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あこがれのゆうしゃさま  作者: workret


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第四百三話 演者勇者と導かれし仲間達3

「良かった、本当に会ってくれるとは思って無かったから……」

 先日路地裏で助けた女性。ローズの顔を見て安堵の表情を浮かべる。

「どうかしたんですか? また何か」

「実は、先日の件で友人が家に謝りに来たんです。来てくれたのはいいんですけど、信者の方を……その、連行なされたじゃないですか。その件についてやたらと詳しく訊いて来ようとするんです。見かねた父が、自分が話をつけてくると言って友人の家に行ってしまって」

「! お一人で行ってしまったんですか!?」

「はい……私は怖いから止めたんです。でも話をするだけだから、って」

「…………」

 聞く限りでは非常に不安が過ぎる話である。謝罪はあくまで表向き、実際の所は連行の件、更には勧誘を諦めて無かったとしたら、万が一という事もあり得る。

 そして既に彼女の父は行ってしまっている。猶予が無い。

「わかりました、案内して下さい! 私が行ってみます」

 更にはローズには「自分が剣を抜いた」という責任があると感じていた。それが正義であれ悪であれ、自分の行動が影響を及ぼしている。ならば最後まで責任を取るべきだ。

「ありがとうございます! 宜しくお願いします!」

 その全ての考察を吟味した結果、今直ぐ動くべき。――そう判断し、ローズは一人決意を固め、女性と共に目的地へ向かう事を決めたのであった。



「私の知らない事……というより、誰も知らない、教祖だけの何かがあるのかもしれません」

 連日行われているタカクシン教対策会議。今日は気持ちを変えて少しリラックスして話をしてみようと、ヨゼルド、ヴァネッサ、クレーネル、そしてそのクレーネルの主であるライトと護衛のレナ、以上五名でティータイムを楽しみながらとなっていた。

 事実連日の会議では解決案が中々決まらないのが現状である。あちらを立てればこちらが立たず。自国のみならず各国の被害を最小限に抑える為には、ただ騙されているだけの人達を出来るだけ多く救うには……等々、結果を求めれば求める程に結論が遠のく日々であった。こうしている間にもタカクシン教の各地での侵攻布教は続いている。そう思えば焦りも出る。

 その結果、今日は一度落ち着こう、という事になったのである。

「勿論、私は切り捨てられた人間なので、そういう意味でも私の知らない事はまだまだ沢山あると思います。ですが、これでもあちら側にいた頃はそれなりの地位にはいたんです。その私を誤魔化して隠しておける物となると何があるか……」

 クレーネル曰く、タカクシン教の資金源は主に寄付。個人から大きな企業・団体まで、提携や保護の約束をし、見返りに資金を寄付して貰っていたとの事。――思い当たる節は確かにある。ケン・サヴァール学園もその一つだったのだろう。

 だが今回の様に国家を占拠する様な規模の資金となれば、寄付だけでは成り立つはずもない。クレーネルも所属していた頃は盲目状態で気にも止めていなかったが、今冷静になって思えば少々不可解であるとの事。

「教祖様、ねえ。一体何者なのさそいつ」

 ずずっ、と紅茶を飲みながらレナの率直な疑問。――素朴な疑問だが最もな疑問である。何者なのか。

「名を明かす事もしていません。教徒にとって、彼は神に最も近い存在。彼の言葉は神の言葉。そう信じて止まない状態でした。彼を信じ、彼を敬う事が神に繋がる。彼を疑う者は、神の裁きが下る」

「神様の代弁者……って所か。信者達にとっては最早その教祖様が神様だな」

「ご主人様の言葉は正に、かもしれません。タカクシン教は、彼が全てでしたから」

 クレーネルが複雑な表情を浮かべる。そんな彼を信じていた時間は余りにも長過ぎた。その複雑な想いはどうしても過ぎる。

「長期戦に持ち込めば、被害を計算外にすれば確実に勝てるんだがな……」

 ふーむ、という表情をするヨゼルド。――って、

「国王様、長期戦なら確実に勝てるんですか?」

「ああ。――その教祖様なる男、今回の世界征服という大きな一歩を踏み出す為に、かなり大胆な行動に出ているだろう? それこそここまで優秀なクレーネル君を呆気なく切り捨てる程に。恐らく自信があっての行動であり、事実今の所は上手くいっているが……人を道具として見て簡単に切り捨てる様な人間がトップの組織など、長続きなどせんさ。国は道具によって生まれるのではない。人によって支えられ、初めて存在出来るのだからな。それをわからない人間などいつか崩れるだけ」

