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第七十七話 演者勇者の結婚行進曲10

「まさか、貴公の様な凡人が、この私に説教を垂れてくるとはな」

 何処からともなく声がした。脳内に響き渡るような、不思議な感覚。

「誤解はするな、貴公を選んだわけでも、貴公が勇者なわけでもない。だが――貴公の言う事にも、一理はあった。私も長年扱える人間がおらず、何処か傲慢になっていたのかもしれん」

 誰が喋っているんだろう。でも返事をする口も動かない。

「だからそれに免じて今回は手加減をしてやった。普通に使えば貴公など即死しても可笑しくない。当然だ、私は聖剣、勇者のみが扱える剣。他の誰が扱える物ではないからな」

 どういう……意味だ? まさか、この声は……

「まあ、精々本物の勇者を、私を使いこなす人間が来るまで頑張るといい。その時まで、私はのんびりと、貴公の戦いを見物させて貰おう。暇つぶしにはいい、楽しませてくれよ」

 そう告げると、その謎の声は途切れた。そして――



「っ!」

 ガバッ、と目が覚めて、ライトは体を起こす。部屋は薄暗く、既に夜である事が察せられた。

「そうか……俺、あのまま気を失って……」

 ミコトを助けに社に突入して、ミコトを見つけて話をして、そのまま……そのまま?

「っ、そうだ、ミコトさんは――」

「ご安心下さい、無事ですよ」

 ハッとして見ると、部屋にリバールの姿が。

「皆様御就寝されていますが、一応この様な状況、場所ですので、私が代表して見張りとして待機しておりました」

 リバールの表情は穏やか。その穏やかな表情に、ライトの心も落ち着いていく。

「お疲れ様、ありがとう」

「先程まではレナさんも起きていらしたんですよ。……ほら」

「あ……」

 レナは椅子に座り、ライトのベッドに自らの腕を枕に寝てしまっていた。寝落ちしてしまった様子。

「エクスカリバーの影響でライト様がどうなるかわからない、最悪自分が止めを刺す、なんて言ってましたが、実の所は心配だったのでしょう。素直じゃないですから」

「うーん……勇者君……ついに手が六つに……」

「何の夢見てるんだよ……でも、そっか。ありがとう、レナ」

 寝言を言いつつも静かな寝息を立てるレナに、ライトは心からのお礼を言う。

「で、ミコトさん、無事なんだね?」

「ご心配なく。流石に多少の衰弱は見られましたが、命に別状はありませんでした。彼女も今夜はナナノさんのご自宅でお休みになられているはずです」

「なら、安心かな……」

 ふぅ、とライトは息をつく。――急遽ではあったが、真実を告げた。出来る限り背中を押した。ここから先は、彼女次第。でも、幸せになる事を諦めないで欲しい。誰もがそう願っているはずなのだから。

