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ヘタレな男シリーズ

「ヘタレな男に「お見合い」というムチを」

作者: 千神

ヘタレな男の子が頑張ってる話を書いてみたいと思い、かなり衝動的に書いたものです。(≧∀≦)

短編なので、サクッと読んで貰えると思います。

面白いと思っていただけら、幸いです。

「うぐ…ぐ…司…」

「おいおいマジで?ここで泣く?」


同級生で同期の茅野は呆れたような声がした。

わかってる。

大の大人がいい年して本気泣きなんてみっともない。

茅野は少し手を後ろ位に回して掻いた後「まぁ…お見合いするってだけなんだからさ。元気出せよ」と軽く肩に手を立てた。お、お見合い…うっ。。

やばい。また涙が出てきそうだ。


俺の幼馴染である司がお見合い話を持ってきたのは一昨日のことだ。

俺はいつものように夕飯を司と食べていた。

司も俺も世で言う鍵っ子というものだ。

とくに司は女の子ということもあり、防犯等も兼ねて、夕飯は司の家で食べることが通例になった。


「お見合いすることになったんだ」


突然だった。

危うく煮物を落としそうなところを耐えた俺のことを誰かに褒めて欲しい。

爆弾発言をした当の本人は何処吹く風かのような顔をしていて此方の様子を伺っていた。

人の気持ちを知らない癖に。

思わず持っていた箸が手に食い込みそうなった。

俺はずっと彼女に恋をしている。いや、そんな綺麗なものでもないな。執着といっても過言ではない。

彼女と俺は物心つく前から家族同士が仲が良く遊んでいた。何処かの漫画のような設定である。

テンプレートな恋とは行かずに、俺はずっと片思いしたままである。いや、何度も告ろうとしたんだ。

その度に邪魔が入ってたりして、勇気が萎んでいき、今に至る。皆まで言うな。わかっているから、俺自身がヘタレだと言いたいんだろう。

いやな、実際に自他共に認めるヘタレだと思うよ。だけど…壊したくないんだ。俺にとって彼女が隣にいるというのは息をすると同じくらいに当たり前なのだ。

もし、彼女が俺から告白をして離れるようになったら俺は…俺は…多分生きていけない。

誇張じゃないところが自分でも怖い。


「24歳でしょ?もうそろそろ結婚を考えてもいいんじゃないかって、両親にも言われてね」


嵐のように荒ぶれる俺の心とは正反対に彼女は陽だまりのような温かな笑みを浮かべた。


「…24歳でお見合いって早いんじゃないか。いや、お見合い自体が悪いと言ってる訳でもないんだがな…」


乾いた咽喉から声を絞り出した。違和感はなかっただろうか。彼女は少し首を傾げて、「はいお茶」と慣れた手付きでお茶を差し出してくれた。やはり少し声は掠れていたようだ。「ありがとう」と一口つけて静かに息を吐き出す。嘘なのだ。24歳が何処が早いんだ。いや、待てよ。やっぱり早い。せめて俺が告った後にしてくれ、駄目だ、混乱してる。

お見合いして、その相手と仲良くなったらどうしようか。その前に既成事実でも…頭の中で俺の残像をもう一つの俺の残像が殴った気がした。辞めてこう。それこそ彼女に嫌われてしまう。その後、深呼吸で何とか正気を持たせて夕食を済ませたのだった。


