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悠志が自室に戻ると、咲良がお出迎えをしてくれていた。レベルⅣとの戦いが嘘であったかのように元気そうだった。
「おかえり。今日は元気いいねぇ。何かあったの?」
「あったけど、よくわかるね」
「そりゃあ、顔に出てるからね。んで、どんなことがあったんだい?」
話しをながら寮内に入る。
悠志は水を一口飲んでから話をした。
「宿泊学習の時に、急ぎすぎて二階から飛び降りたんだよ。その光景を見られててね」
「……マジで?」
咲良はきょとんとした表情で悠志を二度見返した。
トレイターであることがバレるのはトレイターとしては死活問題であるからだ。
「トレイターであることはその子だけにしかバレていないよ。それに、いい子だったからだれにも言っていなかったんだ。それで今日の放課後にそのことで話をしたんだ」
「それでぇ?」
先ほどまでとは表情が一変し、にやにやしながら咲良は話を聞く。
「嬉しかった。ただ単純に。差別の対象に見られているトレイターの世界を知りたいって言っていたし。ホントに、嬉しかった」
「――良かった」
「え?」
少しの間の後、咲良が言葉を続けた。
「悠志、学校にまともにいけてないからあたしとしても心配してたんだよ。クラスになじんでるのかなーって。でも、話を聞いて安心した。一人だけでもいいからそういう人とで会えることができて」
その台詞の後、なんとも言えない微妙な間が部屋を包み込んだ。
「それはそうと、この前言っていた電話番号の女の子かい?」
咲良はそう訊ねた。
悠志は交換したばかりの連絡先から送られてきたクラス写真を見せながら答えた。
「この子。名前は月宮光里」
「へぇ。大人しそうな感じねぇ」
咲良はにやけながら悠志を小突く。ニヤケ顔が止まらないと言う言葉が似合っていた。




