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ここはぼくらの秘密結社  作者: たかはしうたた
ここから始まるぼくらの秘密結社
16/38

末っ子のわがまま?上等。無邪気な大人は子どもをビビらす

 


「ジル、俺は思うんだよ」

「こ、今度は何を思ってんだ」


 ___ハッハッハッハッ


 ジルが荒く呼吸を吐き出す。



「木を隠すなら森の中っていうじゃん?でも俺が森の中に隠れてもすぐ見つけられる。おかしくね?」


 ___ハッハッハッハッハッハッ


「そ、そりゃオッドがペラペラうるせーからだろ!ふざけんな!ゼェゼェ、なんで隠れてる最中もずっと喋ってんだよ!」

「俺は喋ってねーよ」

「どんな神経ありゃそこを否定出来んだよ。ずっと喋ってただろ!」


 ジルの背中にいくつもの枝を絡ませて、肩車の形で背負われているだけのオッドが後ろを見る。…動くな、煩わしい。

 只今2人は『浮世の迷宮』に向かう真っ最中。絶賛魔物の群れに追い回されていたジルはオッドのまさかの発言に物申す。

 ジルは走りながらも、器用にオッドを怒っている最中であった。


「オッドのせいでこうなったんだぞ!反省しろ!」

「お?やばいぞ。心なしか追いつかれてる、スピードアップだジルサンダー」


 ジルの言葉を華麗にスルーしたオッド。

 ジルサンダーと名前を決定したらしく、「へいへい!」と鞭を打つようにうピシピシと叩き、乗り物認定されたらしいジルを無自覚に煽る。


「おまっ‥‥‥1から10までふざけんなあ!」





 〜〜〜〜〜〜〜〜




 時は少し遡り





「解散じゃねーよ俺は行かねーって」


 空気を読まないジルの言葉が、会議の終わった室内に響き渡る。

 ジルの言葉にメイデイは親が子どもに問いかけるように話しかける。


「ジル…行きたくないか?」


「ああ行きたくないね、博士の言うことを聞くなんて真っ平ごめんだからな。いつもなんかある度に懲罰房に入れやがって。産まれてからこの方、あそこのくっさい飯を食べて過ごす時間の方が長いってどんな生き様だよ。お前のせいで俺のご飯の大半が懲罰房だよ!」


「そんな嫌か?」

「あーお前の力になるくらいなら死んだ方がマシだね」

「そうか……」


 顔を伏せてそう呟くメイデイ。それを見て、ここまでハッキリ言えば少しはコイツも反省したか?と内心勝ち誇った。

 だがジルは知らなかった。その伏せた顔に、極悪な笑顔を浮かべていることを。


「なら……一度死んでみるか?」

「……え?」


 かけられた言葉に、一瞬思考が追いつかなかったジルは間抜けな声を漏らした。


「なあに、簡単な事だよ。死んでもイヤなら一度死んでみようじゃないか。死んだ後お前がどう反応するのか楽しみだ」

「はい?」


 まだ状況に頭が追いつかない。「コイツ何言ってんだ?」って顔をしたジルはキョトンと、メイデイを見る。


「よし!死のう!」

 パンと手を叩く。


「クリシュ、フェスパイア、ヒタキ。」

 名前を呼ばれた3人は瞬時に殺気を撒き散らす。


「うむ、任せておけ」

「メイデイ様の命令じゃ仕方ないわね、まあ恨んで出て来なさい。その怨念さえも返り討ちにするけどね」

「ジル・・・ばいばい」


「……は?」


 スッと目を細めたメイデイはジルを指差す。


「オーダーだ」


 そこで状況にやっと追いついたジルは思考を回す

(ヤバイヤバイヤバイ!1人でも勝てない相手を3人!?相変わらずあったま可笑しいんじゃねーの博士!)


 メイデイの目は光を拒むよう、仄暗く沈んでいく。


(コイツッ…ガチだ! たった一言、あのたった一言を聞いて即実行に移しやがった!)


「殺r……」

「待て待て待て待て!」

「おっと、急にどうした。何を待つんだ? ん?」


 ジルの慌てっぷりにご満悦なメイデイは「どしたの?」とニコニコ話す。

 言外に「死にたいんじゃなかったの?」と、込められた事を悟らせてくれる見事な笑顔だ

 その笑顔を見てまた心が熱くなるが、目の前でオーダーを待つ殺気を存分に放った3匹の狩人が、その熱さを急激に冷やす。

 安易なセリフは、この狩人たちが、俺の命を刈り取るトリガーになるだろう。


  ジルの本能がそう叫ぶ。


 癪だが…従いたくないが……その一言が冗談じゃ済まなくなる…俺は死ぬ。と、本能が叫ぶ

 その事実に、泣く泣く…半ばヤケクソ気味にジルは言い放った。


「……わーーったよ! 行きゃいいんだろ! 行きゃ!」


 その言葉とともに霧散する殺気。ホッと胸を撫で下ろすジルを見て、メイデイは残念そうに…だがおちゃらけた様子。


「なんだ、結局行ってくれるのか。全くさっきのは冗談だった訳かー。なんだ残念」


 先程の殺気に当てられて、まだ心臓をバクバクと鳴っているジルはその言葉を耳に残しつつも返事をする事が出来ない。いつもならもっと口答えしてるのに。


「全然冗談だって気付かなかったよ。冗談が上手いな、ジルは。会議の場で、こーんな上手に嘘を吐くなんて」

 

ツカツカとメイデイの方に近寄ってきていたメイデイは、ジルの耳元で、イヤな笑みを浮かべ囁く


「…今度また、同じような状況で冗談を言われたら、今度は嘘だと気付かずにすぐ殺しちゃうかも」


 ___ゾクッ

 背筋に悪寒が走る


「なんてね、冗談冗談」


 すぐに優しい父の様に、頭をポンポンとして微笑むメイデイ。

 その変わり身の早さにもゾクりと何処か怖いものを感じたジルは「し、知ってたわ」と強がりを言うことが精一杯だった。

 その後、オッド に「俺?俺は良いけど、ジル。俺の事守れよ。俺は戦う用じゃねーんだよ。護られて当然なんだ。いいか?俺に傷一つつけてみろ。俺が許さねーぞ」なんて言われてげんなりしたり、『浮世の迷宮』の情報を、ペテクベルディから一通り受け継いだりと忙しい時間を過ごしたが、何故か消えない恐怖感を抱きながら、そのまま転移陣で『浮世の迷宮』近くへと飛んだ。


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