大臣達の悩み事
「次は〜血雨〜血雨でございま〜す、お出口は右側です」
「お嬢様着きましたよ……起きてください」
「ん〜もう着いたのか?……」
「お嬢様……既に2時間が経過しております……」
「何!? そんなに電車に乗っておったのか……」
目をこすりながら軽く伸びをするレナ。
眠っていたせいで時間の感覚がズレてしまったレナはあまりの時の早さに驚いていた。
ミルに手を引かれながら電車を降りるレナ。
「久しぶりに帰ってきたのじゃな〜」
「そうですね〜なぜだが懐かしい気持ちになります」
自分の国に帰り懐かしさを感じる2人。
留学したからまだ数ヶ月しか経っていないが随分と帰ってきてなかった気がする。
「しかし血雨とな……妾の城に行くには少し距離があるのじゃが……もう少し近くの駅はなかったのかの〜」
「流石に和平条約を結んでいるとはいえ電車から直で魔王城近辺に来られては困りますからね、多少の距離があるのは仕方ありません……大人しく飛んでいきましょう」
国の事情を考えると当然の処置なのだが今のレナにはそれがめんどくさく感じるようだ。
仕方なく翼を広げると魔王城に向かった。
魔王城では大臣たちが集まっていた。
「レナ様が帰ってくるそうだな」
「そのようですね〜私的にはこのような催事でレナ様の留学生活を邪魔したくなかったのですが……」
「しかないであろう、ワシらではどうにもできん、そもそもワシら老いぼれが若い者の思考など読めるわけがなかろう?」
「それを言ったら元も子もないではないか!」
大臣たちが口々に口論をしている魔王城の中に2つの影が入ってきた。
「相変わらずここはうるさいの〜少しは静かにできんのか〜?」
「お嬢様……色々と国のための話し合いをしているのにうるさいはないと思うのですが……」
聞きなれた声を聞き背筋を伸ばす大臣達。
「おかえりなさいませ魔王レナ・スカーレット様! この度はこんな催事で呼び戻してしまい申し訳ありません……」
「別に構わんのじゃ、たまには戻ってこんとな!それで? 妾を呼んだ用件はなんじゃ?」
さっそく用件を聞こうとするレナ。
「それが……なんといいますか……」
「ふん今時の若者は度胸がないのだ、率直に言えばいいだろ!」
「しかし仮にも一国の王子、あまり愚弄するのは……」
大臣達は誰が話すかで争っているようだ。
しばらくその様子を見ていたレナだが痺れを切らして声を上げる。
「うるさいのじゃ! 誰が言おうと関係ないじゃろ! 早く言うのじゃ!」
「そ、それがですね……おいお前言えよ」
「私ですか!? あなた誰が言っても変わらないって言ってたんですからあなたが言ってくださいよ!」
どうやらこの発言で責任を負う可能性があるのか進んで言おうとしない大臣達。
そんな大臣達の中でも最年長の老人が口を開いた。
「申し訳ありませんの〜大臣達も色々と事情がありましてな……まぁワシは老い先短い老人ゆえワシがお伝えしましょう」
「そうなのか? 別にその発言程度で首を切るなど妾はしないのじゃが……」
「いえいえ外交的な問題でしてな……今時のいつどこでだれが聞いているかわからないゆえ言いづらいのじゃよ」
「なるほどなのじゃ……まぁ良いそれで用件とはなんじゃ?」
「はいじつはですな……レナ様と入れ違いで留学生としてきたダナ王子が失踪したのじゃ……」
「なんじゃと!? それは大問題なのじゃ……仮にも一国の王子居なくなってしまっては今後の関係に悪影響じゃな……」
大臣の発言に驚き焦るレナ。
詳しく大臣の話を聞くとどうやらヴァンパイアの学校に数日前から来なくなり連絡が取れなくなったそうだ。
レナと交換留学の形で訪れたダナ王子がいなくなったとなると人間達との関係が悪化する可能性がある。
そうなってはまた戦争に発展する可能性もあるのだ。
ネナ達と戦うのだけは嫌なのじゃ……ここは妾がなんとかせねば……
「だいたいの状況は理解したのじゃ……仕方あるまい妾がなんとかするかの〜」
「お願いいたします、我らではそれぞれの仕事をこなしながら王子を探すのは困難でして……」
「わかっておるのじゃ、お主らには国のことを任せっきりじゃからな、たまには妾も仕事をさんと魔王としての名が廃るのじゃ!」
そういうとレナはミルを連れて魔王城を後にした。
一応ダナ王子と顔見知りのレナはあったときに王子の魔力を覚えているので場所はすぐにわかった。
