第9章・27幕 次の任務・赤島編⑦
今回の登場人物
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・獅子王 (ししおう)
極悪浪人集団・傾奇衆の一人。性格から何かと先陣を切る。蓄えた髭と丸顔がまさに獅子を彷彿させる。橙色の着流しが特徴的。
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赤島は具義屋姉妹を乗せた馬車で八俣へ、そして野崎に交渉するため、日輪へ移動する。
少しゆっくりしようと、宿屋・波でゆっくりするも、自分を知らない女中・伊山岬と出会う。
一方、料亭・伊佐で屯する浪人ら3人は、悪態をついていた。
そこへ都より流れ着いた無法集団・傾奇衆が、店に入ると、その3人の浪人と揉め始めることに…
「へぇ?挨拶が無くて済まなかったなぁ。ーで、お前さん、地元の奴か?」
「いや?2週間前に此処に着いてなぁ。」
「ほう…そりゃどうも。先輩かぁ?」
獅子王が、背後の仲間らと顔を合わせる。
「テメェらどっから来た?」
3人の浪人のもう一人が声をあげる。
「オレ達?そうか、前に居た場所は都だが、オレ達には故郷も名前も無いのさ。」
八咫烏。若くして傾奇衆を束ねる頭目。漆黒の着流しに紫のバンダナを巻く、イケメン。目的の為には徹底的な勝率を考える冷徹さを持つ。
「何だと?名前もないだぁ?」
「ああ。それよりも、ここの土地で顔を利かせてるのはお前達しかいないのか?」
「今までは赤島って奴が野崎さんの下で細々とやってたらしいがな。そいつらも今や八俣に集結しているらしい。俺らは刑務長の福本さんに睨まれない程度に騒いでるだけさ。」
「…なるほどな。」
この置田村・日輪の力関係をそれとなく理解した八咫烏。
「わかったら、俺らの傘下に入ってから酒を頼むんだな。」
3人の浪人の内、立ち上がった男がそう言う。
「それならば、お前達に果たし状を申し込むまでだ。」
「何ぃ?」
八咫烏の言葉に驚く3人の浪人。
「怖いモン知らずも大概にしとけば良いものを!なら代表者タイマンで拳で勝負すっか?負けというまで撲殺だ。」
立ち上がっている浪人が声をあげる。
「さすが、最年長!ぶん殴って泣きっ面かかせてやれ!」
座り酒を飲む浪人も盛り上げながら叫ぶ。
「お前達、3人。全部だ。」
「あ?」
八咫烏の発言に唖然とする3人の浪人。
「3対1で良い。」
八咫烏が前に出ながら刀に手を伸ばすと、獅子王が八咫烏の前に出る。
「ここは俺が。」
「テメェ!リンチになりてってか?」
座っていた男も立ち上がり、腕を鳴らして前に出てくる。
「撲殺だ!」
もう一人も立ち上がってくる。
「果たし合いだ。拳なんて御茶らけたモンじゃサマにならねぇ。真剣でしょうぶだ。」
「その通り。」
獅子王の言葉を肯定する八咫烏。
「…な…何!?」
肝を冷やす3人の浪人。
「フハハハ…聞こえなかったのか?真剣だよ、命懸けようぜ?」
薄笑。傾奇衆の中でも古参。いつもニヤニヤして掴みどころがない。キレモノで、腕も立つことで重宝されている。水色に蒼と黄色の花柄の着流しが、派手さを象徴する。
「今更怖気つかれても、お前達も行き場に困るだろう?どうせ命を弄んできたんだ。ここらでその筋をしっかり見せてもらおうじゃないか。」
八咫烏が歩み寄り、3人の浪人が飲んでいた徳利に酒を注ぐ。
「お互い、価値のない命なんだ。」
八咫烏の言葉に、薄笑がニヤリと笑う。
「くそがぁ…」
「お前達の合図で初めていいぞ?」
獅子王が余裕で話す。
「クソが!」
「うおぉ!」
二人が一斉に獅子王に斬りかかる。
ーキンキン!
瞬間に二人の一太刀を弾く。
ーズバズバ! ドカ!
立ち上がっていた浪人を即座に2回斬りながら、反対の男を蹴り弾く。
「…う…」
蹴られた浪人は立ち上がるも、後ずさりする。
「何だよ?ビビってんじゃねぇよ!命懸けろよ!」
山楝。傾奇衆の1人。人の絶望をこよなく愛する外道。黄色い着流しに赤と黒の斑模様という不気味な配色を好む。野次や毒を吐き相手のメンタルを砕くのが好き。
「く、くそぉぉぉ!!」
ーキン!ズバズバ!!
浪人の剣は一瞬で弾かれ、2太刀浴びせる。
「残るは?」
獅子王が、最後列から動かない浪人を睨む。
「…!!」
次回2025/9/7(日) 18:00~「第9章・28幕 次の任務・赤島編⑧」を配信予定です。




