表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/3

旅立ち

 



 サクラとの生活は楽しかった。


 俺が盗んできた魚をおいしそうに食べてくれるし、俺のつまらない話を笑顔で聴いてくれる。


 そんな楽しい生活が数日続いたときだった。


 夕食を物色するために林道に沿った草むらを歩いていると、チャリに乗った二人のおばさんが立ち話をしていた。


「奥さん、お昼のニュース、観ました?」


「え、観たわよ。ピンクの首輪をした高級猫のニュースでしょ?」


(もしかして、サクラのことか?)


「そう。見つけた人には、懸賞金100万ですって」


(100万?)


「スゴいわね。よほど、大金持ちのペットだったんでしょうね」


「そうでしょうね。じゃなきゃ、100万なんて大金出せないでしょう」


「そうよね。どこにいるのかしら。サクラだっけ?名前」


(……やっぱりだ)


「この辺にいないかしら。見つけて、100万ほしいわ」


「私も」




 ニャン吉は道を戻ると、サクラの元に急ぎました。




 毛繕いをしているサクラに、耳にしたことを伝えました。


「……どうしよう。あの家には帰りたくない」


 サクラは震えていました。


「きみが帰りたくないなら話は早いよ。ここにいたら危険だ。どこか、場所を変えよう。俺らに任せるかい?」


「ええ、ニャン吉さんにお任せします」


 サクラがクリッとした目で見つめました。


「じゃ、まず、首輪を外そう。目立ちすぎる」


「でも、どうやって」


「うむ……」


 グッドアイデアが浮かばないニャン吉は、腕組みをすると首を傾げました。


 ところが、あることに気づきました。


 首輪をよく見ると、革製ではなく、柔らかいリネン素材だったのです。


 首の周りの毛をハゲさせないための飼い主の配慮でしょう。


 ニャン吉は、サクラに対する飼い主の深い愛情を感じました。


 しかし、「帰りたくない」と、はっきり言ったサクラの気持ちを、ニャン吉は尊重(そんちょう)することにしました。


 そして、サクラの首を傷つけないように、ゆっくりと首輪を噛みちぎりました。


「フー、外れたよ」


「ありがとう」


「では、旅に出発だ!」


「ええ」


 サクラがうれしそうにニャン吉を見つめました。




 日が暮れると、ニャン吉とサクラは山に向かって川沿いを行きました。


 登るにつれて人家の明かりが途絶(とだ)え、少し心細くなりましたが、サクラと一緒だと、ニャン吉はなんだか浮き浮き気分でした。


 サクラを守るためには、人が住んでいない山しかない。


 ニャン吉は、そう決断すると、この先の生き方を考えました。


 もう、人様の食べ物は盗めなくなる。カエルや昆虫、トカゲやネズミを獲って生活するしかない。


「大丈夫?」


 後ろをゆっくりとついてくるサクラに声をかけました。


「ええ。……大丈夫」


 家で飼われていた猫だから、それほど体力はないはずだ。それでも頑張ってついてくるサクラのことを、いとおしいとニャン吉は思いました。



 そして、しばらく登ると、小屋が見えました。


 こんな所に人は住んでないはずだ。


 ニャン吉はそう思いながら、抜き足差し足で小屋に近づきました。


 するとそれは、使われていない古い炭焼き小屋でした。


 ここなら、雨や風をしのげる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