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戦場スーパーでの教え


まさかスーパーの中で、猛ダッシュするとは思わなかった。

あの時の(おかぁ)の顔は忘れたいけど、忘れないのだろう・・・。


時々、コンビニやスーパーで、こどもを連れたおかあさんが、

こどものわがままに怒っている場面にぶちあたることはないか。

(お菓子は1個ね)と、おかあさんが言っている姿は、特に見掛ける。

こどもは泣いてみたり、すねたりと色々な表現をする。

自分も、こんな時があったのかな?と、幼少時代を思い浮かべてもみる。

わが子の教育には、叱ることも大事なのだろう。

あれこれ欲しいと思うのが(こども)だし、仕方ないけど、我慢を教える事は必要かな。


でも、1個じゃなくて、せめて2個にしてあげて欲しい気もする。

1個を決めるのには勇気と時間がいる。

なのに、おかあさんは(これだけね。)と、簡単に1個を決断するから凄い。

おかあさんは強いもんだ。


そんなことを考えながら、優しい親子の会話を観察する。


ところが、同じ場面でも「別世界」にぶちあたる時もある。

こどもは基本、同じようにお菓子をたくさん、手にとってかごに入れる。

この時の、おかあさんはTシャツのサイズを間違えちゃったのかな?

腹と背中丸出しの迫力ある、おかあさんが、まずはこどもの頭に(バシッ)と、一発!

(そんなにいらねぇだろ)と、かごからお菓子を取り上げる。

お菓子は、もとにあった場所には戻さずに、適当な場所に適当に置く。

おかあさんによって教育はあるのだろうが、こどもはこどもで(いてぇなぁバカ!)と言っていた。

母子揃って、口が悪い。

ただ凄いのは、それでもこのこどもは引き下がらず、また違う棚から別の菓子をかごに入れた。

おかあさんは(バシッ)2発目である。

こどもはかごにしがみつき、おかあさんはかごごと、こどもを引っ張る。

これがしばらく続くと、コンビニやスーパーの棚がハチャメチャになるのは当然だ。


おかあさんは大変だな。


もうひとつ、同じ場面の話しをすれば、おかあさんは1個だけと教育しているのに、おとうさんが

甘やかし、こどものわがままを聞いてしまう時の店内は騒がしいものである。

おとうさんは優しい、おかあさん厳しい。と、観察側は見えるけど、こどもと一緒に居る時間が長い

おかあさんにしたら、教育の邪魔をすんな。と思うのかな?