「お見合いはお互いに結婚願望があるってことだ…司は押しに弱いところあるし…もし、もし…」

「そこで告白しろよ、馬鹿」

「お、仰る通り」

返す言葉が思い浮かばない。目の前にあるグラスを弄ぶ。中身のビールがゆらりと揺れた。


「…いつからかわからないんだ」


本当にいつから彼女が好きになったのかわからない。ただ彼女以外はいらないと思っている。

(司のことだけ)ヘタレだけど、俺の顔はそこそこ整っているようでそれなりに告白された。

その度に断っていたけれど。因みに当時の茅野からは「うわぁ、もったいねぇ」と言われた。

何となくだが、司も一度も彼氏いなかったし。まぁ、俺が幼馴染兼同級生という最大権力を振りかざして司に近づく男どもを蹴散らしていたが。

司以外は受け入れることができない。

な・の・に。

彼女はさっさとお見合いを設けてしまった。

100%うじうじしていた俺が悪い。悪いけど。

しかし、文句と酒をしていないとやってられない。


「え?おい?皐月?」


あ、と思ったときには遅かった。茅野は焦った声を聞きながら、すまんと心の中で謝った。

それからの記憶が朧気だ。

茅野に支えながら、家の玄関まで着いたことまで覚えているのだが…


「後で茅野くんにお礼言っときなよ」


何故司がいるんだ。ここは…俺の家だよな。親父は?お袋は?彼方此方の見ていると、司は穏やかな口調で「おばさんもおじさんも旅行だよ」と言った。

そうだった。俺の両親も司の両親も仲が良く、しょっちゅう旅行やお出掛けに出ている。

何ということだ。お酒はある程度抜けたとはいえ、理性を保てる程まだ抜けていない。

何でいないんだよ。お前たちの息子、今狼になりかけているんだけど。脳裏で思う浮かぶ両親たちにcomeback!!!と心中で叫んだ。

俺の葛藤を知らずか、彼女は「はいお水」と渡しにおれに近づいてきた。やめろとはいえずに「ありがとう」と受け取ってしまった。

彼女の髪からほのかに良い香りが際立つ。


「…いい香り」


変態っぽいかと思い、彼女の方を見ると「本当?シャンプー変えたんだよね」と危機感の無い声が俺は耳に響いた。司は俺のこと、男としてみていないのではないか。近所のお兄さん的な感覚なんだろうか。

そんな言葉ばかり堂々巡りをし始めた。

何だかとても悔しい。何で俺ばかり。こんな気持ちを抱え続けなきゃいけないんだよ。

いっその事、彼女と同じ目線で俺も彼女に幼馴染としての気持ちを抱えることが出来たら、楽だったのに。

司の顔を見るとまた泣きそうで堪えるように俺は床に目線を向けた。見慣れた床に少し安堵を覚える。

駄目だな、結構俺重症かもしれねぇな。


「これは重傷かな?」

「え?」


一瞬、彼女が俺の心の声が聞こえているのかと思い心臓が大きく揺れた。俺の反応を見て「お?ドンピシャだった?」と口角を上げた顔を覗かせた。違うとも言えずに可愛いさと色気もある司の顔を見続ける。


「「お見合い」って言えば、さっちゃんも流石に好きと言ってきてくれるのかなって思ったんだけどな」


「こんな思い詰める感じにするつもりはなかったのに」と司は少しだけ溜息を吐いた。え?何?お見合いって言えば俺が好き…って?え?それじゃあ、まるで司が俺が好きを言ってくるのを待ってるみたいじゃないか。それってつまり…司は俺のこと…。その考えに到達したときに一気に顔に熱が集まる。心臓の鼓動も先程とは比べものにならない程速くなる。


「あ、その顔は漸く気がついた感じかな」


こちらの様子を見ていた彼女はいたずらが成功したガキ大将のような笑顔になった。


「つ、司!」


やばい声が裏返った。恥ずかしさで顔を赤く染める。女々しい。お前は女か。と、心中で自分を叱責した。


「ん?何?」


それでも彼女は笑顔で答えてくれる。

すまん。こんな情けない男で、だけど。

絶対、司を想う気持ちは誰にも負けない。


「…好きだ。あ、あ、愛してる。」

「私もさっちゃんのこと愛してるよ」


司は俺の方に抱きついてきた。彼女を受け止める。あぁ腕の中に彼女がいる。これ以上の幸せはない。

俺は本当に幸せ者だ。


また後日、お見合い相手は実は俺で。彼女としてはお見合いの前に俺の気持ちを確認したかったとか、彼女もずっと俺のことが好きだったとか…

話すと長くなるので割愛させて頂く。

まぁ、とにかく俺は果報者であるという訳だ。

…告白直後の二人の会話

「そういえば司っていつから俺のこと好きなの?」

「んー、ちゃんと自覚したのは中3かなぁ」

「え?そんな前から?」

「そうだよ?」

じゃなきゃ、毎日ご飯を作って、さっちゃんと勤務時間とかに合わせながら夕食を一緒に食べたり、お昼のお弁当とか作らないよ。

と、彼女に言われてそれもそうかと思った。

「好きだよ」

「へ?」

「言ってみたくなっただけ」

ふふと幸せに微笑む司に皐月は悶絶する他なかった。司が皐月を翻弄する日々がまだ続きそうだ。


こんな感じかなって書いてました。最後まで読んで下さりありがとうございました。

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