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第三百十七話 演者勇者と勇者の血筋が眠る村3

 青い海。白い砂浜。照り付ける日差し。丁度季節もビーチでバカンス出来るギリギリのライン。

「まさか、本当にここまで綺麗なビーチになってるとは……」

 そう、何も突然場所を大きく移動したわけではない。ここはミスラルマ。漁業で生計を立てる村。勇者の血筋が流れている可能性があってちょっと村人のテンションが上がっている田舎の村。

「まあそのテンションのせいでしょうなあ、こういう場所を作ったのは。実際ここまでの場所を何もしないというのは勿体無い。良い機会だったと思いますぞ」

「というか、わざわざ勇者の血筋云々言わなくても、ここまで綺麗なビーチならそれを売りにすれば観光客とか呼べそうなもんだけど」

 目の前に広がる光景は、正に海でのバカンス一直線だった。

 というわけで、サラフォンとハルの勝負は何とサラフォンに軍配が上がった。村人に尋ねた所この場所を案内された。観光地の様な施設こそまだないが、最近になって村人が整備してビーチに作り替えたとの事。……砂浜の勇者がいたのは余談。

 そしてサラフォンが勝った以上、ハルの水着姿のお披露目という事になった。勿論そうなるとハルだけではなく他の面々も水着に着替え中。本当にバカンスになってしまった。

 先に着替えを終えた男性陣が現在、砂浜で待っているのだが、

「……ニロフは何してるんだ?」

 流石に裸になれない(裸=骨である)ニロフが、クッキー君バッキー君を召喚して色々と動き回っている。

「折角のバカンス、折角の水着。この目に焼き付けるのは当然として、やはり写真に残しておきたいでしょう。そうなると光の加減とかアングルとかの調整をですな」

「プロのカメラマンかよ!?」

 ハッとして見ればクッキー君バッキー君は反射板を立てたり、砂浜を更に綺麗に整えたりしていた。

「ライト殿、多少の恥じらいなど捨てるべきです。こんな機会はこの先あるかないかわかりませぬ。この美女美少女揃いのライト騎士団女性陣全員が水着で登場など! 想いを解き放つのです!」

「テンション高いな……」

「長、オイルを買って来た。ボールも売ってた。パラソルをもっと立ててデッキチェアも増やそう」

「地味にテンション高いのがもう一人いた!?」

 ドライブだった。――そういえばこいつ、表情に出さないだけで案外この手の欲は持ってるんだった。

(まあ、俺だって楽しみにしてるんだけど)

 ソワソワしてたら格好悪いじゃないか。クールに行きたい。――謎の見栄を張ろうとするライトだった。

 と、そんな葛藤をしていると。

「マスター! お待たせ!」

 ネレイザの一声でハッとその方向を見れば、見事に全員水着姿に着替えたライト騎士団女性陣の姿が。

「おお……!」

 つい感嘆の声が漏れるライト。

「長。――騎士団所属であることを感謝する」

「お前クールイケメンだからそういう事言っても許されそうなのずるいよな」

 表情はいつも通り冷静なまま。鼻の下が伸びる様子が微塵もない。

「ライト殿、我はもう思い残す事はありませぬ……さらば……」

「ほら見ろ、ニロフなんて命を懸けて表現して成仏……成仏しそうになってる!? 待てニロフそれは駄目だ戻ってこい!」

 一瞬ニロフの周囲が光り、ふわりと宙に半透明のニロフが浮いた気がした。肩を揺すり頬を軽く叩き何とか現世に引き戻す。――こっちはこっちで大袈裟過ぎる。

「マスター、どう? これでもプロポーションには気を配ってるから、恥ずかしい体系じゃないつもり」

「うん、似合ってる。驚く程可愛いと思う」

 本人が言う通り、ネレイザは決して高身長ではないがでもプロポーションはバッチリだった。可愛らしさを前面に出した水着で、ここぞとばかりに近くでアピール。流石にまじまじと見てしまう。

「あら、ライトはネレイザだけで満足かしら? 私も、決して負けているつもりはないのだけど?」

「おお……エカテリスも流石だよ」

 続いて登場はエカテリス。こちらは何処か王女のドレスの延長線の様な高貴な雰囲気がする水着。それでいて本人の素質もあり美しさと可愛らしさの兼ね合いが見事だった。

「姫様の水着は、私が選ばせて頂きました。ライト様のお目に叶った様で何よりです」

「うん……ってリバールも凄いな……それ着こなせる人は中々いないぞ。お見事だよ」

 敢えて順位をつけるならば、微々たる差ではあるがライト騎士団の中では一番のプロポーションを誇るリバール。正に大人でセクシーを全面に出し露出も多めの水着を綺麗に着こなしていた。

「私は無難な物にしておきました。なので皆さん程じゃないかもしれませんが」

「いやわかってないなソフィ。ソフィはその路線だから逆に凄い事になってる」

 シンプルな白い水着が、逆にソフィの清楚で完璧な美しさを際立たせていた。光っている。

「ここでライト君の視線を独り占めするには全裸なんだろうけど流石にその勇気は私には無かった、ごめんね」

「何の謝罪だよ!? というか、十分過ぎる程にその、見ちゃうから、うん」

 レナはソフィとリバールの中間と言えばいいか。オーソドックスな様で要所要所で大人な雰囲気を醸し出していて惹かれてしまう。

「そしてライトくん! 本命のお披露目だよ!」

「うん、その前にサラフォン自身ね。サラフォンも負けじと可愛いという事を自覚しよう」

 サラフォンはスタイルの良さでは他の面々に一歩劣るものの、こういったドレスアップ的に衣装チェンジするとそもそもの美少女っぷりが全面に押し出され、見事な可愛らしさを醸し出す。自覚がないのでナチュラルなのも逆に後押し。

