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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第9章・四徒の行方は
110/166

第9章・8幕 次の任務・虎太郎編④・赤島編⑤

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・毛呂 虎太郎 (げろとらたろう)

16歳。本置田地区でも珍しい、貧民の生まれ。両親の人柄もあり、道徳も高い。剣の修行で心身とも強くなった。立場が弱い人を放っておけない。想い人・美弥誉の仇・南 辰教への復讐を誓う。


ーーー


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。赤島会たる野蛮組織を束ねる会長の顔を持つ。


・伊良皆 艶 (いらみなつや)

黛村・南地区の迦具夜の奴隷商人とされる。布一枚を巻き付けるのみという大胆な姿。妖艶な色香と誘惑で、人心を支配する。肉体的な暴力支配も行う、極めて危険な女性。過去に赤島と売春宿を立ち上げ、恋仲でもあったらしい。


・具義屋 牛子ぐぎやうしこ

牛の頭をくり貫いたマスクから見開いた片目だけを覗かせる。巨大な鉈を軽々持ち、牛の皮の羽織り一枚以外、全身裸という狂気の姿。


・具義屋 馬子ぐぎやうまこ

馬の頭をくり貫いたマスクから見開いた目を覗かせる。両手に金槌を持ち、馬の皮の羽織り一枚以外、裸という狂気の姿。


・南 辰教 (みなみたつのり)

虎太郎と誉の幼馴染。背が高く、生まれながらに剣の才がある。自分のモノにならない誉を虎太郎より奪う為に、誉を殺した虎太郎の仇敵。迦具夜の裏世界の親衛隊となり、更なる欲望と力を求めている悪の剣士。



■ ▢ ■ ▢

迦具夜の奴隷商人・伊良皆艶。その屋敷に訪れた赤島。そして後を追って屋敷に忍び込む虎太郎と梓。

赤島は伊良皆に奴隷を兵士化していることを知ってここへ来たことを告げ、それを売って欲しいと持ち掛ける。

「まてまて。そもそも猛は赤島会の会長。兵士など五万といるだろうに。」

「訳アリでな。」

「…普通の兵士ではない、殺人鬼というケダモノ。それを知ってのこと?」

伊良皆は鋭く赤島を見る。

「ああ。」

「猛とは一緒に売春宿を立ち上げたし、旧知の仲、別に売っても良いが…目的くらい聞かせてくれぬのか?」

「…目的か。日輪を奪う。ではダメか?」

「ほう?なるほど、訳アリだな。」

伊良皆はある程度察した。

「置田村は終わりだ。双子に支配されるのも時間の問題。」

赤島はため息交じりに言う。

「あははは。お前さんがそんな弱気に?双子に脅されでもしたのか?」

「置田村攻勢派は、言ってしまえば置田村の主力部隊だ。その頭、野崎は双子に肝を抜かれたのだ。あれを見て、部下は恐らく自分たちの生き残り方を見直すはず。俺は双子に捕らわれた蓮太を逆に攫ってこいと使い捨ての様にされ、双子に捕まった。」

「・・・」

「俺はもう双子につくと決めた。最後に俺のしたいことをすると決めたのだ。野崎がどうなるか、いや置田村なんかもうどうでもいい。」

「なるほどね。でもなんで日輪なんだ?」

「…それを聞くのか。」

「…いや、その答えでわかった。でも私を忘れないでおくれ。」

「去っていったのはお前の方だ。」

すぐに抱きかかる伊良皆。

「…そうだったな。でも今日感じて懐かしくも安堵を得てな。」

「…目的を果たしたらまた来る。それでいいか?」

「…目的を果たしても生きていたら…と言わないのは優しさと取るぞ?」

赤島の目を見据えて言う伊良皆。

「兵士はとっておきのケダモノがいる。それで皆殺しにするといいさ。」

「ほう?見せてくれるか?」

赤島の言葉に違う倉庫へ案内する伊良皆。


「あいつら…どこへ?」

忍び込みながら虎太郎も移動する。


その倉庫のカギを開け、中に入ると赤島は目を見開く。

「こ…これは…」


⦅グ…グギャ…⦆


沢山の檻に入った兵士化したケダモノ、殺人鬼たち。

「一番奥に、師・羅前色様、自ら処置を施した兵士二人、最新作でもっとも優秀。具義屋(ぐぎや)姉妹。牛子(うしこ)馬子(うまこ)だ。」

姉妹二人が牛と馬の被り物から目を見開いてみせる。

「お、俺の命令を聞くのか?」

「牛子、馬子?この赤島猛がアンタらの飼い主だ!いいね?」

伊良皆が赤島の手を取ってそう躾ける。

「グギヤ…」

「これで大丈夫よ。」

「かたじけない。」


「な…なんだこいつらは…まるで悪夢だ…」

隠れて観ている虎太郎も圧倒された。


「姉妹二人はいくらだ?」

「猛、お金は今回はいい。それより無事に帰ってきておくれ。」

「そうはいかん。」

金を数十枚置いて中の二人を出す赤島。

「馬車借りるぞ?」

「もう行くのか?」

「早く済ませたい。」

「そうか…」

「それに今日中に攻勢派に伝えることもあるんでな。」

俯く伊良皆。


「ん…」

赤島は伊良皆にそっと口づけをする。

「色々、済まなかったな。」

「猛…?」

そういって馬車に二人を乗り込ませ、奴隷屋敷を去る赤島。

その馬車が見えなくなるまで見送る伊良皆。

「ありがとな、猛。」


「この獣みたいな人間…一体?」

急いで梓の元に戻ろうとする虎太郎。

「おい。」

呼び止められ、振り返る虎太郎。

「久しぶりだな、毛呂虎太郎。」

そこに立っていたのは虎太郎の仇敵・南 辰教(みなみたつのり)がいた。

次回2025/7/24(木) 18:00~「第9章・9幕 次の任務・虎太郎編⑤」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
赤島を好きな人もいるんですね。ケダモノ同士だから仲良く出来るのでしょうか。
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