「だから長期戦なら確実なんですね……」

 ヨゼルドの手腕が絶大なのは知っている。ヨゼルドの人柄が立派なのも知っている。その言葉には、信憑性しかない。

「でも今回、長期戦にした場合、本当に最後に勝てるだけ。それまでの間に出る被害はきっと計り知れないわ。いくら私達が分散して出撃したとしても限界があるもの」

 ふぅ、と溜め息交じりのヴァネッサ。確かに天騎士は圧倒的だが、流石に分身は出来ない。相手の行動範囲が広がれば被害が増えるのは目に見えている。

「んー、じゃあさ、その教祖様をどうにかすれば一番手っ取り早いわけだ。クレーネル、何でもいいよ、その教祖様の事話してみて。例えばほら、ライト君は女性を見る時まず胸から見てます、みたいなのでも」

「ちょっと待って何その情報俺自身が知らない!?」

 スケベ丸出しじゃないか。

「無意識なん?」

「当たり前だろ――ってちょっと待った、本当に俺そんな視線だった?」

「うん、毎回全てってわけじゃないけど、割合的には」

「…………」

 チラリとクレーネルを見ると全然見てくれて構いません、という表情。次にヴァネッサを見ればこちらも見られてた事があるけどライト君なら構わないわ、という表情。最後にヨゼルドを見れば――

「ライト君……君は今、真の勇者になった……!」

「そんなわけあるかあああ!」

 感動の涙を浮かべていた。――泣く程か。いや本当に見てたのか俺。どうしよう他のメンバーにも訊くべきかでも結果返事が怖い。

「まあそれは兎も角、そんな何気ない情報からこうやってダメージを与える事も出来るからさ、何でも話してみたらって事」

「実験台は本当にダメージ重いぞ……」

 一方のクレーネルはレナにそう指摘され、うーんと少し考えてみる。

「……元々彼は、先代の教祖の後を継いで今の座についた人です」

「えっ、タカクシン教って今の教祖が作ったんじゃないんだ」

 てっきりワンマンで作り上げた宗教かと思ったら。

「確かに今のタカクシン教のシステム、規模を作り上げたのは彼と考えていいでしょう。昔のタカクシン教に関しては私も詳しい事は知りませんが、少なくともこんな大きく大胆な事が出来る様な規模では無かったと思います。それから、先代の教祖が――」

「申し上げます!」

 クレーネルの話を遮る様に、一人の伝令役の兵士が走ってやって来る。――ライト達に緊張が走った。

「勇者ローズ様が単身出撃なされたご様子!」

「!?」

 そしてその内容は、その緊張を嫌な予感へと変えていく。

「どういう事かね? 詳しく説明したまえ」

「はっ! 何でもお知り合いという方が勇者様をお訪ねになり、その方と共にそのまま……」

「ローズの……知り合い……?」

 ローズの交友関係を全て把握しているわけではないが、城外の人間でそこまで親しい人がいただろうか。それに伝令はローズの様子を「出撃」と言った。戦闘態勢なのだ。

 勿論ローズの実力は圧倒的。その辺のゴロツキならば束になって来られても負ける事は有り得ない。でも。

「国王様、王妃様、俺達行きます。――ローズ、クレーネル、二人共」

「うん」「はい」

「気をつけてな、頼んだぞ」

「団員の皆には、私から説明しておくわ。直ぐに捜索に向かわせるから」

 こうして大きな不安を抱えたまま、ライト達はローズを探しに行くのであった。



「こっちです!」

 一方で先日の女性に同行したローズ。速足で進む彼女について進んで行くと辺りの風景は路地裏になり、

「ここは……」

「ここに、父が!」

 少々古ぼけていたが大きな屋敷に辿り着いた。経験の浅いローズでも嫌な予感がする。人気の少ない古ぼけた建物。「いかにも」過ぎる。

「……っ」

 ローズは悩んだ。ローズの中では隣人トラブルの類だと思っていたが、規模が違う。ここへの単身突入は、軍事介入のレベル。自分は確かに勇者だから許されるが、いざという時の判断に悩む。

(戻って、師匠を呼ぶべき……?)

 ローズの中で懸命は判断が浮かんだその時だった。

「お願いします! どうか、一刻も早く父を……!」

「!」

 女性がローズの腕を掴み懇願してきた。――そう、自体は一刻を争う。今ここでライトを呼びに戻っていたら、その時間で彼女の父親は犠牲になってしまうかもしれない。先日の襲って来た相手を思えばその光景が過ぎった。

(そんなの……許されない!)

 ローズは覚悟を決めた。そして、

「お姉さんはここで待っていて下さい。私が一人で行きます」

「! お願いします……!」

 女性にそう告げ、単身建物へ向かい始める。周囲を警戒しつつ、ゆっくりと玄関のドアに近付く。――驚く程に静かだ。

「ふーっ……」

 一度大きく息を吐いて、静かにドアノブを握る。――鍵はかかっていない。そのままゆっくりと家の中に。

(誰もいない……? そんなわけない……)

 静かな玄関のホールをそのまま数歩進んだ、その時だった。――ガシャァン!

「え?」

 ガラス瓶が割れる音と共に、ローズの周囲を一気に謎の煙が勢いよく覆う。

「よし、かかったぞ!」

 そして、そんな声が聞こえてきたのであった。

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