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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約破棄された悪役令嬢ですが、元魔王なので人間界滅ぼす

初投稿、思い付いたままに書いた短い殴り書きになります。

人間側からしたら残酷な、魔物から見たらコメディな話。



「アデール・フォンタニエ!!貴様の悪逆非道さは全て把握している!!何人からも貴様の行いを聞いており、中でもここに居る聖女の力を持つ令嬢、シャルロットへの態度は最も聞くにも耐えぬ非道な行いをしたのだとな!

貴様との婚約は破棄とする!また、今までの罪を考え斬首刑とする!!」


此方を指さし決まったとばかりにキメ顔を晒す頭の悪い王子に、その腕に震えたフリをしながらも、私を見下し口元には笑みを浮かべて勝利を確信する馬鹿な女。そして影から私を嘲笑う駒共。



あぁ、楽しくも面倒な遊びはここまでのようだ。


今で無ければもう少しは生き延びて居れただろうに。

学園の卒業パーティ、真っ黒なドレスを身に纏いその上げた口角を隠すべく扇子を開いた。


「ふふ、何人からも聞いている??あらあら、可笑しいわ。だって


私のした事を知っているものは全員殺したもの」


目を細めて対面する王子達を見る。先程までの嘲笑いの賑やかさはどこに行ったかのように、音が消える。


「な、にを言っている、?」


ぬるぬる動く舌はどこへ行ったのか、言葉を詰まりながら問いかける王子に、知ってるのじゃないのか?と不思議に応えた。


「辺境の地の生き残りかしら?それとも麦が特産のあの村の生き残り?それともそれとも、あぁ、どこかなんてもう覚えていないわ、何百人かは殺したもの。ただ、逃がした記憶なんて無いのだけれども」


ちらりと目線を横にズラせば、小さな悲鳴を上げ群衆共は身を後ろへと下げる。いつでも逃げれる様にと。無駄なことを


「それに、そこの令嬢にも何かしたようね?何かしているとするのなら、とっくに死んでいるハズなんだけれども」


困った様に息を吐く。態々1人のために時間を掛けて何かをするなんて、私はそんなに労働的では無いのだ。


「一体何を、戯言を…」

「いや、待て、確かにその地はここ数ヶ月で皆殺しの事件が」

「まさか、っ!?」



扇子を畳んだ音がパチッと響いた。












私が"私"に気付いたのは12歳の頃だった。


「いや、魔王だったんじゃん私」


高熱に魘されて頭のネジが飛んだのかと思ったが、前世の記憶が全て呼び起こされた。確か私は勇者と…やり合って死んだはず。なのにまさか人間の体に入り込むとは。


「もしや魔力も」


と思い、試しに手に力を入れれば、黒い炎が現れる。瞑想するように目を閉じ、体内の魔力の流れを感じれば目をぱっと開いた。


「力が残っている。いや、ちゃんと受け継いでるっと言えばいいのか…?」


ちゃんと制御まで出来る魔力に困惑しながらも、この"世界"の事を思い出す。

確かこの世界では大昔(幾年経ったかは明記されていない)に勇者が命と引き換えに魔王を倒したと言われており、それ以来この世は人間同士が戦争する以外では平和の世となっている。

命と引き換えに、と言うのが本当の事であれば此処は私が居た世界とは別の世界なのかもしれない。私と勇者の一騎打ちは本当に下らない些細なものであったからだ。


「元気に寿命を全うしたかな、アイツは」


敵同士であったにも関わらず最終悪友のようなものになった相手を思い出して少し表情を緩める。アイツが居たから世を支配するのが、人間を滅ぼすのが面倒に…惜しくなったのだ。



だが今はどうだ?過去の記憶を引っ張れば幼い頃から駒として政治の為の道具としか扱わなかった両親、近付いては媚びを売り裏では卑しい考えしか脳の無い周りの人間共。皆表面だけは上手く繕ってるが、その中は腐臭の漂う肉しかない。


