怪談「赤い壇」
使用したお題:『コーラ』『無駄づかい』『ナイトバザー』『あか』『かいだん』
夜市に遊び呆け、帰る時間には夜遅くになっていた。
無駄遣いをしすぎて薄くなった財布を意識しながら暗い夜道を歩く。コーラの空き缶を蹴っ飛ばしながら一人寂しくで家路へとつく。静かな夜の街に空き缶が当たる金属音が響く。
3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。
まるでリズムでも刻むかのように同じ行動を繰り返す。意外と熱中してしまい、視線は下で固定されていた。歩いて蹴って歩いていく。
3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。
3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。3歩進んで、空き缶を蹴る、カランカランカラン。カラン。
リズムが崩れた。そのことがきっかけに我に返った。周囲を見回す。
周囲は電灯すらない暗い夜道、周囲の景色が月明かりでうっすら見える。
人気もなく、車の音もせず、何もないように見える。虫の鳴き声だけが遠くに響いていた。
急に暗い道が怖くなって、さっさと帰ろうと思った。足を少し早める。3歩進んで、空き缶を蹴ろうとする。カランカランカラン。
おかしい。先ほどまで空き缶を蹴っていた。しかし今足を伸ばして空き缶を蹴ろうとしたら、そこには何もなかった。
蹴り足が寂しく空を掻いていくだけで、何も蹴り飛ばすことができない。しかし、空き缶が転がる音だけが響いていた。
カラン、カランカラン、カランカランカラン。
もう空き缶は蹴っていない。それ以上に、驚いて足を止めている。だというのに空き缶が転がる音が止まらず響いている。
自分はもう空き缶を蹴っていないのに、カランカランと転がる音だけが暗闇の中響いている。止まらない。
空き缶の音だけが甲高く響いているが、それは自分が蹴ったからではない。つまり、誰か別の存在が空き缶を動かしているのではないか、と気づいた。鳥肌が立つ。
だんだんと遠のいていく空き缶の音。自分は慌てて明かりをつけようと、スマートフォンを取り出して電気を照らす。焦ったせいですぐにはつけられず、止まないカランカランという音にさらに急かされ、ようやく電灯がついた。空き缶のあるであろう場所を照らす。
そうして僕はようやく理解した。そこには……階段があった。
空き缶が下りの階段の段差に落ちてしまい、そのままの勢いで転がっているだけだったのだ。もうだいぶ下の方まで転がっている空き缶を見つけて、自分はため息をついて一人ごちた。
「あ、かいだんか」




