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運命への反逆者

更新ペースは未定です。

「ミリアリア・フェルト。お前との婚約は此処で破棄する!我が生涯の伴侶はこの、アイナ・フェルモンドだ!」


 あぁ……『また』ですわね。そう思うと同時に周囲の喧騒が、風景が全て停止した。無論、わたくしも動けませんが『いつもの』のことですので、無表情で目の前の殿方を見つめる。


 キラ・アースラ。わたくしの生まれた国、アースラ国の第一王子であり将来の国王にして旦那様だったお方。わたくしの目の前で、勝ち誇った様な顔をしながら隣に立つ桃色の髪をした美しいというより可愛らしい印象を抱く、アイナ・フェルモンドの肩を抱きながら、わたくしに指を突きつけています。これで何度目の光景でしょうかね?わたくし、心の底から貴方様を愛していましたのよ?何度も、何度も繰り返して、やり直すくらいには。


『だが、その献身も想いも伝わる事なく、お前はこの結末しか辿り着けていない。さぁ、どうする?捨てられる運命を生きる憐れな娘よ。再び、やり直すか?オレはそれでも構わぬぞ』


 全てが静止した世界で、背後から声を掛けながら追い越し、わたくしに振り向く白髪赤目のわたくしの『共犯者』はその顔に愉しげな笑みを貼り付け、手を差し出してきました。彼と出会ったのは、この繰り返しが始まったある日のことでした。






「はぁ……はぁ……どうしてこのわたくしが……捨てられなければならないのですか……キラ様……」


 婚約破棄を言い渡され、半狂乱になったわたくしはそのまま、キラ様に詰め寄りました。何故と?何故、わたくしを捨てるのかと。ですが、今まで全く見た事のない顔でキラ様はわたくしの頬を叩いたのです。


「……え?」


「お前への気持ちなど失せた。それだけの話だ、今、我の気持ちはアイナと共にある」


 そう言ってキラ様は、わたくしに愛を囁いた口でアイナへと口付けをし愛を囁くのです。裏切られた……その気持ちから溢れ出す涙で景色が歪んでいきました。自らの意思で立っている事も出来なくなったわたくしは、その場で崩れ落ち下を向きながら床を涙で濡らしました。


「ミリアリア」


 泣き崩れたわたくしを見て、気持ちを戻してくれたと何も知らぬ少女の様な気持ちで顔を上げたわたくしは、キラ様のわたくしを見ていない興味すらない。道端の石でも見るような目を見て、本当にこの方の心にわたくしの居場所は無いのだと知ったのです。


「床を汚すな。要件は伝えた、これ以上恥を晒す前に去れ」


「……はい」


 ふらふらと立ち上がり、王宮を出たわたくし。そこから全てを失うのはとても一瞬の事でした。どうにか家に戻ったわたくしを出迎えたのは、怒り心頭のお父様でどうやら婚約が破棄された事を耳にした様です。フェルト家の看板に泥を塗ったと怒られ、反論するわたくしの言葉など全く聞いてもらえず、気がつけば家を追い出されただのミリアリアになっていました。それからと言うもの、ただの令嬢であったわたくしが労働を出来る訳もなく、一ヶ月もすれば売る物もなくなり、国を追い出され森の中で行き倒れでいました。


「どうして……どうしてですか……キラ様」


 意識すら朦朧とする中でわたくしは、愚かにも気持ちを捨てられず愛しい方の名前を呼んでいました。ただそれだけで幸せな想い出に浸る事が出来て、辛い今を忘れられるからと。今に思えば、自分がどれだけ愚かで無垢な少女であったか笑えてくる程です。そして、そんなわたくしの前に『彼』は現れたのです。気配も、音もなく突然そこに現れた彼は、しゃがみ、わたくしの髪を掴んで持ち上げながら視線を合わせました。


『よぉ、捨てられる運命の娘。随分と美味い絶望をありがとう。礼と言っては何だが、何か望みを叶えてやろう』


 意識が朦朧としていたわたくしは、目の前の彼がどんなモノなのかすら分からず、望みを口にしました。あの日々に戻りたいと。キラ様に愛され、幸せな未来を夢見ていたあの頃に。そう告げると彼は高笑いをしながら、言ったのです。


