初めてのたい焼きと父の記憶
海を堪能した3人は商店街に向かっていた。
「たい焼き、たい焼き〜」
他のお菓子など見もせずにたい焼き屋に向かうネナ。
フレア達は他の場所を周りたかったがまずはネナについていく。
「あんたほんとにたい焼き好きね……」
どこに行ってもたい焼きのことを考えているネナにもはや感心を抱くレベルのフレア。
「ご当地たい焼きは絶対外せないよ〜」
満面の笑みで言うネナはスキップをしながら歩く。
観光ガイドに載っていたご当地たい焼きをよほど食べたいようだ。
「ご当地たい焼きって何が入ってるんですか〜?」
観光ガイドを見ずに寝てしまったシキは中身が何か知らない。
「確か……」
「ついたー!」
フレアが中身を言うより先にたい焼き屋の前に着く。
たい焼き屋の前は思ったよりも長い列ができていた。
「結構人気なのね」
「たい焼きだからね〜」
列の後ろに並ぶ3人。
この人数だと結構かかりそうだ。
「そういえばネナはなんでたい焼きが好きなの?」
ここまでの執着を見せるのはネナの性格から考えると珍しい。
よほどの事がない限りここまで執着することはないと思う。
「んーと確かー……」
「もう無理〜」
魔法の使いすぎで体力がなくなってしまったネナ。
今日も朝から死霊魔法の練習をしていた。
「少し休憩しようか」
ネナの父は飲み物をネナに渡す。
ネナはお父さんに死霊魔法を教えてもらっているのだ。
死霊魔法は時間帯によって難易度が変わる。
明け方と夜は割と成功しやすいのだ。
「お父さん〜本当に死霊魔法極めたら楽できるの〜?」
ネナが死霊魔法を覚えようと思ったのは楽に労働力が手に入るからと言われたからだ。
しかし魔法の練習はかなり厳しい。
そもそも死霊魔法自体の難易度がかなり高くそう簡単に使える魔法ではないのだ。
「楽できると思うんだけどな〜現にお父さんはゾンジィとかゾンビメイドの子達に家事とかやってもらってるし」
ネナの父もネナと同じで家事などをするのがめんどくさくて死霊魔法を習得した人だ。
そのため教え方もかなり適当になっている。
「ん〜なら頑張る〜」
まだ小学生ぐらいなのに超がつくほどのめんどくさがりなネナは楽をするためなら本気で習得しようとしていた。
「お〜その調子で頑張れ〜」
正直ネナが死霊魔法を習得しようがしまいがどうでもいいネナの父は飲み物を飲むと街に出かけてしまった。
「お父さんは勝手だな〜」
娘を放ってどこかに行ってしまった父に少し呆れるネナ。
「お父様にはお父様なりの考えがあるのでしょう……多分」
誰もいないはずの場所から声が聞こえる。
「え? だれー?」
さっきまで周りには誰もいなかったはずだし声が聞こえるわけはない。
しかし今謎の声が話しかけてくるこの状況に少し戸惑うネナ。
「あれ? 私はあなたに呼ばれてきたのですが……」
「私が?……魔法が成功したのかな〜?」
どうやら練習していた魔法がいつのまにか成功していたようだ。
「契約を結びたいのであなたの名前を教えていただきたいのですが……」
「契約?」
魔法のやり方は習ったが契約の仕方は教わらなかったネナ。
なんのことかもわからないネナはとりあえず名前を教えることにした。
「私はネナ〜あなたの名前は〜?」
「私に名前はないのですが……もしかして新人のネクロマンサーさんですか?」
名前を教えると契約が終わり幽霊の姿が見えるようになった。
聞くとどうやら幽霊には名前がないのが常識らしい。
正確には生前の名前を忘れてしまっている幽霊が多いそうだ。
「名前がないの〜? なら私がつけてあげる〜」