おとうさんは、たまにの時間だからこそ甘やかしてしまうのだろうし、むずかしいところだ。

でも最終的には、おかあさんの勝ちはお決まりだ。

おかあさんによっては、優しく言い聞かせたり、「バシッ」と厳しくしたりとあるんだなと思った。


朝起きて、冷蔵庫を開けたら何もない。

仕事に追われて買い物にも行けない状態が続いていたからなぁ。

基本、混み合う場所が嫌いなのでコンビニが多くなるが、この日はスーパーを選んだ。


朝から足の小指を棚の角にぶつけて転げまわる1日の始まり。

そして、コンビニではなくスーパーを選択した判断ミス。

厄日という日は、誰もに回り巡るものなのだろう。


久しぶりのスーパー来店。

入り口には、コロナ対策の消毒液が置いてある。

うわぁーつめてえ。くせぇーぎゃはははっ。と、消毒を楽しんで離れないこどもがいた。

消毒の順番を待つ、杖をついたお婆ちゃんが、元気がいいね。と微笑み、おれの顔を見上げた。

こどもは、小学校1年生くらいか?ボーズ頭で、多少頭に傷あとがある元気な男の子だ。

いつまでも手を消毒しているので、お婆ちゃんもおれも消毒ができない状態だった。

ぼくちゃん、そんなに消毒したらおててがいたくなっちゃうよ。と、お婆ちゃんが言った。

えぇ~いたくねぇよ。ぎゃはははっ。

大人の事情など通用しない。


消毒待ちのおれも、暇を持て余し後ろを向き外を眺めはじめた。

今度は、遠くから慌てた様子で、ひとりのおばちゃんが走り込んで来るのが見えた。

必死さを感じる走りだ。何かをブツブツ言っているのが口の動きでわかった。

目線はおれ?いや違う。でも、こちらを見ての猛ダッシュには間違いない。

そんなに急いで、なにを買うのかはわからないが、雄叫びもあげている。

入口に飛び込むなり、よっしゃーあったわ。と、ガッツポーズ。

どうやら、バッグを買い物カートに掛け忘れ、外に出てしまったらしい。

買い物をした品物を持って、自分のバックを置き忘れたまま車に戻ったんだと、察しがついたが、

それにしても、風を切る走りには驚いた。

隣を走る自転車も追い抜いていたように見えたが、それだけ焦っていたのだろう。

人間、ガッツポーズが出る時は余程のことだ。


消毒を待つお婆ちゃんも、よかったね。と、ここでも微笑えんでいる。

おばちゃんも、全財産入ってんだよ。わっはははっと、お婆ちゃんの前でバックを叩く。

絶対に知り合いではないふたり。

おばちゃんは、安どの思いなのか、今度は静かに歩いて出て行った。


その間も、こどもは騒いでいる。

まだ、スーパーの入口なのに、前に進めない。

さすがのお婆ちゃんからも微笑みが消え、どういう教育してんだ!

と、ささやき消毒を諦めようとした時に、別のお婆ちゃんが入ってきた。

そのお婆ちゃんは、ほらっどいてちょうだい。と、こどもの前に割り込み消毒を済ませる。

だめだよ!ひとりでこんなに使っちゃ。と、こどもに教えながら入店する。

男の子も、ふてった顔をしながら、おーい!おかぁ。おーい。

大きな声を出しながら、その場から離れ店内に走った。

それにしても、口の悪いこどもだ。と、思ったが、どうも何かが引っかかる。

この子、どこかで見たことがあるような、ないような?


順番待ちのお婆ちゃんも、ようやく消毒に手が届いたが、常識がないね。

と、軽く怒っていた。

こどもになのか?それとも横入りして来たお婆ちゃんになのか?

ここではわからなかったが、後で知ることになる。

やっぱり、スーパーは男には合わない。苦手が更に、苦手になっていた。


料理するのも面倒だし、できあいの物でも買いためよう。が、いつもの、おれのパターン。

最近のスーパーのできあいは、美味しい物が多く思える。

魚は苦手だから肉類ばかり、かごに放り込んでいくが、買っても食べずじまいで、

最終的には、捨てるはめになることがほとんどだ。

その点、おかあさんはさすがである。

買い物上手だし、すべての食材を計算して調理し、無駄なことはしないだろう。


たまぁにのスーパーだし、そんなに混み合ってもいないので、店内一周をしてみよう。

野菜売り場、肉類、など順序良く歩く。

その先に、さっきの男の子が地面に寝転んで平泳ぎみたいな動きをしている。

またこの子か・・・。

靴は投げだされているし、生の魚でもかじっておかしくなったのかよ。と、内心思った。

スーパーも、こどもにとったら遊園地なのかな?