 ふと、立てかけてあるエクスカリバーに目が向く。特に変わった様子もなくそこにあった。――俺、あれ抜いたんだよな。

「……ふぬっ」

 手に取り、もう一度抜こうとするが、びくともしない。――それでも、大きな違いが一つ。

「電流が、流れない」

 最初に抜こうとした時から、抜こうとする度に電流が流れ、拒まれてきた。その現象が起きない。――少しだけ、認められたってことなのかな。

「ライト様は――」

「大丈夫……って言い方も変だけど、俺が別に本物の勇者になったわけでも、特別に選ばれたわけでもないってさ。そう言われたよ」

「言われた……エクスカリバーに、ですか?」

「うん」

 鮮明にハッキリと……とは言い切れないが、脳内に響いた声は思い出せた。恐らくはエクスカリバーの言葉であろう事も推測出来た。

「だから、俺のやる事はこれからもまだまだ変わらなさそうだ。頑張って勇者を演じ続けるよ」

 伝説の聖剣に叱咤された。それに恥じない演者勇者でいなければ。――ライトは気持ちを改める。

「私は――我々は、ライト様が本物でもそうでなくても、共に戦っていくという気持ちを変えるつもりはありません」

「ありがとう。俺も、どっちにしても皆を信頼してる」

 実際、もし自分が本物の勇者だったとしても、今の仲間達がいい。――そんな風にふとライトが思うと。

「お疲れ様です、先輩。交代しますよ」

 姿を見せたのはハル。その言葉からして、リバールの交代に来たらしい。直ぐに目が覚めているライトに気付く。

「申し訳ございません、起こしてしまいましたか?」

「大丈夫、その前から起きてた」

 真剣な謝罪をしようとするので、直ぐに制止させる。リバールも、大丈夫、という目線をハルに送った。

「それでは、私はお言葉に甘えてハルさんに後をお任せします。――ライト様、もう少しお休みになった方が宜しいかと」

「私も同意見です。今はお休みになられて下さい」

「ありがとう、俺もお言葉に甘えようかな。――あ、でもその前に、レナをベッドに運んであげたいんだけど」

「畏まりました」

 そんな感じで、ライトもそのまま、もう一度眠りに落ちるのであった。



「ふむ……」

 翌朝、火災現場となった社。今はエカテリスが連れてきた兵士が管理し、関係者以外立ち入り禁止となっていた。

 ニロフの魔法により、結果として消火は出来たものの、やはり時間を喰ってしまった様で、大部分が焼けただれ、損害が激しかった。修復……よりも、最早一度壊して建て直した方がいいんじゃないか、のレベルである。

 その現場で、ニロフは一人、早朝から調査をしていた。――と思ったら。

「あれ、ニロフじゃん」

「レナ殿」

 ひょい、と顔を見せたのはレナだった。

「どしたの……は野暮か。目的は同じだろうし」

「でしょうなあ。時間が経過すればする程分かり辛くなるでしょうし。――やはり、レナ殿も気になりますか」

「まあ、直接魔力をぶち当てた身としてはねえ。おかしいでしょどう考えても」

 レナは腕を組んで、建物を見上げる。思い起こされるのは、昨日の突然の火事、消火の難易度の高さ。

「まず、原因がわからない時点で、第三者の意図的な放火、それに近いやつでしょ」

「ええ。しかも魔力の放出を微塵も感じなかった辺り、何か道具を使っての発火でしょうな」

 自然と二人の考察、答え合わせが始まる。

「あれを道具でって色々やばいでしょ。神創結界三枚? そんな道具その辺にゴロゴロあったらビックリだよ」

「ですな。あれを持っている作れる人間はこの世界でも限られてくるでしょう。つまり、それをこの街の人間の誰かに渡し、使わせた人間がいるわけですな。……道具なら、何か欠片でも証拠があれば、帰った時にサラフォン殿に調べて貰えると思い、こうして探しているのですが」

「難しいよねえ。あれだけ燃えてたら」

「それを見越しての神創結界、というのもあったのかもしれませぬな」

 ふぅ、とニロフは溜め息。何処か駄目元な調査というのもあった。

「目的はミコトか社か、両方か」

「ミコト殿の線は薄いでしょう。彼女が勇者の花嫁だったとして、誰かにデメリットを与える要素は思い当たりませぬ」

「だとしたら社か。この社燃やした所、で……あー」

 レナの表情がそこで曇る。

「何だか嫌な仮説思い浮かんじゃったんだけど」

「恐らくは我も同じ結論ですな。……宗教絡み」

 コリケットの社は、この街独特の品。当然これ一つあれば他の宗教を掲げて大々的な活動はし辛い。昔からあればある程尚更。なので、

「この社さえ壊してしまえば、新しい宗教が入る隙が生まれる」

 という結論は「一応」導き出せる。……しかし。

「雑だし過激過ぎでしょ。はいそうですかでいきなり切り替わるかっての」

 レナの意見が最もではあった。全てが大味で、穴だらけの計画である。

「それはあくまで一般的な意見。実際の所、崇拝、心酔、そして洗脳――本当の極一部の宗教人は、常識の物差しなど持ち合わせておりませんからな。命を投げる事だって厭わないのでしょう。――少し確認してみた所、火災鎮火後、行方を晦ました町人が数名いる様子」

