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1-18

 レベルⅣシメーレ討伐から四日後。火曜日に悠志は学校で説教を受けていた。

 宿泊学習を無断で抜け出したのだから仕方が無い。しかし、中には関係の無いことに対しての忠告も含まれており、悠志にとっては朝から耳の痛い話であった。


 その一件もあってか、悠志はクラスでもかなり浮いた立ち位置となり「何で普通に学校に来ているの?」という気まずい視線を一身に浴びることとなった。


 気分を入れ替え、真面目に授業を受けていたが、ゲル曜日の分の授業がまるっきり抜けているので何を言っているのかがさっぱりだった。

 教科担当教師も、関わりたくないという本心が見え見えで悠志との目線は一切合わなかった。

 それでも時間の進みは早く、もう昼の時間となった。この日も食堂へ行くために財布を持って悠志は立ち上がる。


 学食で普段より奮発してチキン南蛮風親子丼を注文した。すると学食のおばちゃんからは「今日は贅沢かい? 一日見てなかったしサービスしとくよ」と一言余計だが、粋な計らいで味噌汁をオマケしてもらえることになった。


 来て良かったな、と内心、悠志は思いつつ席に着く。

 名前だけで美味そうと感じ頼んだ今日の昼食はカロリーが高そうだ。チキン南蛮を卵でとじられたものが乗っていることはわかっていたが、まさか一緒に乗っている千切りキャベツにマヨネーズがかかっているとは。


「隣いいかな?」


 その声で我に返った悠志は顔を上げる。そのまま、考えないひな形的に「いいですよ」と返事をした後で二度見をした。普段は学食に来ていない声の主だったからだ。


「久々だね。元気だった?」


 キツネうどんをテーブルに置き、光里は訊ねる。どことなく、教室にいるよりは明るい印象を受ける。


「ま、まあ元気だったよ」


「なら良かった」


 光里はそれだけ言うと一度台詞を区切ってから再び、話を続けた。


「ところで話は変わるんだけど、今日の放課後なんだけど、少し教室で待っててもらってもいいかな?」


 小声でそう言った。恥ずかしそう、と言うよりは話ずらそうと言う印象を受ける。


「俺は全然いいけど、少し遅くなるよ?」


「待ってるからいいよー」


 悠志は内心、心配しながら水を飲んだ。もしかしなくても、宿泊学習のことを聞かれるとおおよそ察しがついていたからだ。

 その後の話はたわいもない話で、光里が放課後に話す内容は今聞き出すことはできなかった。




 午後の授業でも依然、悠志は浮いた存在であることには変わりなかった。少しでもの内申点を保つため、授業は真面目に取り組んだ。

 そうこうしていると放課後になった。

 教師に呼ばれていた職員室前へ行き、お説教を受けた後に奉仕活動をすることになった。奉仕活動といっても立派なことではなく掃除だった。


 奉仕活動が終わったのは三十分後のことであった。

 悠志は話すことを考えながら教室に戻る。扉を開けると、生徒が光里しかいなかった。

 光里は悠志が帰ってきたのこ見ると、待ってましたと言わんばかりに悠志の元へと歩み寄った。


「意外と早かったね」


「そんなことも無いと思うけど……月宮しかいない感じだし」


「今日から部活の仮入部だからね。部活に入りたくない人たちはみんな帰っちゃったけど」


 それはそれとして、と光里は一度、言葉を切る。そして悠志の目を見て言葉を続けた。


「織部君ってさ、もしかしてだけどトレイター?」


 その話だろうな、と悠志が思っていたとおりだった。淡々と話を続ける。


「だとしたらどうする?」


「もしそうだったら……私のお願いを聞いて欲しいの」


「迷惑じゃないよ。むしろ嬉しいっていうか――」


「お願い?」


「迷惑じゃなければだけど、私の知らないことを教えて欲しいの」


 悠志は言葉につまる。会話をしている割には歯切りの悪い返答をする。


「知らないことって具体例は?」


 咄嗟には光里は口を開かなかった。悠志と同じように、絶妙な間を置いてから話を続ける。


「あんまり詳しいことは言えないけど……安全を守ってくれている人たちのことをもっと知りたいから……かな?」


 照れくさそうに光里ははにかんだ。

 悠志は少し考えてから返答をする。


「わかった。教えれる限りのことは教えるよ」


「え? ってことは本当なの?」


「言いふらさないでよ。バレると色々と面倒だから」


「うん! 絶対に言わないよ!」


 物凄く嬉しそうに光里は微笑んだ。


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