「今回は、要らないんじゃないか?人間なんて」


人間として生きていた記憶を辿っても、アイツのような人間は居なかった。アイツ程の馬鹿は居ないだろうが、それに近い人間でも居れば寛容にいようかと思うも今のところ該当は無い。



「よし、人間を滅ぼそう」



先ずは家の人間を肉だけを残した傀儡にした。

とっとと全てを滅ぼしても良かったが、それだと面白味がないしこの先退屈で死んでしまうであろう。だから自分が婚約者と結婚させられる時まで、周りから堕としていこうと考えた。


家族は社交界での必要な存在、だからといって家族ごっこなどする気も起きなかったので、使用人共々傀儡にし、必要な時だけ動かした。


また、魔力を感じ取った魔物が様子を見に来たため、捕まえて過去の事を根掘り葉掘り聞いた。

どうやら今この世界にも魔王という存在が居るらしいが、人間をどうのする気がないらしく静かに暮らしているらしい。殴り込みに行こうかと思ったが、先に人間どうにかしてからにしようと足を止めた。変わりに捕まえた魔物に伝達を任せれば、現魔王からは手伝う旨が返された。協力的ならそれはそれでいい。


それから、魔物で連絡を取りながら隣国を潰したり村を潰したり、人間のように暮らしてみたり実のある数年を過ごし



そして今を迎えた。












「あ、あなたが魔王なのね、っ!?」


何故か驚愕の表情を浮かべながら、確認をする令嬢と言われていた女。王子に支えられながらも、豊胸に手を当てキッと此方を睨みつけた。


「私は聖女の力を持つもの、アナタからこの国を救ってみせるッ!!」


「私が魔王かどうかは、試してみては如何かしら?」


自信満々の言葉にそう返せば、またも勝利を確信するような笑みを浮かべてから両手を握り祈りを捧げる。


「この世を護る力を私にお与え下さい。そして目の前の悪なるものに裁きを、-----!!!!!!」


女から白い光が漏れ出し、部屋全てを眩い光で包み込む。性格がどうであれ、聖女の力を持っていることは本当のようだった。





-----と言っても、私には効かないのだけれど


「ッかは、!?」


白い光が収束し、集まった光は女の胸元で弾けた。

と同時に、聖女は吐血をして膝から崩れ落ちる。


「シャルロット、!?」

「な、…んで…??」


「貴女の力は弱過ぎるんだよ、聖女サマ」


髪を結んでいた紐を取り、膝を着いた聖女を嘲笑う。


恐らく、他の聖女に比べれば力のある方だろうシャルロット。だが、この平和な時代が幾年と続き、魔物相手にしか使えない聖女の力などとうに弱体化していた。現役時代も聖女などと会ったことは無いが、その時代と比べれば雲泥の差があるだろう。

