地図は逆さにお弁当を持って…うん! もう忘れ物はない!
最初に気づいたのはネイシーだった。
「あれー? メイニー。追っかけてきてないよ?」
「あれ? ほんとだー。ちぇ。なーんだつまんないのー。」
後ろを振り返ったネイシーがツルがこちらまで追って来ていないことに気付き、激しくパタパタしていた羽を緩慢にする。
「せっかく面白かったのに、鬼ごっこもおわっちゃったー」
「「あーあ」」
2人は肩で大きく落とし、ため息を付いた。
そこで、メイニーが何かに気付く。落としていた肩を跳ね上げ、当たりを見回す。
「あっ!」
「どうしたの?メイニー」
先程までとは違い静かな空気が広がる。
見渡す限り生い茂る木々に、先程より多くのツルが巻き付き、空を横切るツルも密度を増す。
「ここ! どこだ!」
「むっ! どこだ!」
2人は「ザッツライト君」が照らし出す小さな灯りを、キョロキョロと動かした。
「分かんない! どうしよう!」
「分かんないね! あ!」
今度はネイシーが何かを思い出した様だ。
背負っていたリュックをごそごそと漁る。
「じゃじゃーん!思い出した!地図!」
「そーだ!ペテクベルディに貰った地図があったね! これで安心だー!」
2人はこれで何とかなると大喜び。
早速地図を広げる。 ____上下逆さまに
「よし」っと掛け声をかけながら地図を開く。
「うむむむ」
「これは……手強い相手だねメイニー」
「大丈夫! あたしにまっかせておきなさい!」
地図の見方も分からない2人は、地図を見ながらうんうんと唸るが、メイニーが強がり、「任せておけ」と胸を張ったので、ネイシーの目がパァーッと輝く。
「さっすがメイニーだね! すっごーい」
「あたしはメイデイ様に創られたのよ!あったりまえじゃない!」
ネイシーもメイデイに創られた存在だが、そんなことに突っ込むものはここには居ない。残念ながら、突っ込み不在で話しが進む。
もう一度地図を見て、キョロキョロと辺りを見回すメイニー。
「うーん、あたしが見た感じだと、だいたい地図のここら辺ね!」
周りの景色から現在地を推測!
景色を見ても分かるわけがないが第六感を働かせ、メイニーは自信満々にビシッと地図を指す。
今は南に居る。指は地図の北側を指していた。
ハズレである。
「なら、えーと。どこに行こうとしてるんだっけ?」
「うーーん。さあ?」
話しをよく聞いていなかった2人は、目的地を思い出せない。
「うーん、えっと…あ! ほにゃらら遺跡だ!」
やっと何とか思い出したメイニーはしてやったり、と言う顔だ。
ネイシーも「そうだ!ほにゃららだ!」と思い出せたことが嬉しそうだ。が、正解ではない。△である。
「あたしが地図を見た限り……ほにゃららはここね」
地図の中心に、大きく書いてある遺跡の絵を見て、メイニーはそう推測する。『空白の棲家』をビシッと指差す。
当たりである。
「なら私は今ここに居るから…」
北では無く、今は南に居る。
ハズレである。
「なら、下に行けば良いのね!」
ハズレである。
「流石メイニー! すっごーい!」
「あたしに任せておっきなさーい!」
キャッキャと楽しそうに話す2人は、自分たちが言っていた南…ではなく、北に歩き始めた。
なんと、当たりである。
奇跡的に正解ルートを当てた2人、地図は地図の役目を成し得なかったが、結果オーライだ。
「あ!」
またもや何かを思い出したメイニー。
「どうしたの?メイニー」
「すっかり忘れてたけど、そう言えばお弁当にサンドイッチ作ってもらってたね!」
「ほんとだー! 食べながら行こーよ」
「見てみて! たまごサンド! あ! トマトのもあるー!」
「いっぱいあるー! おいしそー!」
リュックをガサゴソと漁り、サンドイッチを取り出した2人はお弁当を片手にわいわい楽しそうだ。
ふいにネイシーが足を止める。
「うーん。なんか忘れている様な…」
「ほらネイシー! 何してるのー? 置いていっちゃうわよー!」
「今いくー、待ってメイニー」
何かを思い出しかけて足を止めていたネイシー。声がかかり心に引っかかていた何かをすっかり霧散させ、慌ててメイニーの後を追いかけた。
2人の迷子は、奇跡的に選んだ遺跡の方角へと進んでいくのだった。
____ヒタキの存在を忘れたまま。