「ライト様、本当に申し訳ありません……サラが一人で盛り上がってしまって」

「いや、サラフォンが盛り上がりたくなるのもわかるよ。その、今のハルを見れば」

 ソフィとは対照的に黒一色の水着。サラフォンが自慢する様にそもそも美人顔でプロポーションも抜群のハルだが、そのシックな装いが布地に覆われていない部分のハルの姿を際立たせて目が離せなくなる。

 総勢七名。屈指の水着美女美少女がライトを取り囲む様にアピール。

「正直に言います。目の保養、眼福以外の何物でもありません。ありがとうございます」

 誤魔化しようがない。ライトは正直に全員にお礼を言った。女性陣もそのストレートな言葉に、悪い気はしない。

「それじゃ、折角全員着替えたのだから、少しだけバカンス、スタートですわね!」

 こうして、エカテリスの号令で、唐突に舞い込んできたライト騎士団のバカンスが始まったのであった。



 エカテリスの号令からニ十分は経過しただろうか。皆、思い思いの遊びを始めていた。

 だがそのニ十分は濃かった。エカテリスがオイルを塗って貰う為にうつ伏せになって水着を外すと、リバールはその背中にオイルを塗りながら昇天。対抗してネレイザがライトにオイル塗りを要求、同じくうつ伏せになって水着を外す。ライトとしては流石にネレイザ相手でもドキドキしてきた……所でレナが過剰なオイルをネレイザに垂らしてあられな姿にしてからかう。

 砂浜で砂の軍事基地を作るサラフォン、武器だけ本物にしてハルに怒られる。

 ビーチバレーを始めればいつの間にかソフィとドライブの反射神経の訓練と化す(ソフィ狂人化ばーさーく)。

 そんな様子をカメラマンと化したニロフが写真を撮り放題していたら、砂に足を取られ躓いたネレイザ、エカテリス、リバール三人同時に抱き着かれ間近も間近でその装いと感触を堪能し、再び天へ召されかける。

 と、以上の項目が過ぎ、現在は落ち着いて、エカテリスとリバールは海で泳ぎ、ソフィ、ドライブ、ネレイザ、ハルの四人でビーチバレー。サラフォンはクッキー君バッキー君と共に武器無しで砂の軍事基地設計。レナはパラソルの下デッキチェアで優雅な昼寝。ニロフはそんなメンバーを写真撮影。

 ライトはさて何処に混ざろうか。何処へ行っても楽しいだろう。贅沢な悩みを抱えていると。

「本当に申し訳ありません、サラの我儘で」

 ビーチバレーから一旦抜けて来たか、ハルが話しかけてくる。

「いや、俺も何度でも言うけど、見れて嬉しい遊べて楽しい。何の文句もないし寧ろありがとうだから」

 改めて見てもハルの水着姿は本当に綺麗で目が離せなくなる。サラフォンが自慢するのも良く分かった。

「もっとハルは自信を持っていいって。というか変な話、モテるよね? 言い寄る男の人沢山いるよね?」

「いませんよ。ヨゼルド様専属ともなると、誰もそういう目では見てはくれなくなります」

 成程、下手に手を出して国王に何か言われるのは一般兵士等では怖いだろう。

「なら俺が太鼓判を押すよ。今ならまだ俺勇者だから、勇者公認の美人使用人だ」

「ふふっ、でしたら今日から私、ライト様公認の使用人ですね。――ライト様」

「うん?」

「いざという時は、仰って下さいね。場合によっては、ライト様の為にヨゼルド様の使用人を辞めても構いませんから」

「ハル……?」

 いつもの距離間よりも少しだけ近い距離で、いつもよりも色気のある目で、何よりいつもと違うその姿で、ハルにそう言われ、ライトもドキリとする。

「おお、御両人、良い感じですな、撮らせて下され」

 と、そんな所にカメラマン登場。ライトとしては助かった様なそうで無い様な。

「ニロフ様、ライト様とツーショットで写真を撮影した方は」

「そういえばまだおりませぬな」

「でしたらお願いします。ライト様、お隣失礼しますね」

「うん」

 肌が少しだけ触れる距離で、写真撮影。その距離が、出会った頃よりも近くなった二人の距離の様で、お互い喜びを噛み締めてしまうのだった。



 そして、そんなライト騎士団のビーチでの様子を、離れた箇所から見守る集団が。

「王女様達は」

「海岸……ビーチで遊ばれてるぞ。用意しておいて良かった。もう数日あればもっと準備出来たが」

「でも十分楽しそうにしてる。いい感じになってる」

「あっちの準備は出来てるか?」

「夜には間に合う。というかこっちが本命だからな」

「何にせよ、これが上手くいくなら夜も上手くいくな」

「ただ、明日からはどうするんだ? もうそんなにネタはないだろ」

「それは……」

「ターゲットを変えよう。王女様だけじゃ駄目だ。あの団長さんにももっと楽しんで貰えれば」

「寧ろあの団長さんに楽しんで貰う方が簡単なんじゃないか? だってほら」

「油断はするなよ、あんなに王女様と親しげに話してるんだ、どれだけの経験をこなしてるかわからないぞ」

「何にせよ、この数日が勝負だな」

「ああ。――何としても、「知られる」わけにはいかない」

 決意を新たに、彼らは次の行動に出るのであった。

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