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ケダモノたちよ  作者: 船橋新太郎
第9章・四徒の行方は
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第9章・3幕 次の任務・蓮太編③・赤島編①

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・置田 籐香 (おきたふじか)

故・蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。


・赤島 猛 (あかしまたける)

野崎飛助に従い、一揆以前から兵士として活躍した男。蓮次と飛助に指名され、乙名に成り上がった。主に飛助の為に募兵や同士を集めている。酒と女にだらしなく、不道徳な男。赤島会たる野蛮組織を束ねる会長の顔を持つ。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

伊集院家の令嬢。他の学童とは一線を画す貴族のような出立と、大きな瞳ながらどこか冷たい表情をもつ。常に腹に一物を置くような一筋縄ではいかない性格。九狼党の❝耳❞である。


・缶 杏 (ほとぎあん)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で長女。狡猾で、弓の名手。父と同じ、暴力で支配、解決するタイプ。脚が露になった、黒と杏子色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


・缶 桃 (ほとぎもも)

黛村・北地区の変若水の缶梅男の双子の娘で次女。姉の杏にそっくりな顔立ちだか、それ以上に感情的で暴力的。火遁の術を用いて火焙りにし、接近時は短刀で八つ裂きにする野蛮性を持つ。姉と同じ、脚が露になった、黒と桃色のツートーンのチャイナドレスの様な、風変りな装束を纏う。


■ ▢ ■ ▢

藤香の元へ戻るも、蓮太の行方不明と、黛村の奇妙な兵士の情報を伝える梓。虎太郎と共に黛村・迦具夜へ向かい、奇妙な兵士の情報収集に向かった二人。

一方、藤香は千毬との情報交換と、今後の作戦を練るため、会談していた。

そして、千毬の持つ、不確かながら貴重な話に、藤香は反応を示す。


「鈴谷家の女性に宿る血で使う事の出来る神器を狙う存在がいる、だと?」

千毬の言葉に藤香は鋭い視線で返した。

「はい。まだ伝手の情報で、確証はないのですが。」

「いや、私もそれは前々から危惧していた。そもそも神器は封印された遺物。今更、使い方を知り得る者も少ないはずだが。その狙う者とは誰なのだ?」

「これも不確かですがー」

「構わん。」

東雲隆将(しののめたかまさ)・・・覚えておいででしょうか?」

「!… 東雲…守役?」

「はい。彼は蓮太君の卒業と共に寺院から去り、その後の行方は分かっておりません。玄の調査では、❝禍津社(まがつやしろ)❞という組織を設立し、神器の収集に精を出しているとか。」

「禍津…社。」

「以上の情報から私は稲穂の保護を最優先にしつつ、蓮太君の保護も同等に重要となると思います。」

「蓮太は早々死なぬ。ただ二人を共に居させる方が守り易いのは確か。」

藤香と千毬は頷く。

「駿一郎に捜索隊と共に鈴谷の館へ急行させる。」

藤香が立ち上がる。

「攻勢派の青田奇襲も考慮し、ここは不本意ながら私自らー」

「いえ、藤香様はここ本置田の要。」

「しかし、攻勢派に遅れをとれば、青田を見殺しにせざるを得ない、それは私自身許さぬ。」

「ええ、ですからここは私にお任せください。」

「千毬が?数は多数、お前一人行かせるワケには…」

「私は知恵を以って敵を攪乱させ、兵力を削ぎます。御安心下さい、特攻など致しません。」

自信に溢れる千毬の表情に、藤香も頷いて見せる。

「では、吉報をお待ち下さい。」

千毬は離れに向かい、準備を始める。


◎和都歴452年 3月14日 15時 置田村・本置田 置田邸・離れ


1時間ほど、準備を終えると、そこには桃と白の豪華な忍装束らしい服を纏う千毬の姿があった。

「さて、そろそろ相島らにも消えてもらおうかしら。」

冷徹な眼差しを見せる千毬は手袋をハメる。


◎和都歴452年 3月14日 9時 黛村・変若水 惟神収容所 看守部屋


「まさか…アンタがライオンちゃんを連れ出したんじゃないだろうな?」

杏の尋問に、傷だらけで縛られている男、それは赤島猛だった。

「そんなことしてねぇよ。ならよ…取引しねぇか?俺の次の任務をよ?」

赤島がケダモノのように微笑む。


「あん?アンタの任務?」

桃が捜索から帰ると話が聞こえていたように返事をしながら看守部屋に入ってきた。

「で?本当は何しに来たのさ?」

杏が尋ねる。

「そりゃ蓮太の救助だ。」

赤島の答えに杏と桃は顔を見合わせる。

「でも、その蓮太は今さっき刺客と共に逃げ出した。お前ら攻勢派とやらの差し金じゃないなら、お前も探すのを手伝ってもらう。」

「ああ、構わねぇ。でも一つ提案がある。」

「提案?」

杏が眉をひそめる。

「攻勢派…置田村をアンタらに渡すから、俺を側近として使ってくれ。」

「・・・」

杏と桃はまた顔を見合わせる。

「杏、どうする?」

「ふーむ…わかった、いいだろう。」

「へへ、俺は赤島会を動かせる。攻勢派の半分は俺のモノだ。力になれると思うぜ。」

「…そうか。で?」

「ん?」

杏の質問に疑問で返す赤島。

「タダじゃないんだろ?何が目的なんだ?」

「ああ、察しがイイな。置田村の西、秘八上。あそこの攻略と権利は俺に貰えないか?」

「コイツ…!」

桃が前に出ると杏が手で収拾する。

「わかった、いいよ。西地区・秘八上だな。」

「杏?」

桃が不満をぶつける。

「ああ。」

赤島は桃を見下すように見ると一言返事をする。

「そしたら、今日は休んで、明日にでも攻勢派とやらに伝えろ。❝蓮太は脱走した❞とな。」

「承知した。」

「桃?一緒にオヤジの面、見に行くよ?」

不満そうな桃を、杏が看守部屋から連れ出すように出て行く。

次回2025/7/6(日) 18:00~「第9章・4幕 次の任務・赤島編②」を配信予定です。

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― 新着の感想 ―
杏と桃と赤島が協力したら、かなりの悪集団になりますね。今後どうなるか楽しみです。
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