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1-12

 予鈴が鳴り、悠志は教室へと戻った。

 光里を席から横目で見ると読書をしていた。ブックカバーでタイトルはわからない。


 一呼吸置いてからノートを写す内職を始める。

 午後からの授業からは、授業中の教科のノートと内職のノートを同時進行で進めた。おかげさまで、手が休まる暇が無いくらいに忙しい授業だった。

 そのこともあってか、放課後は直ぐに訪れた。


 眠そうな顔をしながら光里は悠志に訊ねた。


「今日、部活動見学できるって思ってたけど早く帰らないといけないらしいね」


「そうらしいね。見学しようって話はまた今度。それと、ノートありがと」


 悠志は借りていたノートを手渡した。


「はや! もしかして授業中に内職してたんじゃないの?」


「そうだけど……寝るよりは良いかなって」


「私は睡魔と戦っていただけで寝てないからね?」


 若干、頬を赤らめながら光里は弁解した。一呼吸置いて、再び言葉を紡ぐ。


「良かったらだけど、近くまで一緒に帰らない? 家、近所みたいだし」


 数秒間。気にもならないくらいの一瞬だったが、悠志は考えてから返事をする。


「近くまでね」


 教室内の下校ラッシュに少し遅れながら二人は学校を後にする。

 バス停で話したこともない生徒たちと共に到着時刻まで待つ。到着時刻まで悠志と光里との間には気恥ずかしさのためか会話はなく、スマホを見つめるわけでもなかったが無言で時は過ぎていった。


 定時より少し遅れてからバスはやってきた。

 扉が開いてからゾロゾロと学生は乗り込み始める。

 光里は目線と手で「ここ!」と訴えてきたので悠志は隣に座る。察してくれたと光里は小さくガッツポーズする。


「えーただいま、一部道路が封鎖されているため三分遅れて運行しております。遅れが生じたことをお詫びします」


 ひな形な遅延アナウンスの後バスは出発した。社内はあからさまにざわざわし始めた。

 悠志だけでなくとも大体の同乗者は理由を理解することができた。この前のデモ団体が集会を行っていると言うことくらいは想像することができた。


 悠志は嫌な汗をかき固唾を飲む。現状バレることがないとはいえ、心配事が増えることは良いことではない。


 悠志から溢れ出るオーラを察してか、光里は外の景色を眺めていた。二人の間で会話が盛り上がることはなく、時間は過ぎていった。

 数十分経過してから悠志と光里の下りる停留所に到着した。

 下車して直ぐに怪しげな団体からのビラ配りの洗礼を受ける。

 悠志にとっては耳が痛い、旧来最後のジャンヌ・ダルクと称される少女を神とした新興宗教団体だ。取り憑かれたに近いその行動はジル・ド・レイと言ったところか。


「私こっち側だけど、織部君は?」


「反対側だね。それじゃ、気をつけて」


「ありがと、じゃあね」


 手を振りながら光里と分かれる。

 悠志は回り道をしながら寮へと向かうことにした。


 光里と別れてから数分と経たない内に別の団体とエンカウントする。

 声高らかな罵声とプラカードを掲げた集団が目の前から現れた。悠志を含むトレイターではない一般人でも、出会いたくないデモ団体の一角だった。


「呉越同舟かよ」


 顔に出さないようにしている悠志でもあからさまに嫌そうな顔を浮かべる。

 前者団体はトレイター容認派閥。後者はトレイター反対派閥。共通しているのはどちらも過激派。

 抗争待ったなしだ。

 触らぬ神に祟りなしと悠志は路地裏を全力ダッシュで帰路を急いだ。

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