる。
どんな技、たとえ同じ神器の力を使った能力でさえ、八咫烏が『行動』と認識できれば、それを見て習得させることが可能。
「あの時、都で偶然手に入れたこの像があれば、オレは技も権力も、欲しいものを手に入れて見せる。」
八咫烏がケダモノの様に微笑む。
次回2025/9/25(木) 18:00~「第10章・1幕 皆の了承」を配信予定です。