他のこどもたちも走り回ったり、おかあさんについて歩いたりと、さまざまである。

おかあさんたちは、買い物仲間や顔見知りと立ち話しをしている場面も多かった。


調味料コーナー、麺類コーナーと歩き、お菓子のコーナーに出た。


えっ!また、あの子だ。

人気キャラクターが描かれているお菓子の一角に座り込み、必死にお菓子をあさっている。

瞬間移動でもしているのか?やたらと目の前に現れる男の子に言いたくなったりもする。

男の子の後ろには、もう少し小さな女の子が立って、男の子を見ている。

どうやら、女の子の欲しいお菓子がある場所に、男の子が陣取っていることは理解できた。

てか、男の子がわざと女の子の邪魔をしている。

後ろの女の子をチラチラ見ては、その一角をガードし独り占めに満足しているように思えた。

女の子は静かに待っている。でも、少しずつ悲しい顔になり最後は泣き出してしまった。

声は出さないが、静かに涙を流す女の子が、かわいそうで仕方がない。

涙しながらもその場を離れない女の子。

よほど、欲しいのがあるんだろう。黙って我慢する姿を見て、この子はいい子だなと感じた。


女の子に近寄り話しかけてもいいのだが、この時代へんに誤解を受けることもあるのでとどまった。

さっきの消毒液もそうだが、あまりにも行儀の悪い男の子には指導が必要だとも考えていると、

後ろが騒がしい。

レジで、お婆ちゃん同士が揉めている。そう、あのふたりのお婆ちゃんだ。


あなたね、順番は守らなきゃだめだよ。

さっきも順番を守らないし、こどもに笑われるよ。と、説教をしている。

やっぱり、横入りしたお婆ちゃんに怒っていたんだな。と、わかった。

確かに、後から来たお婆ちゃんは常識がない気もする。周りを見てないというか気にしないタイプだ。

言われたお婆ちゃんは、気にもせず(聞かぬ存ぜぬ)で、割り込みしたままだった。


不思議だったのは、周囲にいる人間は(我関せず)であったこと。

どの場面でもそうだけど、人間ほど冷たい生きものは、この世にはいないと改めて思った。


注意を聞かないお婆ちゃんに(あなた聞いてるの?)と怒り続けるお婆ちゃんだったけど、

隣のレジ空いてるよ。と伝えて誘導してあげたら何とか落ち着いた。

ただ、空いてたレジには、男性従業員がボーッと立っているだけだったことには腹が立ち、

声かけてやれよ!一喝してしまった。

どこにでも必ず居るもんだけど、言われなくても動けと言いたい。

言われても動かない人間もいるが、本当に困ったものだ。


あっ!落ち着かないのは、おれだった。

女の子はどうしたろう。お菓子コ―ナーに戻る。

状況は変わらないが、男の子は両手を広げて(ここにはいれない)みたいな邪魔をしていた。


このガキ!思わず吐き捨ててしまう。

静かに男の子と女の子の間を歩いた。

おれの左側には男の子が、お菓子エリアに向き両手を広げ座り込んでヘラヘラ笑っている。

右側には女の子が、悲しい顔で泣いている。

この状況に立たされた自分が出来ることはあるのだろうか?

と考えた時のおれの行動は、良くも悪くもひとつである。


ふたりの間を通り過ぎると同時に、持っていた買い物かごを男の子の頭に軽くぶつけた。


これは絶対に真似をしないでください。と、自分に言い聞かせながらの行動だ。

男の子は振り向き(はぁ~?)みたいな顔で、痛っ!と、頭をなでている。

なにが起きたんだ?の顔が、かわいく見えたのがおかしく思えた。

それを見た女の子は、クスッと少し顔が微笑んだ。

これで少しは男の子も勉強になったろう。

振り返り見てみるが、男の子は懲りもしない様子である。


女の子に向かって、あっちにいけよ。と言って、ぴょんぴょんジャンプをして挑発をしている。

この子は将来、大物になるだろうと期待は出来る。

そこで、期待の2発目をお見舞いしようとおれはUターンして、買い物かごで頭をドンッ!

今回は、女の子の分でのドンッなので、さっきよりは多少強めにいった。

今度ばかりは男の子も正面を向いていたので、現実を理解したようだ。


いてぇぇぇ~。頭をなでる姿は、またまたかわいく思えるのだが(絶対に真似はしてはいけない)。

いてぇんだよ。チキショー!と、切れた小学生は、なにを思ったか、菓子の袋を破り食べだした。

ここまで来ると、既に大物でしかない。

しかし、購入もしていないお菓子を開封して食べていることには、注意が必要だ。

おれは、更にUターンして男の子に向かい歩き出すと同時に、男の子は立ち上がり

おかぁ~。おかぁ~。と大声でカラスのように、吠えている。

とりあえず、ここでも変な誤解を受けるのも嫌なので一歩引き、離れた場所で様子を見ることにした。

女の子は、このやり取りの間に好みのお菓子をゲットして、立ち去るのは確認している。


カラスに呼ばれて飛んで来たおかあさんを見て眠っていた記憶が蘇る。思い出したぁ~。

コンビニで、こどもをかごと一緒に引きずってたTシャツのサイズを間違えているおかあさんだ。

服装も同じだから間違いない。

おいっ!まさか、開封したお菓子を棚に戻さないよな。と、疑ってしまう。

コンビニでも、お菓子があった場所に戻さず、適当なところに投げ置いたおかあさんだからである。


相変わらず、迫力がある。なぜか今日は一段と大きく思えるから怖い。

Tシャツも、もうすぐはじけちゃいますよ。と、おれは思った。

一番大きいカートに品物が山盛りで、カートのサイドにも色々かけてある。

Tシャツも、カートも予想外の出来事に苦労をしているはずだ。


男の子はおれを指差し、おかあさんに何かを訴えているのはわかった。

おかあさんが、おれに向かって歩き出した。

一瞬だけど、店が揺れた気がしたが、予想にもしなかった事が、ここから始まる。


うちのガキがなんかした?

えっ!

スーパーは戦場だ。







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