浄化し切れない力の消耗と入り込む闇の魔力に体内が一瞬でガタついたのだ。

そんな事が起こってまで立ち上がる勇気など彼女にある訳もなく、やっと表情が恐怖に染った。


「ど、して…なん…で…ゲ、ーム…だと……この呪文で、…魔王…も魔…物……も滅んで…、ハッピー、エンド……なのに…ッ」


「ゲーム?ハッピーエンド?私にはよく分からないけど、そんなすっくない魔力で魔王魔物全て滅ぼせるって考えてる頭がハッピーなのは分かった」


にこっと悪意のない笑みを浮かべれば皮切りに、ガヤだった人間達は悲鳴を上げながら我先にと扉から逃げ出した。

今更逃げたところでもう遅すぎるのだけれど。


「こんな事ッタダじゃ済まされないぞ!?」


「ははは!!今更??」


息が小さくなる女を抱えて、正義感の強そうな顔で此方を睨みつける王子。逃げ出さなかった取り巻きの連中も睨みつけてはいるが、小さく震えているのがよく分かる。


「なぁ、そんなこと言うならとっとと捕まえるよう取り巻きや衛兵に言えばいいのにさ、なんで何も指示を出さないわけ??」


「ッ衛兵達、この悪女を捕らえろ!!」


そう指示を出すものの衛兵は動かず壁側で立ち尽くすだけ。王子は怒りながらもう一度指示を出すものの、動くものは1人たりとも居ない。


「おい、!?」

「……な、なぁ、可笑しくないか?」

「…この現状でどうして最初から衛兵が動かない…?そして、どうして



国王と王妃様は逃げていない、?」


「ち、父上……?母上………??」


震えた声を零しながら、その姿を見ようと赤いカーペットの上に続く段が高い箇所にある椅子を視界に収める。

2人ともただ前だけを向き、その表情は何も浮かべず瞬きもしない。

……まるで傀儡の様だ。


「!?父上!!母上!!」

「きゃあああ!!!」


王子が2人に駆けつけようとした所を、1人の女生徒が悲鳴をあげて大広間へと戻ってくる。

その後ろの人物を確認すれば、驚愕に目を見開いた。


「お助け下さいッ!!殿、ガッ」


言葉が終わる前にその首は胴体と離れて床に落ちる。


それを切った剣を振るい血を落とし、鞘に収めると私の方へと戸惑いなく歩み寄った。


「………お前、」


「よっ、久しぶりだな魔王サマ。いや、今はアデール・フォンタニエって言うんだっけ?アデール、…アデル…アル…??アルって呼んでいいか???」


「………そこそんなに略す?……そんなことより、まさかお前が現魔王だとはな」


「現魔王、だと、!?」


爽やかな笑顔を浮かべるベビーフェイスにはちゃんと角が生えており、その耳は魔族を象徴する形をしていた。

が、変わらずの雰囲気に思わず力が抜けそうになる。場面を分かってるのかと横目に睨めば不思議そうな馬鹿面を晒した。


「どうして急に、そんな…お前が魔王、なのか……人間を滅ぼすつもりか、?」


「アルがしたいって言ったからな。だから、人間は今日滅ぼす」


「名前呼んでいいって言ってないけどなぁ?」


肘で脇腹に1発入れるも、無駄に鍛えられた体は臆することもなく、ただ言葉だけ戯れのように笑いながら痛いと声を上げた。そんなこちらの緩やかな馴れ合いにも気が向かないのか、絶望した顔で此方を見る王子とetc。




「あーあ、ほんとう勇者サマでも居れば、もっとマシな結末にでもなっていたかも知れないのにね」


後はただの殺戮だった。

せめてものと剣を向けあったが、聖女の力でもどうにもならなかった元魔王に、更に現魔王が相手となれば実戦経験も無いひよこ達が勝てるはずもなく、それでも即死するよう現魔王はせめてもの優しさでその身体に剣を入れた。


「…ディ、お………ン…………?……」


「おや、まだ生きていたのか」


とっくに死んだと思っていたはずの女がぴくりと動いた。なけなしの力で回復しているのだろうか、と言っても体全体が動くことは無いようで、顔だけ動かして現魔王を目に収めた。


「ど…………て……………ゆぅ…………ゃの…………あ…な………が」


「ね、私もそう思うよ。」


途切れ途切れの言葉に微妙な顔を浮かべて頷く。


「てか、その力ってもしかして再生し続けたりする?だとすると面倒だなぁ」


ふっと息をつき女の前に膝をつく。

何をと息が浅いながらも怪訝な表情を浮かべる余裕のある顔に仮説が正しいかもなぁと溜息をついた。


「生き残られると面倒だから、早くその力止めてね?」


「は、?……ぐ、あぁア゛ア゛ア゛ア゛ぁアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


言い聞かすように言えば魔力を流し込み体内の核を探す。聖女としての白い力のせいか苦痛を感じるらしく、発狂した声が上がった。耳障りなので早くやってしまおうと探れば、魔力の溜まる部分を見つけたのでそこに魔力を特大に流し込み内側から破裂させる。


