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あこがれのゆうしゃさま  作者: workret


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第四百七話 演者勇者と導かれし仲間達8

「ふーむ」

 ライトがローズと共にスーリュノに乗って登場のパフォーマンス中。当然レナはフリー……とはならず、現在はヴァネッサの隣で待機中。国家として発表するわけではないが、称号持ちになったというのは大きい。待機中もそれなりの立ち位置にいなくてはいけなくなってしまった。――本人の意思は兎も角。

「ライト君の傍にいれないのは不安?」

 と、からかう様にヴァネッサが訊いてくる。

「どうでしょうね。一週間位傍にいれなかったら不安になるかもしれないです」

「わお、私なんてヨゼルドと一週間以上離れるなんてザラなのに、妬けるわ」

「まーでも、今の所ポジションは確保してるし、私じゃないと駄目って言って貰えてるのは安心ですかね」

「あら本当に妬けちゃうかも」

 恥ずかしがらずにそう宣言するレナ。――レナちゃん、本当に変わったわ。って言うと怒られそうだから言わないけど。

「まあでも、正念場だから我儘は言ってられないわね」

 正念場。このイベントは、タカクシン教への宣戦布告が含まれている。決戦が一気に近付くのを意味している。

「私としては賛成ですよ。ぐだぐだする位なら、さっさと片付けたいです。落ち着きたいです」

「そうね。この騒動が終われば、流石に落ち着けると思うけど。いい加減私も少し落ち着きたいし。ヨゼルドだって、何だかんだで疲れて――」

「キャー! 国王様! 普段着もいいけどその服も素敵!」

「はっはっは、それ程でもそれ程でも」

 一方では知り合い(何処の知り合いかは兎も角)に声をかけられ、笑顔で手を振るヨゼルド。

「――疲れてないかもしれないけどまあでも一応ね。とりあえず今日は一緒に寝てあげないわ」

 そして何だかんだで直ぐ嫉妬するヴァネッサ。惚れてるんだなー、とレナは表情に出さない様にして思う。

「にしても、「見られて」ないですよね」

「そうなのよね」

 大々的にこうして式典を開き、タカクシン教との対立を宣言。タカクシン教のスパイや監視役の視線を、近くでは全然感じないのだ。

「この式典に気付いていないわけではないでしょうから、こちらが何を発言しても自分達のやる事は変わらない。そういう事かしらね」

「まだまだ何か企んでそうですよねー」

「そうね。それこそクレーネルちゃんを切り捨てる位の大きな事を、何重にも計画されててもおかしくないわ。……でもね、レナちゃん」

「はい?」

「いい加減、後手後手ってつまらないわよね?」

「そりゃまあ、いい気分はしませんね」

 ふとヴァネッサの表情を伺えば、勝ち気な笑みを浮かべていた。

「……何企んでるんですか?」

「やだ、何も企んでなんてないわよ。ただ、この怒りのぶつける方法を選別してるだけ」

 それを企んでると言うのでは。――そう思いつつもその台詞は嫌いじゃなかったのでレナとしても何も言わないでおく。

「目に物を見せてあげるわ。――私達に、喧嘩を売った事をね」



「ただいまです」

「ただいまー」

「おかえりなさい」

 式典の翌日、ハインハウルス城下町、武器鍛冶アルファスの店。スティーリィを連れて買い物に出ていたセッテ。帰宅し、店番をしていたフロウが出迎える。

「街の様子はどうだ?」

「式典の国王様、王妃様の演説とパレードが凄かったですから、活気が戻った気がします。実際、あれは勇気が出ますよね」

「そうか。スティーリィはどうだ?」

「うーんと、実際雑魚が漏らしてる殺気とかは消えてる。この街から宗教の下っ端が居なくなったか、私レベルでも簡単に感知出来ない人間しか残ってないかどっちか」

 タカクシン教の騒動以来、念の為にとセッテは出掛ける時は必ずフロウかスティーリィが護衛について、毎回街の様子を探っていた。――セッテ程ではないかもしれないが、フロウとスティーリィもこの商店街には愛着が沸いた。守れる範囲で守りたいと思っていたのだ。

