第9章・32幕 次の任務・樒編⑩
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・紫 尤 (しゆう)
元来、祖柄樫山近郊に住んでいた女領主。大柄で薙刀の達人。気品に満ちている面もあり、紫御前と畏怖される。その実は、九狼党の幹部・❝牙❞で、実行部隊の頭目。黛村とも繋がるも、謎の多い淑女。普段は漆黒のドレスにトーク帽で表情を隠している。
・上田 樒 (うえたしきみ)
紫の七草という紫御前の側近集団の長。氷雨の女といわれる冷酷非道の美女。黒い生地に紫の花柄の着物を纏い、圧倒的雰囲気を纏う。神器によって紫尤に生み出された強化人間。
・竹達 鬼灯 (たけたつほおずき)
紫の七草の二。剣の達人で紫の実働部隊として活動し、無双をロマンに掲げる程の実力者。並外れた身体能力が、七草随一の戦闘員とも言われるほど。ザンバラ髪をポニーテールで纏め、浴衣一丁という女子力の無さ。
・遙 星薊 (はるかほしあざみ)
紫の七草の三。情報収集や毒針での暗殺を担当。汚い戦術や拷問を好む非道な女戦闘員。黒装束に外は黒、内は赤のマントを羽織る姿が蝙蝠を彷彿させる。
・雨宮 蕨 (あめみやわらび)
紫の七草の四。樒の所持品を持ったり、身の回りの世話をする。樒の側近的役割。棒術や格闘術の心得がある。天然な性格だが命令には忠実。
・早見 鈴蘭 (はやみすずらん)
紫の七草の五。おっとりした性格とは裏腹に残酷。火を使うことを好み、火遁らしい技術を持つ。洋風のローブ1枚の様な妖艶な姿が特徴的。七草のお姉さん的存在。
・花澤 水仙 (はなざわすいせん)
紫の七草の六。樒に次ぐサブリーダー的役割をこなす。蓮太らと同じ14才でありながら、卓越した分析能力と指示能力を持つ。大きな瞳にお河童頭、洋服にズボンという、ボーイッシュなスタイル。
・黒石 礼央 (くろいしれお)
紫の七草の七。元・黒川組・若頭。女性でありながら腕と頭が冴え、若くして出世した。サバサバした性格で、人望もある。人の機微を見抜くことにも鋭敏。白粉の命を懸けた行動に感銘を受け、彼女の死後、欠番として入隊。サイコロの賭け事が大好き。
■ ▢ ■ ▢
八俣の乙名・赤島が捨て石となり、その後釜が気になる攻勢派の面々たち。
野崎は自分の腹心である豊倉に乙名を任せるつもりということを相島らは聞きつける。
その打開策を練る相島一派。そこには千毬の姿もあった。
現状、一番攻略の難しい白石組を攻略した者を八俣の乙名とするよう、野崎に提言するべきと進言する。
その伝言を任された大須賀は急ぎ野崎の元へ馬で向かった。
一方、千毬は女郎花へ向かい、九狼党の会議へと出席。
そこでは青田組保護と双子の力を削ぐことが肝要と決まり、急ぎ紫の七草は実行するべく行動に移った。
◎和都歴452年 3月16日 0時 黛村・女郎花 紫御前の館 客室
紫の七草は、皆が出ていくと大広間に集まる。
「まずは、双子の傘下になりうる赤島の力、攻勢派の力を削る必要があります。直近では蓮太捜索隊とやらが、赤島組とぶつかる可能性があるようです。」
「へぇ?」
樒の言葉に即反応する鬼灯。
「それなら、ウチと星薊にヤらせてよ?」
「確かに、前にちょっと青田組にも約束したような気がする、よね。」
鬼灯と星薊が名乗りをあげる。
「ならばこれに関しては時間がありません。早急に動いて下さい。赤島組の対応を終えたら、わたくしから空間会話で指示を出します。」
「ほーい。じゃ、星薊、行こっか?」
「任せる、よね。」
そう言って、2人は大広間を出ていった。
「さて、残る任務ですが、相島を保護するのは不本意ながらわたくしが指名されましたので、わたくしと蕨は相島保護に付きます。あと3人で攻勢派の動向を見張る役をお願い致します。」
「了解!」
樒の話が終え、散開する七草。
この後、鬼灯と星薊は、駿一郎らと合流し、赤島大和と鬼川金三郎を倒す事となる。
「礼央にとっては七草としては初陣だね。」
「白粉の為にも、命を預けます。」
「そこまで畏まるコト、もう無くてよ?」
水仙、礼央、鈴蘭が組み、野崎・豊倉の動きを探りに向かう。
「わたくしたちも御前様に顔を出し、急ぎ向かいましょう。」
「はい!」
樒が蕨に声をかけ、紫御前の元へ行こうとするとー
ーガチャ
扉から紫御前が漆黒のドレスにトーク帽を被り、出てくる。
「御前様?」
「おお、樒。妾に挨拶か?」
「はい、ですが御前様も出撃ですか?」
「実は南地区との間で戦闘が起きておる様子。」
「何と…であれば、わたくしがー」
「樒は計画を実行するのだ。我が領土を踏みにじる輩は、妾が直接切り裂いてくる。」
大薙刀を持ち、出口へ向かう紫御前。
「わかりました。お気をつけて。」
「樒もな。菫を倒す頃には戻っている。空間会話で状況を知らせるのだ。」
「わかりました。」
樒と蕨は相島邸へ急ぎ向かった。
◎和都歴452年 3月16日 8時 置田村・八俣 相島邸 付近
「蕨?わたくしたちの任務は相島が菫様を殺害達成をさせる事です。」
「はい。」
「そこは如何様にもなるでしょう。問題は、綿貫の言っていたコト…」
「はい。心得ています。」
「相島がわたくしを狙っているとしたら、弱りきった時でしょう。その窮地を活かし、相島を殺ります。」
「うまく罠に食いつきますかね?」
「うふふ…ええ。当面は菫様を攻略することが優先ですが、相島がいつ寝返るかも分かりません。動向を注視してください。」
「はーい!」
二人は相島邸の門をくぐり、中へ入っていく。
龍の行水が、神奈備に跋扈する野蛮組織の抗争を中断した。
しかし、時は流れ、赤島会の権威は落ち、謎の多い白石組を攻めることに集中する、攻勢派の豊倉一派と相島一派の争い。そこに再び紫の七草を相島のサポートに執り付けた千毬ら。
それぞれの思惑を胸に、白石組攻略を競い合う。
ー第9章・樒編 終
続・10章ー
次回2025/9/23(火) 18:00~「第9章・幕間劇 神器❝猿の器・猿真似❞」を配信予定です。