「ギ、ァ"」


汚い声を上げて、息が止まったのを確認した。


「終わった?」

「終わった。」


血の海に佇む現魔王は、魔王とは思えぬ爽やかな笑みを浮かべてこちらに手を振った。














「魔王様万歳!!!」

「大魔王様万歳!!!」



「………だる」


「はは、そんな事言うなよ!折角慕ってくれてるんだからよ」


暫くして、逃がしたところで復讐を生みそうな人間は女子供問わず殺し、人間に捨てられ人間を捨てた人間のみ半魔物として生かし、人間の殲滅を完了した。


建築物は全て更地に変えて、新たなる村を、新たなる国を作り上げた。ハイスペックな魔物たちにかかれば、1ヶ月も経たずに全ての作業を終えた。


「こういうノリが嫌で私は1人だったのに」


「確かに、出会った頃は枯れた地のボロ小屋に一人でいたもんな」


懐かしそうに昔を思い出す現魔王ことディオンに、質のいいソファーに身を沈めながらチョコレートを1口放り込み、呆れた顔を浮かべる。


「それで?どうして"勇者"のお前が"魔王"に?」


「正義には悪がいないと意味が無いんだ。俺はあの後帰ったところで囃し立てるだけ立てられて、邪魔になる」


「だから魔王になる道を選んだと?」


「それに、アルが居ないなら俺は勇者をやる意味が無いからな」


すごい口説き文句だこと、と返しながら従者の入れたアールグレイティーを啜れば嬉しそうな雰囲気だ漂った。


「まぁ、まさか飲み比べの最中に頭打って死ぬとは思ってなかったけど?」


「あ、あの日はたまたま調子が悪くてだな」


「たまたまで死なれたら俺辛いんだけど?」


「それは………すまん?」


「次は無い、そもそも作らせないけど。

まぁ、許す」


隣に座り、同じようにアールグレイを飲むディオンにむっとして顔を逸らす。謎の上から目線の言葉に歳上ぶりやがってと小さく悪態を漏らせば思い出したかのように声を上げた。


「そういえば飲み比べ、俺の勝ちでいいよな?」


「はぁ?なわけ」


「だって途中で死なれたし、実質勝ちだろ」


「だからあれは体調が悪かったから、!!!

んのやろ、酒だ!酒を持ってこい!

あれは無効試合だ、もっかい勝負すんぞ!!」


ソファーから立ち上がり、従者に声を掛ければ慌てて用意しに部屋を出てった。

それを確認して腰を下ろせば、楽しくて仕方がないとばかりの声が聞こえた。


「いいけど、今回は死ぬなよ?このソファー柔らかいから頭打たないとは思うけど」


「死なねぇって、だからあの時は体調が良くなかったからって、本当にお前いつか殺すからな」


「って言って、人間時代も殺さなかったくせに」


「あれはお前が仲間を連れず一人で乗り込んで来た馬鹿だったからだ」


ボロ小屋にノックをしてから入ってき、飯中だったこちらの用意を待ちながら茶を飲んでいた馬鹿を思い出して、わざとらしく大きく溜息を吐く。

出会いから向こうのペースに飲み込まれていた。元々人間滅ぼす気が多少しか無かった私が、完全無になったのはコイツのせいだった。


「ほーんと、馬鹿だなお前も」


「……なんだかんだ、俺と居てくれるアルも馬鹿なんだと思うが」

「あ"?」


「あ、いや。俺はアルと」


新たな言葉を紡ごうとした瞬間に従者から酒の用意ができたとの声掛けがあった。

なんだ?と続きを催促するも特に追加の言葉は紡がれず笑顔で流されたので、怪訝な表情を浮かべてしまったが、テーブルに並べられた酒に目を輝かせた。


「やったー、久しぶりの酒だー!」


「あんまり飲みすぎないようにな?アル」


「私本当はザルだから、そっちこそ急性アル中になる前に根を上げろよ?ディオン」


2人して笑いながらグラスを付き合わせれば、従者から程々にと声が掛けられた。


閲覧頂き有難うございました。

ディオンとアルに恋愛感情があるかは不明です。親友以上恋人未満くらい。

元魔王は元々女子だけど、口調が荒い。令嬢の皮を脱いだら元に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 容赦ないところが素晴らしい。
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