「これでもう少ししたら完全に以前みたいに戻りますかね?」

「どうだろうな。兄者の話を聞く限りでは一癖も二癖もあるだろう。そういうのは基本、余程の理由が無い限り簡単に諦めたりはしない」

「そうそう。だから本当はこれ以上余計な事する前に潰しちゃうのが一番簡単」

 相変わらず経験上、のほほんとシュールな意見を言うスティーリィであった。

「でもま、実際オッサンとヴァネッサさんを怒らせてるからな、あいつら」

 と、工房での作業をしていたが、ひと段落ついたかアルファスが顔を出す。

「それぞれ単独でも怒らせたら洒落になんねえのに、夫婦揃って怒らせた。最終結末は、潰されて終わりだ」

 二人の事を知り、尚且つしっかり客観的に物事を見る事が出来るアルファスの意見は三人としても疑いの余地はない。

「ただ問題を挙げるとすれば、潰すまでの過程で、こっちにどれだけの被害が出るか、ってとこだろうな」

「まあ確かに、その手の輩は自分の命を捨てて特攻止む無しの場合があるな」

 思う所があったか、フロウがアルファスの意見に同意。スティーリィもうんうん、と頷いている。

「多分だけど今はその辺りの調整をオッサンとヴァネッサさんはしてんだろ。それが終わり次第、動くんだろうな。――何にしろ、心配は多分いらねえさ」

 と、そんな話をしていると。

「こんにちは、今日も宜しくお願いします」

 レナを護衛に、ライトが稽古を受けにやって来た。

「あっ、ライトさん、格好良かったですよ、あの竜に乗っての登場!」

「いやいや、勘弁して下さいって」

 ライトは苦笑。――実際、スーリュノに気を使われて飛んでいたにも関わらず現代でいう相当の絶叫マシンに乗った様な気分だった。一緒に乗ったローズは楽しいとはしゃいでいた。なので一生懸命師匠として我慢した。

「あ、アルファスさん、明後日から暫くの間、稽古お休みさせて下さい」

 ライトに予定。このタイミングで。――つまり、

「乗り込むのか、敵の本拠地」

「はい」

 アルファスに隠す必要は無いので、正直に返事をする。

「そか。ま、無理はすんなよ。さっきこいつらとも喋ってたんだが、そういう輩はぶっ飛んだ思考の奴がいるからな。お前堂々と先代勇者宣言しちまっただろ、前よりか狙われ易くなるぞ。しっかり守って貰えよ」

「大丈夫ですアルファスさん、見返りに色々して貰う予定なので」

 笑顔で先に返事をするのはその守る役目を担うレナ。――って、

「……その予定の具体的な内容を俺聞いてないんだけど?」

「うーんとね」

 と、何故かレナは移動し、アルファスに耳打ち。アルファスの表情がへえ、といった軽い驚きの物に変わり、

「ライト。まあ安心しろ、お前はぶれない限り俺の弟子だからな」

「ちょっと待って本人のいない所でどういう話になってるんでしょうねこれ!?」

 謎の悟りを語られた。――頼むから本人を通して欲しい。いや通しても実現出来るかどうかわからないけど。

「あ、後王妃様から伝言です。「何かあったら何とかしておいて」だそうで」

「おい何だそのアバウト過ぎる伝言は」

 でも言いたい事はわかる。わかるからアルファスは溜め息。

「俺はもう軍人じゃねえっての。剣聖の称号も……返させてくれねえんだよなあの人達。――まあいいや。それなりに反攻作戦は順調に行くんだろうから、俺の出番なんてねえだろ」