「そいつらが下っ端だとして、そいつらに道具を与えて、好きにさせた大元がいる」

「しかもあの規模の道具を平気で、です。――何処の宗教か知りませんが、行き過ぎにも程がある。これでもしミコトさんが亡くなってしまったら」

 計り知れない悲しみと、絶望が街を――ライトを、襲っただろう。考えるとやり切れなくなりそうになる。

「そういう意味では、今回はライト殿のお手柄と考えて宜しいでしょう。偶然とは言え、エクスカリバーの力を引き出したのですから」

「引き換えに、勇者様がその宗教の陰謀を阻止した、っていう事実が残っちゃったけどね。――向こうが信じてるのは英雄でも勇者でもない、神様だよ。最悪、私達はそれに喧嘩を売ったことになる。そういう人達との揉め事が、ある意味モンスターよりも厄介だと私は思うよ」

「まあ、可能な範囲で何処の宗教だか調べるようにして……こちらからは迂闊に手は出せません。しばらくは静観ですな。向こうも何もしてこなければそれまで」

「何かしてきたら?」

「潰しましょう。――我は神も悪魔も信じておりませぬ。我が信じるのは、主から受け継いだ想いと、仲間だけですから。それを汚すようであれば、躊躇う理由は我にはありませぬからな」

 あっさりとハッキリと断言するニロフ。レナとしては、好感が持てる意見だった。

「我に確認などしなくても、レナ殿とて同じ意見をお持ちでしょう?」

「そんな立派なもんじゃないよ私は。――私は、勇者君を守るだけ」

 そう言って、レナは軽くおどけてみせた。

「さてと。――我はちょっと行く所が出来ましたので、先に失礼致します」

「行く所?」

「ええ、静養中のライト殿の代わりに、ちょっと」

 そう言って、ニロフはレナに自分の手をかざして見せる。そこには――



「今まで、騙し続けて、本当に申し訳ありませんでした……!」

 コリケットの中心の広場に、出来る限りの町人を集め、ミコトは頭を下げた。

 ライトに助けられ、ライトの言葉を受け、一晩考えて出した答え。それは、町人に全てを告白し、謝罪するという物だった。罪を自分で裁くのではなく、裏切る事になる大切な人達に判断して貰おう。その結果、見放され、不幸になるのなら、それこそ全ての答えじゃないか。――そう、心に決めてこの場に立っていた。

 頭を下げ続けているミコトを見て――町人達は、顔を見合わせた。

「……頭、上げてくれ、ミコトちゃん」

 そして、その答えは直ぐに出た。話し合うまでもない、全員が一致していた。代表して、町長のヌドが口を開く。

「ごめんなミコトちゃん。謝らなきゃいけないのは俺達の方だ」

「え……?」

「俺達、薄々は勘付いてたんだ。ミコトちゃんは、神官夫婦の娘さんのミコトちゃんじゃない、って」

「!?」

 衝撃の告白であった。――前から、気付いてた……!?

「具体的証拠は何もなかった。でも違和感は何となくあったし、八歳の時に社に戻るって言い出した時もそうだし、何より……神官夫婦なら、そういう事をやりかねないな、って」

「そんな……なら、どうして……!?」

「ミコトちゃんが一生懸命、あの社を守ろうとしている。神官夫婦の代わりに必死に社を守ろうとしている。その姿を見てたら、何も言えなくなっちゃったんだよ。本物かどうかなんてどうでもいい、今のミコトちゃんを助けてあげて、社が神官夫婦の代わりに守っていけるならそれでいいと思っちゃったんだ。でも、それがミコトちゃんを追い詰めていたなんて思いもしなかった……ミコトちゃんが、幼い時に正しい対応をしなかった、あの頃の俺達のせいだ。本当に、申し訳ない!」

