闇鍋
使用したお題:『待ち合わせ』『誕生日』『鍋』『暗黒物質』『憧れ』
闇鍋というものに憧れていた。
昭和の時代のアホな学生がやるアホイベントの定番モノ。意外とかぐわしい匂いといかがわしい見た目とおそろしい味のアンサンブル。出来上がった暗黒物質をみんなでウゲーヒエーと喚きながら食べるという強制参加の罰ゲーム。
中途半端に物をもらうよりこっちの方がいい、という僕の我儘を受けて、急遽誕生日のイベントとしてみんなで闇鍋をすることになった。
待ち合わせをする段階で中身をバラすような野暮な真似なんかしない。鍋に入れる段階までお互いソワソワしながら「何持ってきたんだよー」「内緒ー」と笑いあう。コタツの上の鍋がグツグツと湯気を吹き出す。
いざ、闇鍋の時間だ、と電灯を消し、各々が持参したモノを暗闇の中で鍋へと入れていく。何かが鍋に投入される音、騒ぐ皆の衆。
「うわ、今変な感触したけど大丈夫か?」「匂いは悪くないのが逆に怖い」「オレ闇鍋初めてだ早く電気付けようぜ」
全員が入れ終わったあと、恐れ半分楽しみ半分の気持ちで電灯をつける。
わざとらしく皆で悲鳴の声をあげつつ、我先にと皆で鍋の中を覗き込む。押し合いへし合い顔を突き合わせ、鍋の中身を確認し、皆揃って怪訝な表情になった。
今回の誕生日主催兼闇鍋幹事の僕が微妙な顔で確認を取った。
「……この白菜は誰が入れた?」
「……いや、どんな酷い物が入れてあっても白菜があれば美味しく食べれるかなって……」
「……このシイタケは?」
「……うち、裏山があって、そこにシイタケ山ほどあって、どうせだからって……」
「……ネギ」
「……ごめん、実はあんまりお金余裕なくて、一番安いのを適当に買ってきただけ……」
「……豆腐」
「……豆腐って変な味がついても結構美味しかったりするじゃん。それが楽しみで……」
「……肉」
「……いや、みんなどうせ変なの入れるだろうし、せめて肉くらいはまともなの入れとこうかなーって……」
僕は参加者全員の顔を見回した。そして中央の鍋を、とても美味しそうに出来上がった普通の鍋を見下ろした。
こんな闇鍋じゃあ盛り上がらないな、と僕はため息をついた。
……が、そうでもなかった! 鍋パーティー最高!!