 と、自分で言っていてアルファスは気付く。――反攻作戦は順調。

「まさか……な」

「アルファスさん?」

「何でもねえ。――立ち話いつまでもしても仕方ねえ、稽古するぞ」

 その嫌な予感を切り捨てて、アルファスは稽古の為にライトを裏庭に連れていくのだった。



 そしてハインハウルス本城から、タカクシン教本拠地へ向けて軍勢が出陣した。

 軍事責任者、及び最高戦力であるヴァネッサを中心に、出撃者は魔王城攻略に参加した面々とほぼ同じ。つまり、全力も全力で――

「テラージャ、これだけいれば俺達、後方待機で様子見だよな? 俺魔導士だし」

「通達ありましたよ。キース隊、左翼最前線って」

「何で!?」

「隊長の魔導士タイプが完全支援だったら違ったかもですね。攻撃力の伸びが高いからです」

「テラージャ……俺の心のライフはもうゼロ……」

「戦う前ですけど!」

 ――見覚えのある顔が勢揃いであった。

「よう出戻り勇者ボーイ」

「……それなら普通に勇者ボーイでお願いします」

「ははっ、悪かった悪かった」

 そんなキース隊の様子を見ていたライトに話しかけてきたのはフウラ。

「冗談じゃなくて、感心してるんだぜ。何度でも立ち上がるってのは、強者の特権だからな。エリートは応援してるぜ」

「ありがとうございます」

「何かあったら相談に来いよ。俺位の距離の人間が必要な時もあるだろ」

 そう言ってポン、と肩を叩いて他の部隊へ話しかけにいく。その誰にでも慕われる姿は見事なエリートであった。

「…………」

 と、神妙な面持ちでタカクシン教総本山を見つめるのはヴァネッサ。

「らしくないな。お前がそんな顔をするとは」

 横にはマクラーレン。付き合いも長いせいか、そんな言葉。

「少し位こんな顔させて。――この作戦が本当にベストなのか、今でも判断が出来てない」

「ならベストにしてくれるし、してやる。信じろ、お前が育て上げたこの軍を」

「ありがとう」

 笑顔でマクラーレンにお礼を言うヴァネッサ。――少しだけヴァネッサの言葉の意味が引っ掛かったライトだったが、

「クレーネル、大丈夫か?」

 今自分が気にしても仕方がない。自分に出来る事は、自分の部隊で、精一杯やる事。そう思い、まずは一番この光景を見て思う事があるであろう仲間の一人に気を向ける。

「はい。フレムの時とは違い、気持ちは落ち着いています。ご主人様の存在と、この腕章がもう今の私ですから」

 今日は新調した魔導士用の服に、腕にはライト騎士団の腕章。正式に騎士団所属となり装備が認められた形である。その腕章を見せて、クレーネルは穏やかに笑う。――これなら大丈夫そうだな。

「確認が終わりましたらクレーネルさん、配置をお願いしますね」

「? 私はご主人様の専属使用人ですので配置はご主人様の隣のはずでは」

「今日は! 魔導士としての! 配置ですので! その計算で! お願いします!」

 と、ネレイザが無理矢理クレーネルの位置を変更する。

「というわけで事務官ネレイザ、マスターに団員の配置確認完了を伝えるわ」

「うん、ありがとう」

 そしてそのままライトの左隣に。――右隣にいたレナが笑う。

「ひと塊で行くんだからそこまで配置に拘る必要性ないでしょうよー」

「私は事務官だもん! そこまで言うならレナさんが譲りなさいよ!」

「護衛と事務官じゃ戦闘中の立ち位置違うでしょ」

 実際配置換えと言っても団員達はライトの直ぐ近くに全員集合しているわけで。

「皆、頑張ろう。俺達はあの時決めた。タカクシン教を許さないと。その戦いだ」

 そのライトの言葉に、全員が頷く。

「私達はハインハウルス軍! 世界に我が国に不必要な悪影響を及ぼす貴方達を、許しはしない! こちらの警告を無視した上に今までの数々の暴挙、それ相応の処置をとらせて貰うわ、覚悟しなさい!」

 ヴァネッサが剣を掲げ、高らかに宣言。

「総員、作戦開始!」

 そして――戦いの火蓋が切って落とされた。

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