 ガバッ、とヌドが頭を下げると、次々と他の町人達もミコトに向かって頭を下げた。

「っ、そんな、みんな止めて下さい! 私は、皆さんの優しさが嬉しくて、皆さんの温もりが暖かくて、家族を知らない私にとって、皆さんが……家族で……っ!」

 涙が混じり、言葉が続かない。泣き崩れるミコトを見て、町人達の目にも涙が見え隠れし始める。……と、そこに。

「ハベラ~ホベラ~ヘニャナナ~ブボラ~」

 響く怪しい祈祷呪文。ハッとして見れば、勇者の側近と思われる仮面祈祷師――ニロフが、呪文を唱えながらこちらへ近付いて来ていた。え、今大事な所なんだけど、と誰もが思った時。

「ミコト殿に、お渡ししたい物があって参りました」

 突然詠唱を終え、そう告げてきた。――普通に喋れるんだ、でも呪いのアイテムでも渡す気じゃないだろうな、という視線が集まる中、ニロフがミコトに差し出したのは。

「……髪飾り?」

 小さな花の髪飾りだった。恐らく子供向けの品であろうデザイン。

「今朝、火災現場――つまり、社の跡地にてで発見致しました」

「え……でも、見覚えがない……多分、私のじゃないと思います」

「でしょうなあ」

「え?」

「いや、我、一度会った美人の女性のオーラは脳内にインプットされるのですよ。この髪飾りからはミコトさんのオーラが感じ取れませんので」

 サラリと言うが、周囲の町人からすればますますこの祈祷師ヤバイ、である。美人のオーラを認識して所持品を見分けるとか。ある意味あの勇者の側近に相応しいかもしれない(ちなみに冗談ではなくニロフは本気で言っている)。……は、兎も角。

「つまり、ミコト殿以外で、あの社にこの髪飾りを残している可能性がある人物。――もう御一方の、ミコト殿の遺品ではないでしょうか」

「!」

「貴女に渡すのが相応しいと思い、お持ち致しました」

 ミコトはゆっくりと、ニロフからその髪飾りを受け取る。――火事の現場にあったとは思えない位、綺麗だった。

「死んだ人間の気持ちは、誰にもわかりませぬ」

 髪飾りを見つめるミコトに、ニロフは語り掛ける。

「でも、貴女を助けた人達は、貴女に苦しんで欲しくて助けたのではないと思います。貴女の心からの笑顔を願ったと思います。だから、これからは、貴女が何かに囚われない、心からの笑顔で生きていける道を。我も、それからこの街の人以外では一番貴女を心配していた我の「友」も、きっとそう願っています。――「友」に代わり、しっかりとお伝え致しましたぞ」

「あ、あのっ!」

「ハベラ~ホベラ~ヘニャナナ~ブボラ~」

 呼び止めるミコトの言葉を聞き流し、ニロフは詠唱しながら去って行った。残されたミコトは、もう一度、その手にある髪飾りを見る。


『だいじょうぶ、だよ』


「……!」

 何処からともなく、そんな声が聞こえた気がした。不思議な声、でも安心出来る声。

「私……私は……」

 気付けばミコトは、その髪飾りを自分の髪に刺していた。そして――決意を、固めた。



「申し訳ありません、勇者様……! ミコトちゃんの事は、諦めて貰えませんでしょうか……!」

 そして、事態も収束したので、一旦勇者一行は帰る事に。……と、そこに町長であるヌドを中心に、数名の町人が姿を見せ、そう願ってきた。

「勝手な事を言っているのはわかります! ミコトちゃんを助けてくれた恩人である貴方の意見を無視してしまっているのが失礼なのも重々承知です! ですが、我々コリケットの住人は、あらためて、ミコトちゃんと、あの社と、向き合ってみたいんです……! その時間を、我々に頂けないでしょうか!」

「あーうん、別に構わないぜ」

「そこを何とか、何でもします……って、え?」

 ハッとして勇者――ライトが演技するチャラい勇者である――を見ると、別に怒るわけでもなく、アッサリとそう言い切った。

「俺も別に今すぐ結婚したいわけでも子供が欲しいわけでもないし? 駄目なら駄目で全然いいのよ。ミコトちゃん笑ってくれるならそれでオッケーみたいな?」

 寧ろライトとしては願ったり叶ったりの展開である。ミコトを命がけで助けたことで、町人の信頼は得た。その街の方から、申し訳ないけど断らせて欲しいと願ってくる。それはつまり、当初の目的である勇者の評判を落とさずに結婚を破断にする、の正にベストな形に収まるからだ。

