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1-2

 始業時間となった。

 怪物『シメーレ』の生息する未踏破エリアへ同業者たちはゾロゾロと向かう。

 準備体操を終えた咲良がハキハキとした声で口を開く。


「面倒くさいけど行きますか!」


「ああ、そうしよう」


 愛想だけの返事を悠志がしてから二人は未踏破エリアに足を踏み入れた。


 未踏破エリアは一部を除いてほとんどが自然にあふれかえっている。所々にある謎のオブジェと相まって安っぽいホラーゲームのような雰囲気を醸し出している。


「何を好き好んでこんな所に男女で来るのかしらね?」


「野営じゃないか? それか都市伝説を確かめるためとか」


「都市伝説ってあれでしょ。未踏破エリアで生活している土着民族が生活しているって言う噂でしょ。ここで働いているあたしらでさえ見たことないんだし、所詮は噂は噂」


「俺もそう思うけど。火のないところに煙は立たないって言うしね」


「今日日そんな原始的な生活を送る人がいるって言うのは信じがたいわね」


 生産性のないおしゃべりをしながら二人は遭難者を探す。

 その直後、二人の目の前に大蛇の怪物が現れた。

 鷲の翼と襟巻きのような器官が特徴的な、まるで蛇神を降臨させたかと錯覚させるほどの神秘性を感じさせる生物へと進化を遂げていた。


 シメーレには特有の因子が含まれている。その因子によって生物は進化する。


「おっと晩飯。ってあれ腹デカくね?」


「デカい。それより、なんでこっちに向かってるかが聞きたいけども」


 シメーレと戦うトレイターは特別な武器を携行している。目には目を歯には歯を理論でシメーレが持っている因子を含んだ武器を使用出来るのはトレイターだけだ。


 悠志は改造されたガントレットとグリーブ。

 咲良は歴史ある日本刀と番いになっている脇差し。

 二人は武器を構え、蛇のシメーレとの間合いを詰めようとする。

 しかし、蛇のシメーレの口に一人の人間の下半身を確認することができた。


「面倒くさい! 人の方は任せるよ」


「了解」


 咲良がぶっきら棒に言い、蛇のシメーレとの間合いを更に詰める。

 抜刀し、跳躍。蛇のシメーレと真横に並び、貫通させない程度の威力で頭を繋ぐ繋ぐ背骨部分を日本刀で突く。

 直ぐに抜き取り、蛇のシメーレのヘイトを向けられながらも怯むことなく、第二撃を顎関節部分にたたき込む。

 絶妙な力加減で斬り込み顎を外す。


「斬り上げするから」


「腹傷つけないようにね」


「任せとけって」


 悠志はスライディングしながら食われていた人を救出する。そのまま安全なところまで走りきった。

 咲良は悠志が間合いから外れた瞬間に蛇のシメーレの腹部を撫で斬った。


 腹部が割れ内臓が見えるようになった刹那。

 悠志が蛇のシメーレの心臓を鷲づかみし、捻るようにして抜き取った。


「お疲れ。助けた人はどんな様子?」


「息はあるけど――」


「あんたたちは……?」


 悠志と咲良が振り返ると、先ほどまでシメーレに食べられかけていた一般人が目を覚ましていた。

 その様子を見て悠志が駆け寄る。


「君の他にあと三人が捜索を依頼されているんだ。残りの人らはどこにいる?」


「いやいや、どうやって助けてくれたの!?あの時あたしは怪物に食われかけていたって言うのに」


「君らの言うところのシメーレ対策部隊。トレイターっていえばわかるだろう。そんなことより、残りの三人はどこではぐれた?」


「一人はそいつに食べられて。その次にあたしだったから後の二人は知らないよ」


 わかった、と言い初対面である彼女でも見て取れるほど困った表情を浮かべた。

 その話を聞き咲良は直ぐに蛇のシメーレの胃袋を切開した。


「要は消化してなければいいんでしょ。多少死にかけでも幸運なことにここに世間一般で言う人の見た目をした怪物が二人もいるのよ。安心なさい」


 咲良が目線を合わせようとはしなかった。

 その姿を見てか、彼女は悠志にのみ聞き取れるようなか細い声で呟いた。


「あり……がと。本当はヒーローみたいだね」


 そう言って彼女は意識を手放した。どことなく、安心しきった表情を浮かべている。

 悠志は小さいため息を吐いた後、電話をかけながら咲良の元へと向かった。


「こちら織部・椿ペア。一般人の女を一人発見しました。ちょうど今、気絶しましたが命に別状はなさそうです。もう一人は――」


 悠志が言葉を切るようにして咲良が携帯を横取りする。


「もう一名も確認。命の問題は大ありだけど、どうします?薬使いますか?」


 返答が来ないまま少し時が止まる。

 悠志はシメーレの胃から助け出した一般人男性を確認する。

 弱いながらも脈を刻んでいる。まさに、生きていることが奇跡だ。


「――わかりました。応急処置して連れて帰りますね」


 咲良はそう言って電話を切った。

 そしてポケットから錠剤を取り出した。


「言葉は悪いけど、この人よく生きてたな」


「死んでたけどあたしが蘇生した」


「賢者かよ」


「呪文じゃなくて物理よ?心臓マッサージ」


「そんなことはわかってるよ」


 咲良は微笑みながら、虫の息の男に錠剤を服用させた。

 この錠剤は言わば回復役である。


「さあて、後は連れて帰りますか。悠志は男の方おんぶしてってね」


「了解だ」


 悠志と咲良は負傷した一般人を背負ったまま、来た道を引き返した。


 人類を絶滅の淵まで追いやった異形の生物シメーレ。

 対抗するために誕生した新人類のトレイター。

 終わりなく、だれも得をすることのない戦いが再び幕開ける。

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