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ここはぼくらの秘密結社  作者: たかはしうたた
ここから始まるぼくらの秘密結社
29/38

遺跡は明確な意思を以って襲い来る

 

 壁面の様にそそり立つ大木。

 巻きついているツルは何故遺跡に近付く程、その身を増やしていくのか。


 その『何故』に、妖精は気付かない。


 ヒタキが処理していた魔物たち。

 その魔物達が顔を出さず、平然と小さな命二つが魔物に狙われることなく、何故今も歩いていられるのか。

 2人は、気付かずに歩む。




 ~~~~~~~~~~~




 長い、長い時を。悠久の時をただこの場所で過ごした。



  「トラップを作動。作動後、10分を超過致しました。魔力の回復が行われていない為スリープモードを解除致します」


 遺跡の一画。

 真っ暗で何も見えない部屋。部屋の中央の空間に二次元のモニターが表示される。

 モニターが一本の光を下に向け照射しすると、高速で動きだし絵を描き始めた。


 部屋全体に立体で描かれたそれは、時計の森を含む遺跡の全容である。


 描き終わると同時に、ウォン、と音を響かせスリープ状態から回復した。

 だが、最低限の装置を使える程である。全機能の二割程を活性させただけ。それ以上は長期的なスパンで支障が来るためだ。

 遺跡の機能を維持しつつ、長い時を過ごすにはこうするしかなかった。

  必要な魔力を最低限に抑えて、オートでトラップのみ起動。発動から10分以内に、捉えた獲物から魔力の回復が行われなかった場合のみ、スリープ状態から回復。


 本格的な迎撃体制に入る為に。


 トラップには一度かかった獲物をマーキングする仕組みがある。

 立体で描かれた地図には、光点が3つ、点滅を繰り返しながら移動している。


「ターゲットの生存を確認。補食システム、作動」


  ___ 遺跡のシステムを維持するには足りない。


 今まで捕らえていた獲物では、足りない。潤沢な魔力が必要だ。とびっきりのご馳走が。

 マーキングから三匹の個体の魔力量を精査する。


 ____良い、この三匹の個体は良い。食料足りうる。


 生け捕りにして死ぬまで魔力媒体として過ごさせれば、何割かの機能を使用できるだろう。

 やらなければ、守らなければならないものがある。だからこそ。


 そして遺跡は牙をむく。己が本能を乗せた牙を




 ~~~~~~~~~~~



 モゾリ


「ん?」

「どうしたの?ネイシー」

「今、なんか動いていたようなー」


 2人は立ち止まりキョロキョロと辺りを見回す。が、どうやら何も動いては居なさそうだ。


「なんも動いてないわね」

「なんも動いてないね、メイニーがそう言うんだから」

「さっすがネイシーッ。あたしが言うのをあなたが認めたんだから、何も動いてないのは間違いないわね!」


 よく分からない理論も2人ならば通じ合う。こくりと納得しあった2人は、ふわふわと前に進む。


 ___モゾリ


「うーん、やっぱなんか動いてる音がするよ、メイニー」


 辺りをまた、キョロキョロ見渡すネイシー。


「それじゃあ何かあるかもしれないわね!あたしが認めることは、あなたが認める事じゃないんだから!」


 難しい顔をしてそう言うと、メイニーもネイシーに倣い、キョロキョロと辺りを見回した。


 ___モゾリ


「あ!ほら見てメイニー、動いてるよ!」

「んー?どこどこー?あたしには見えないわね」

「ほらー、あそこだって」


  指を指して教えるがメイニーは見えないらしい。

  もう一度突き刺す様に指し、場所を教えるネイシー。動いて居るのがやっと分かったのか、メイニーも「あー!ホントだー!」と凄く嬉しそうだ。


「あれ、何が動いているのかしら? んー、木かな? オッド?」

「アハハ、オッドじゃないよー。んー、ツタ? だと思う?」

「まあ何でも良いわっ。でも知らなかったわ。 ()()()()()()()()()()()()()()


 モゾモゾと動くツルを見ながら、そんな話をしている2人に突然、ツルがこちらめがけて襲ってきた。

  それを見ていた2人は、鬼ごっこがまた始まったと大はしゃぎ。

 魔法陣に触れていないのに作動した事の理由さえも分からずに、妖精らはただ、その状況を楽しむ。


「キャハハハ! またきたわー!」

「アハハハ! にっげろ〜!」


 そう言って先ほど同様逃げる。先ほどとは勝手が違うのか、逃す気はないという意思の表れか。

  逃げようとした先にも絡み合う様にツルが伸びてきた。全方位を囲むと、そのまま2人へと迫る。

 2人はそれを、くるりと空中を一回転して避ける。



「さっきと……ちがっうっねっ!メイニー」

「あんまりっ、しゃべるっと……ベロ噛んじゃうわっよ」


 そう2人が言うが、喋るのがつらそうなほど熾烈であった。先ほどとは違い、余裕がない。

 小さな身体だから逃げ切れているのだが、2人の妖精の動きを学習しているのか、段々と逃げ道を塞ぐように迫ってくる

  幾つのもツルが上下左右、空間を飲み込む様に2人に迫る。そのツルも細いものから太いもの、速度に緩急が付いていてたりと、対応も困難だ。


  更には


「待っ。何あれなんか・・・」

「噛まれたら痛そうねっ」


 食虫植物を大きくした物がいくつも、木の壁面を裂く様に顔を出した。口を拡げて噛みつかんとこちらに迫る。


「っ!」


 ネイシーは目だけそちらに向けて、迫る食虫植物を見る。

 インパクトの瞬間にふわりと一瞬だけ浮かび上がりその回避。だが、その隙を見逃さんと、ツルがネイシーの身体に迫る。


「これは、さけられないや」と呑気に呟いたネイシーは、ツルに捕まり身体を拘束された。スピードの速い、細いツルが幾重にも巻き付きそのまま飲み込まれるように、姿が見えなくなった。


「ネイシー!」


 ネイシーの様子を常に横目で見ていたメイニーは、捕まったことをわかるやいなや、顔をそちらに向けて叫ぶ。

 その隙が仇となった。

 同様にメイニーも幾つものツルを捌いていたのだが、意識を離した隙に身体に一本のツルが巻きついた。


「っ!」


 声をあげる暇もなく幾重ものツルに巻きつかれ、小さな妖精の身体は飲み込まれるようにその姿を消した。



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