「俺はこいつらいれば全然満足よ。なあ?」

「そんな事言って、直ぐに可愛い女の子見つけて声かけちゃう癖にぃ。ちゃんと私達にも今回のご褒美頂戴ね?」

「私は、勇者様の想いを感じ取れればそれで幸せです」

 両手でレナとソフィの肩を抱き寄せつつ、ライトは心の中で万々歳。一時はどうなるかと思ったが、この様子からしてミコトと街の人との関係も大丈夫そうだし、何の後腐れもなく終わりそうだった。――やった、やり切ったぞ俺!

「あ、あの、これはお返しします……!」

 ヌドが差し出したのは、最初に渡した勇者チケット。流石に貰えないと判断した様子。だが、それをライトはグッ、と押し返す。

「いーっていーって、それ一杯俺持ってるから、あげるから。自由に使いなよ。それこそそれで社とか建て直しちゃいなよ」

 実際、社を一から建て直すのは大変だし、何よりまずお金が必要だろう。さり気なくその想いをライトは伝えた。

「勇者様……! ありがとう、ございます……!」

 ヌドも大変なのは重々承知していたのだろう、お礼を言いながら引き下がった。深々と頭を下げる。

「んじゃ、俺達帰るから。ミコトちゃんに宜しく言っといてー。マーク、ゴ―」

「はい。――出発して下さい」

 合図を出し、馬車が動き出す。こうして、ライトの結婚行進曲は、一旦幕を――

「勇者様ー!」

 ――閉じようとした所で、その声が。馬車を止め、チラッと見て見れば、ミコトが駆けながら見送りに来ていた。

「ごめんなさい、私、勇者様とは結婚出来ません! この街で、もう一度、社を復興させるつもりです!」

 わかっていたが、本人の口からそれが聞けると、安堵の気持ちになる。表情も晴れやかで迷いもない。ああ、良かった、本当に良かった……

「でも!」

 ……と思ったら、続きがあった。あれ、後何の報告だろう、と思っていると。

「私、勇者様とは結婚出来なくても、ライトさんとは結婚したいです!」

「ぶっ」

 とんでもない言葉が飛んできた。――え、ちょ、それってまさか。

「安心して下さい、事情を掘り下げるつもりも誰かに喋るつもりもありません! だから、私をいつかお嫁さんに貰って下さい! 社が復興して、私が離れても大丈夫な位になったら、必ず貴方の所に嫁ぎに行きます! それまで、待っていて下さいねー!」

「マーク、ゴー。とりあえずゴー。ここに止まってるのは絶対やばい」

「……はい」

 周囲の町人も頭に「?」マークを抱える中、ミコトは笑顔で両手で手を振っていた。マークが合図を出し、馬車が動き出す。ミコトはいつまでもいつまでも、大きく手を振っていた。

「勇者君、結婚おめでとー」

「待って待って本当に待って」

 そして姿が見えなくなってからレナの第一声。ライトは背中が汗だくであった。――ばれた。チャラ勇者が借りの姿で、本当は演者兵士だったライトが正体であると、ミコトにばれた。

 どう考えても火事の中助けた時が原因だろう。流石に演技をしている余裕はなかった。ライトは頭を抱える。

「え、これどうしたらいいんだ? 任務成功なの失敗なの?」

「まあ、しばらくは社に掛かりきりでしょうけど、あれは本気の目でしたなあ。――ライト殿、ミコト殿が来られる前にハーレムの基盤を作っておくべきですぞ」

「その解決方法は少なくとも間違ってるよ! 皆解決案何かない……ってあれ何で皆若干冷めた目で見てるの!? 違う、俺は望んでないし何もしてないよ!? おーい!」

 こうして、ライトの結婚行進曲は……いつまで続くのやら。

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