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第1話 どいなか

 寂れかけた地方都市。JRの駅はあるが、日中は一時間に1本しか通らない。そんな『ど田舎』な伊仲市。それでも、国立大学がある。伊仲大学。医学部は有名だが、他の学部は地元以外ではほとんど知られていない。


 大学の敷地は、学部ごとに点在していた。比較的街中にある医学に比べて、教育学部や理工学部は郊外にある。互いに自転車で行き来できる距離にはあるが、それでも学生の往来はあまりない。


 理工学部の電気情報科に受かった、拓真は駅からの通学のバスの中で、迷っていた。学校に慣れるまでは部活をするつもりはなかった。いかし、一学期も終わり、下宿を始めると、時間が余る。辺ぴな地方都市の郊外では、バイトする場所もあまりない。教育学部なら家庭教師もできただろうが、理工学部では数学か理科を教えられる程度。英語の教えられない家庭教師では、需要がまず無い。


 一年の間は、仕送りだけで我慢しようと考えていた。というのも、一年の教養課程は全学部の生徒は教育学部のある校舎で学んでいた。だから、医学部や教育学部の生徒向けのバイトがほとんどだった。理工学部の敷地に移れば、きっとそれなりのバイト先もあるだろう。


 入学直後にいくつかの部から勧誘の葉書がきていた。どうして住所までわかったのか不明だ。都会だったら確実に、個人情報の流出で問題になったろうが、へんぴな田舎の大学だ。だれも騒ぐ者はいなかった。

 おそらく、学校側で取りまとめて案内を出してくれたのだろう。


 そんな中で目を引いたのが馬術部だった。田舎の広大な敷地があるからこそ出来るのだろう。構内に馬場もあったし、時折、馬に乗った学生とすれ違うこともあった。

「乗馬はカッコいいけど、馬の世話が面倒そうだなあ。」


 拓真は動物が苦手だ。幼いとき父が子犬を連れて帰ってきたことがあったが、うまく抱けずに頭から落としてしまったことがある。幸い子犬に怪我はなかったが、今でもキャンキャンと痛そうに泣きながら走り回っていた白い小さな毛玉を思い出すと、背徳の念に駆られて、心が沈んでしまう。

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