「いえ……別に名前がなくても私の力は……」
幽霊の力は名前がなくとも使えるしこんな風に名前をつけようとする契約相手は初めてで戸惑う幽霊。
「ん〜幽霊の女の子だから〜ゆゆ! あなたの名前はゆゆね〜」
「ゆゆ……わかりました私は今日からゆゆを名乗りましょう」
ゆゆは少し嬉しそうに微笑む。
心なしかゆゆの体が最初の時より濃く見えるネナ。
「ゆゆはどんな事ができるの〜?」
楽がしたいネナにとっては何ができるかが1番重要だ。
「私はそうですね……戦闘もある程度できますが魔法のサポートや知識を使ったものならお役に立てますよ!」
ネナは少しがっかりしたように肩を落とす。
「労働力にはならないか〜……まぁ知識は助かるかな〜」
ネナの父のようにスケルトンやゾンビを召喚したいネナ。
「労働力が欲しいのですか……少しだけなら魔法をサポートできますのでスケルトンを召喚してみましょうか?」
「おっけ〜やってみよー」
ゆゆのアドバイスを聞きながら何度もチャレンジしているとしばらくして召喚に成功した。
「おー! できたよ〜ゆゆ〜」
「おめでとうごさいます! ネナさん!」
召喚の喜びに浸る2人の元にお父さんが帰ってきた。
「お父さんみて〜ゆゆのおかげで召喚できたよ〜」
召喚したスケルトンを見せるネナ。
「おお〜ゆゆっていうのか〜ありがとう〜」
律儀に礼をするお父さん。
「じゃあネナ〜初成功祝いにお菓子でも食べに行くか〜」
「やった〜!」
ネナはお父さんに連れられて街に向かう。
街に着くとお父さんはたい焼き屋に向かった。
「おっ! 今日は娘さんときたのか! ちょうど今日は新作を作ったんだ試しにどうだい?」
「いいね〜じゃあそれで〜」
新作のクリームたい焼きを頼むお父さんからたい焼きを受け取るネナ。
「お魚さんの形してるね〜」
「これはたい焼きっていうんだよ〜美味しそうでしょう〜」
いい匂いのするたい焼きを頬張るネナのお父さん。
それに続いてネナも頬張る。
「おー! なにこれ〜! すごい美味しいよ〜!」
「そーだろ〜お父さんもこれ好きなんだ〜」
あっという間にたい焼きを食べきるネナ。
「お嬢ちゃんすごい美味しそうに食べてくれるじゃねーか! もう一個サービスでやるよ!」
「ほんとー!ありがとう〜おじちゃん〜」
ネナはたい焼き屋のおじちゃんからたい焼きをサービスしてもらうととても嬉しそうに食べようとしてやめる。
「ゆゆにも半分あげる〜」
「え? でも私は……」
幽霊のゆゆにもたい焼きを分けようとするネナ。
ゆゆは幽霊になってから初めてものを分けてもらい戸惑いつつも受け取る。
「ゆゆのおかげで召喚できたからゆゆも食べなきゃ〜」
「あ、ありがとうございます!」
少し涙ぐみながらゆゆはたい焼きを食べる。
「美味しい〜?」
「はい! とっても!」
ネナは満面の笑みをしながらたい焼きを頬張るのだった。
これがネナの覚えている中で最後の父との思い出だ。
この後父がどこに行ったのかは覚えていない。
ただ今も時より父から手紙が届くので心配はしていないネナだった。
「ごめんね〜忘れちゃった〜」
ネナは少し考えた後忘れたふりをした。
「こんなに好きなのに忘れちゃうなんてネナらしいわね」
「そうですね〜ネナさんらしいです!」
フレア達は納得したように別の会話をし始める。
ネナは少し懐かしそうにしながらフレア達の会話に参加する。
(……お父さん元気かな〜)
今どこにいるかわからない父に思いはせるネナだった。
今回も過去回だけど次回からは旅行に戻ります。




