表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第1章・学童会長選挙
12/143

第1章・6幕 学童会長選挙開始~①

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

  伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。


・霧隠 玄 (きりがくれげん)

  蓮太らの同期。飄々とした性格で、暗殺が得意の忍者志望。千毬とは付かず離れずの仲。妙に多面性を持ち合わせる不気味な性格。


■ ▢ ■ ▢

裏庭で蓮太に焚き付けると、霧隠はそのまま裏庭を後にした。

「どう?」

「千毬か。」

霧隠と千毬が暗い通路で立ち話をする。

「蓮太は相当小夏ちゃんに()()()()だ。」

「そう。なら私たちも小夏を守る理由は出来たわね。」

「僕は元よりそのつもりだけど。」

二人は並んで歩き始める。

「あとは私が確実に学童会長になる一手を打てば終わりね。」

「蓮太が降りたから、後は砂利みたいな男だろ?守役長は既にこちらに投票予定だ。」

「それと別に守役主が厄介でね。彼も昔ながらの男でね、女がリーダーになるのを酷く嫌がるのよ。更に厄介なのが、獲得票とは別に守役主の1票も大きい。こちらの守役長だけだと、反対派とプラスで守役主の1票は左右すると言っていい。」

「なるほどね。それであのジジイの秘密を僕に探らせてたのか。もしかして恐喝するつもり?」

「いえ。取引に応じさせるわ。必ず❝はい、やらせてください❞と言わせて見せる。」

千毬の表情はケダモノのようになる。


千毬は単身、守役主・森 幸兵衛(もりこうべえ)の部屋へ向かう。

「失礼します。」

「お、入りたまえ。伊集院さんだね?」

千毬は一礼すると幸兵衛の前に正座する。

「お目通り願ったこと、誇りに思います。伊集院千毬です以後、千毬で構いません。」

「おお、教養にも優れ、なかなかの美少女と聞いていたが、本物はそれ以上じゃな。」

「守役主にそう言っていただけるとは光栄です。」

幸兵衛は辺りを見回すと身を乗り出して言う

「固い言い回しはなしじゃ。儂は幸兵衛。幸兵衛と呼んでくれ。」

森 幸兵衛(もりこうべえ)。乙名や、沙汰人、親世代からは信頼のある、実直で経験豊富な守役として知られ、守役主まで実力でなった。ただ、奇妙な事件に遭遇しており、本人はそれを否定している。

「いえ、守役主にお名前でお呼びするのは筋違いです。」

「まぁここでは二人きりじゃ。」

「それはそうですが。」

「どうせ、儂の票を取りに来たのじゃろ?」

「あら。話が早くて助かります。」

幸兵衛が立ち上がり、千毬の隣に座る。

「それでいて一人ここへ来るなら、話は分かっとるよ。」

幸兵衛がいやらしい顔で千毬を見る。

「それで確約するのですか?」

「勿論じゃよ。」

幸兵衛が千毬に手を伸ばす。


ーパシ!


「ぬ?何をする!」

「まぁ私を愛でるのも結構ですが、それでは1回きりになりますよ?欲望を満たすなら、この先ずっと。お相手に困らない方が宜しいんじゃなくて?」

「な、何?」

「あなたの過去の事件は知ってます。それを咎めるつもりもないです。」

「?」

「私が学童会長になった暁には、貴方が今抱いている不満、無くして差し上げます。」

「ど、どうやって?」

「例えば守役主と生徒二人になる機会をうまく作ります。その後の細工はあなた次第ですが、私が知恵を貸せるところは貸して差し上げましょう。」

「ほ、本当か?」

「持ちつ持たれつ…でいきましょう。私のカラダはあきらめてもらいますが?」

「ふふ、なるほど、小娘と思ってバカにしておったが、意外に切れ者のようじゃの。気に入った。だが、先の話、忘れるなよ。」

「お任せください。」

千毬は一礼して部屋を出る。

「ふん、伊集院千毬か。噂以上の美少女。かつ切れ者か。だが、態度が気に入らん…飽きたら、最後、千毬(あいつ)もヤッちまうか。」


寺院を出ると千毬に霧隠が合流する。

「やぁ、千毬。ジジイに妙な事されなかった?」

「天井裏に居たんでしょ?いちいち聞かないで。」

「相棒に何かあったらとソワソワしちゃって。」

「気色悪いから変な想像、やめてくれる?」

千毬のツンとする態度に、霧隠は感じた。

ー やばいなぁ、惚れちゃうかも…

「うん?」

「いや、何でもない。」


「森 幸兵衛。予想通りのケダモノね。用が済んだら始末してやりたい。」

「それを飼いならす千毬はもっとケダモノってことだね。」

千毬は口を尖らせて霧隠をじっと睨むー

「うっさいな。」

次回2024/10/24(木) 18:00~「第1章・7幕 学童会長選挙開始~②」を配信予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
14歳なのに大人を従わせるのは、凄いですね。将来が恐ろしい…
伊集院さんと、霧隠くんのやり取りが良かったです。 彼はどこに惚れてるんだ笑 難しいお話でしたが、最近は面白く読ませてもらってます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