「……」
「こんなところにおったのじゃな」
いきなり背後から話しかけられ身構える王子。
「何者だ!」
「ほぉ〜妾のことを忘れたとな?」
上空から降り立つ1人の少女とメイド。
2人からはとてつもないオーラが漏れ出ている。
「魔王……」
「久しぶりじゃの〜ダナ王子」
軽く挨拶をするレナだがその目は決して笑っていない。
「なぜ魔王がここに?」
「ふん、お主が勝手にどこかに行ったせいで呼び戻されたのじゃ」
少しだけ怒った様子を見せるレナ。
「なぜ逃げたのじゃ?」
「……」
「こたえてくれぬのか?」
王子は頑なに沈黙を貫く。
しばらく沈黙が流れた後王子が口を開いた。
「俺は……力が欲しい……」
「ほぉ? 力とな? してなぜそれを求めるのじゃ?」
王子の力が欲しいと言う発言に少し興味を持ったレナ。
「実は……その……」
顔が少し赤くなる王子を見て首をかしげるレナ。
「なんじゃ? 熱でもあるのか?」
「いえお嬢様……恐らくこれは……」
王子が赤くなったのを見て何かを察したミルに止められだまるレナ。
少しして決心したのか王子が続きを話す。
「実は! 俺……恋しちゃったんだ〜!」
「…………は?」
予想外の言葉に反応に困るレナ。
「実は俺同じクラスの女子に恋をしてしまったのだ! しかしその女子は強い男が好みだと言う!」
「うむ……それで?」
「それでだな! 今度の学園コロシアムで優勝して告白したいと思ってな! そのための特訓をするために学校を休んだのだ!」
なんとも身勝手な理由で学校を休み失踪した王子に呆れて言葉も出ないレナ。
「ヴァンパイアの学校に通ってよくわかったが人間はヴァンパイアに比べて弱い! 今のまま授業に出ていては一向に強くはなれないのだ! だから逃げたのではなくてだな……」
「もう良いのじゃ……お主バカじゃな……」
「バカとはなんだ! これでも俺は真剣だ!」
まっすぐな目でレナを見つめる王子。
確かに真剣なようだがやはりその考えはバカとしか言いようがない。
「ヴァンパイアと人間では体の作りからして違うのじゃ……種族として違う以上身体能力にも違いは出るのじゃ……その差を埋めるのはほぼ不可能じゃぞ」
「そんなことはわかっている! それでも俺は勝ちたいのだ! それに好きな人に振り向いて欲しいためだけに強くなるんじゃない!」
「……ほぉ? 」
「俺は王子だ! いずれ国を継ぐことになる……その時国民を守れないのでは話にならんのだ! だから国民を守るためにも強くなりたいのだ!」
王子の意思が本物だと言うことは目を見ればわかる。
お騒がせな王子だが一応そういったことを考えいるのだな、と少しだけ見直したレナ。
「それで学校だけでは物足りずまた他のものに探されるのも嫌だからと失踪したのじゃな?」
「……連絡をせず魔王であるお前の留学生活を邪魔したことは謝罪する……しかしこれは!」
「もうわかったのじゃ……仕方ないの〜妾は数日間こっちに滞在することになっておる……その間にお主を妾が直々に鍛えてやるのじゃ」
王子の行動はバカだがその思想には少なからず共感できるレナは王子を鍛えることに決めたようだ。
「本当か! 魔王直々に鍛えてもらえるなら俺も強くなれるはずだ!」
「当然じゃな! しかし妾は厳しいぞ?」
「望むところだ! 魔王直々の修業がどれほどのものか見せてもらうのだ!」
「!?……」
やる気だけは人一倍ある王子。
そんな王子にあの日の勇者が重なって見えたレナは一瞬動揺したがすぐに冷静になる。
「ではさっそく課題を言い渡そうかの〜」
「なんでもかかってこいなのだ!」
どんな課題が来ようとも乗り越えられると言う自身たっぷりの王子。
そんな王子にレナが出した課題は……
「ではミル……この鈴を持ってこの王子から逃げるのじゃ、範囲はそうじゃの〜この町内で頼むのじゃ」
「私ですか? 別に構いませんが本気で行ってよろしいでしょうか?」
「うむ構わんのじゃ! それでは王子よ! このミルを日が暮れるまでに捕まえ鈴を奪うのじゃ! それでは始め!」
王子の返事も待たず速攻で課題を始めるレナ。
レナの合図とともにミルは一瞬で姿を消した。
「おっしゃ〜! 絶対に捕まえてやる!」
こうして魔王直々の特訓が始まったのだった。
恋ゆえに人は悩む




