表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と記憶のオルロージュ  作者: 翔ぶ唐揚げ
プロローグ
1/27

プロローグ

「おーい!早く来いよ!」


「も~、置いてっちゃうよー?」


兄のバリーと妹のライラが急かす様に僕を呼ぶ。


「待ってよー!今行くから!」


早朝の肌寒さに少し身体を震わせながら、荷物を抱えて二人を追いかける。

今日は村の外の湖まで冒険(という名のピクニック)に行くのだ。


村の大人たちからは何かと『外は危険だから』と遊びに行くのを止められていた。

止められるほどに子どもの好奇心は抑え難いもので、

僕たちは朝早くにこっそり抜け出すことにしたのだった。


「勝手に出ちゃって大丈夫かな…。」


「どうした?もしかして怖いのかー?」


兄さんはそう言って不安がる僕をからかう。


「大丈夫だって!俺はレベル高いしな!」


「ふふっ、私だってセイ君よりレベル高いし、最近は魔法も覚えたんだから!」


そう、二人とも僕よりレベルが高い。

というか何故か僕はずっとレベル1のまま上がらない。

いざとなったら逃げることしかできない自分の不甲斐なさに気落ちしつつ、二人の後を追う。


村から少し歩き、小高い丘を登る、すると木々に囲まれた湖が見えてきた。

大した道のりでは無いものの、得られる達成感はなかなかなものだ。


そのまま丘を下り、特に何事もなく湖に到着した僕たちは、

水辺でお弁当を食べたり、兄さんと剣の稽古をしたりして過ごしていた。


「いいか?セイはレベル1で身体も小さいんだから、力で挑もうとするな」


そう言って兄さんは僕の力いっぱいの剣を片手で軽々と払いのける。


「そうだ、姿勢を低く、そして速く動くことを意識するんだ」


兄さんの重い一撃に何度も打ち返されながら全身に意識を集中させる。


稽古を続けていると妹のライラが近づいてきた。


「セイ君、見て見てー!」


そう言って手に持っていたのはいつも使っている僕の短剣だった。


「僕の短剣?」


「いいから抜いてみて?」


言うとおりにすると、その刀身に今までには無かった紋様があり、

淡く青色に光っていた。


「これって…。」


「そう!魔法付与覚えたの!私の雷撃付けたからお守りにしてね!」


そう言ってライラは屈託のない笑顔を向けてくる。


「ライラはすごいなぁ、ありがとう!大事にするよ。」


「えへへー」


ライラの頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。


「よーし、そろそろ帰るか。暗くなったらさすがに怒られそうだからな」


日が傾きかけた頃、村に帰ることにした僕たちはまた丘を登っていた。


そして、目の前の光景に思わず足を止めてしまった。


「村が…燃えてる…!」


「見て、あれ!」


「あれは…魔蟲か!」


魔蟲。

多足の虫の様な見た目で大きさは様々だがとにかく凶暴で、

対象が雌であれば種族を問わないという高い繁殖力が故に個体数が多い。


そんな全人類共通の敵とも言える存在が群れを成して村を蹂躙していた。


「逃げるぞ…走れ!」


兄さんそう言って僕とライラを引っ張るように来た道を引き返す。


「気づかれたか…!」


振り返ると、さっきまで立っていた丘の上に魔蟲の集団が集まっているのが見えた。


「二人はそのまま走れ!真っ直ぐ抜ければ町に行ける!」


「えっ…!兄さん!?」


「こういうのは長男の役目だからな…」


そう言って兄さんは立ち止まり、大剣を抜く。


「行け、セイ!今度はお前が守れ!」


僕はライラの手を引いてとにかく走った、走ることしかできなかった。


木々の間を抜け、湖畔沿いに反対側までたどり着く。

その時、向こう岸から大きな音を響かせながら木を薙ぎ倒し、それは現れた。


(…大きい!)


その巨体が一歩動くたびに振動がこちらまで伝わってくる。

そして何の躊躇もなく湖に足をつけた瞬間、湖面が凍り付いていく。


(このままじゃ追いつかれる…!)


凍った水面を足場に、そのまま真っ直ぐこちらに向かってくる。


「ライラ…ちょっと先に行ってて!」


僕は立ち止まって、引いていたライラの手を離した。


「セイ君!?」


「大丈夫!僕は足が速いから!」


頭を撫でながら安心させようとして、ぎこちない笑顔になってしまう。


「……必ず追いついてよ?約束だからね?」


「うん…わかった、約束。」


そう言って、ライラの走る姿を見届けて背を向ける。


ソイツは目前まで迫っていた。

よく見るとあちこちに傷があり、足は何本か切り落とされている。

そして、足の付け根の一つに見慣れた大剣が突き刺さっていた。


「兄さん…。」


『力で挑もうとするな』


兄さんの言葉を思い出しながら剣を抜く。


『姿勢を低く』


腰を落として姿勢を低く。


そして


『「速く!」』


地面を目一杯蹴りつけて、僕は一直線に駆け出した。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