『良いだろう。お前を過去に戻す。だが、忘れるなよお前は捨てられる運命にあるのだから』


 その言葉を最後にわたくしは意識を手放し、気がつけば家の自室で目が覚めました。


「夢?……いえ、それにしては妙にはっきりとしていましたし……雑草の味もしっかりと覚えています……」


 困惑しているとコンコンっと扉がノックされ、お付きのメイドが入ってきました。どうやらいつもなら起きてくるわたくしが起きてこないのを心配した様でした。大丈夫と伝えるとそれは良かったですと微笑みながら部屋を出ていきました。その日はずっと強い既視感と不安感を抱きながら生活していると、キラ様と会う時間になり王宮にある中庭に向かいました。そこには、既にお茶の準備がされており綺麗に咲いた花々の先にキラ様が待っていました。


「ん。珍しく寝坊をしたそうじゃないか。夜ふかしでもしたのか?ミリアリア」


「え、えぇ。まぁ、そんなところです。不必要なご心配をお掛けして申し訳ありませんキラ様」


 わたくしが頭を下げるとキラ様はそっとわたくしを抱きしめてくれました。心臓が高鳴ると同時に、夢で見た光景が鮮明に思い浮かび、愛しさと不安感がぐちゃぐちゃに入り混じり思わず、わたくしは泣き出してしまいました。


「ど、どうした。いつもの君らしくないな……全く、怖い夢でも見たのか?」


 驚きながらもわたくしの頭を撫でてくれるキラ様。あぁ……やっぱりアレはタチの悪い悪夢なんだとこの時のわたくしは思ったのです。それから、既視感はあるものの愛しい生活を送っていました。このまま、夢は夢だったと思える日が来るんだって危機感のないわたくしは漠然と思っていたのです。


「ミリアリア・フェルト。お前との婚約は此処で破棄する!我が生涯の伴侶はこの、アイナ・フェルモンドだ!」


 だから、夢が現実になるなんて思っていなかったのです。夢と同じ結末を辿り、わたくしは再び『彼』と出会いました。


『折角、戻したのに何も変わらずに生きてりゃそうなるわな。まぁ、どう足掻いても無理だろうがな』


「……どうして……わたくしはこんな目に……」


『それがお前の運命だからだ。初めて会った時も言ったはずだ、捨てられる運命を生きる憐れな娘とな。

 この物語において、お前の役目はアイナ・フェルモンドの引き立て役として王子に捨てられ、物語の片隅で死に絶える憐れな娘。それがミリアリア・フェルトに与えられた筋書きってやつさ』


 ……ふざけないでください。そんな物語、わたくしは認めない。認めてなるものですか。わたくしが生きる物語はわたくしが決めるのです。そんな誰かに決められた役割なんて認めません!


『クハハ!ならば、どうするというのだ?惨めに地面に這いつくばる憐れな娘よ』


 決まっています。例え、何度も繰り返そうともこの気持ちが変わる時が来るまでわたくしは過去に戻り続けます!そう宣言したわたくしを彼は、悪魔の様な笑みを浮かべた。


『Excellent!!あぁ、やはり人間はこうでなくてはな!!だが、まだ足りぬぞ。もしその気持ちが変わればどうする?』


 そう問われた事を思い出しながら、わたくしの意識は今に戻る。目の前でわたくしに手を差し出す共犯者。失敗する度に時間を巻き戻し、いつからか共に歩いてくれていた共犯者の手をわたくしは取り、口を開く。


「この世界を滅ぼしましょう。わたくしに理不尽な役目を背負わしたのです。わたくしの悪意で滅んでも、良いでしょう?」


 もはやキラに対する愛は無くなった。ならば、あの日の約束を共犯者と共に果たす時です。共犯者は、わたくしの手を握りながらあの日の様に、いや、それ以上に悪い笑みを浮かべ答えるのです。


『All perfect!!正しく、オレが望んだ人間の姿だミリアリア。その表情もよく似合っているぞ。お前のとなら美味い酒を飲めそうだ!!』


 そう言われ、わたくしは自らの頬に触れる。わたくしの口角は目の前の共犯者と同じく三日月の様に釣り上がっていた。あぁ……これからが楽しみですね。共に世界を滅ぼしましょ?わたくしの共犯者。


『あぁ。約束しようオレの共犯者よ。役目を強いる世界など──』


 自らの意思で選択し生きる事が出来ない世界など──


『「──存在する価値がない」』

初めて書くジャンルなので、感想や評価など待ってます。

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